飼いならされた犬

　街を歩いていると知らない人によく声を掛けられます。のっけからこういうことを書くとあのハゲ調子に乗りやがってとか、有名人気取りかよとか、心ないことを言われそうですが、私とてバカじゃありませんのでこれから読んでもらおうと思っているコラムの一段落目で自らの好感度を下げるような真似は致しません。そういうことではなく、犬を連れて歩いていると見知らぬ人からよく声を掛けられるという話です。

※金玉がデカいので玉ちゃんと呼んでいます。死んではいません、寝ているだけですが、玉ちゃんを連れていたらきっと誰も声は掛けないでしょう。野良なので。

　ゴシマと犬はもしかすると赤ちゃんとハイライト、中武先輩と紫綬褒章、犬食いと手ぬぐい、伊東四朗と伊東遅漏くらい…って、すみません。自分でもなにを言っているのかちょっとよく分からなくなってきましたが、とにかくしっくりこない組み合わせかも知れません。それもそのはず、私は犬を飼っていることを公の場で言ったことがあまりないというか、厳密に言うと犬は奥様と少年の住むプレハブで飼っている、つまり現在私が住んでいるベルサイユ宮殿で飼っているわけではないからです。

※雑種、名前は黒毛和牛。パンダノン島に行くと必ず会いますが触ったことはありません。野良なので。

　かわいくないわけではありません。いや、むしろ開店前に車の後部座席で自撮りした写真をXにアップして騎士団にかわいい、かわいいと言われていい気になっているルックス下の上クラスの女性演者に比べたらかなりかわいいほうだと思うのですが、それとこれとはまた別の話。基本、昼は家でゴロゴロ、夜は墓場で運動会したいので休みの日に犬を散歩に連れて行ってくれと言われることはストレスであり、炎上メンヘラ女子よりもメンドクセエのです。

※メンヘラ系雑種30歳メス。2月に写真集を発売するようです。触ったことはありません、炎上するので。

　さらに言うなら犬を連れて歩いていると浅草や上野界隈にいる歯のないジジイや歯のないババアに「どこで買ったの？」とか「いくら？」とか東南アジアを訪れる買春ツアー御一行様みたいな質問を全力投球されます。成城や田園調布なら絶対にあり得ないというか、ハリウッド女優のミランダ・カーが日本カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれるくらいあり得ない話ですが、悲しいかな、これが東京下町の現実なのです。

※ティーカッププードル9歳メス、名前はココさん。触ったことはあります、飼い犬なので。

　ただ、若い女性に関して言えばかなりの割合で犬に興味を示します。その内訳は「かわいい～」で終わるタイプが約5割、近寄ってきてじっくり見る、或いは軽くお触りするタイプが約3割、そして残る2割が犬の性別や年齢、名前などを聞いてくる税関タイプなのですが、ちょっと待てよと。これって考えようによっては逆ナンとも取れるわけで、そのうち性別、年齢、名前に加えて連絡先を聞かれる可能性もあるんじゃないか。となると、このメンドクセエことこの上ない犬の散歩、そう悪いことばかりでもないのかなと。犬だけにワンチャンあるかも知れませんし。

※飼い主のため、若い娘にだけがんばって愛嬌を振りまいてほしいです。