下皿スッカスカの同志

クリット大の目くそでも引っ付いていやがったんでしょうか。いつもなら「？」の後ろにぼんやりと見える数字が、この日はまるで見えなかったので仕方なく右、左、中と決めたのですが、この決め付けがよくなかったのか、これまでノーマルビッグを都合5回引いているにもかかわらず、消化後1G目は常にブリッジステージ。これはマズイと途中から中、右、左に押し順を変えたのですが、変えた途端にビッグ中の押し順当てがまるで引けなくなりました。レバーを叩くほうの腕を牛刀かなにかで切り落としたくなりました。

　勝負の土俵にすら上がれぬ危機的な状態。いや、投資が既に3万を超えている点に鑑みて、徳俵に足が乗っかった状態とするのが正解でしょうか。とにかく、弱スイカと弱チェの出現率が良好という、ただそれだけの理由で勝負続行を決めたわけですが、無論、良好といってもそれはあくまでも心の小役カウンターが導き出した数値ですので、念のため。

「うわっ、キツイっすね」

1時間ほど前から隣に座ったメガネの若い男性が突然こう声を掛けてきました。彼も下皿はスッカスカ、既に他の台で3万ほど溶かしているとなれば言うまでもなく同志。ドクターペッパーを一本奢らせてもらい、二人でやれゴミビッグばっかりじゃキツイだの、やれレントンは休憩ばかりしてないで仕事しろだのと愚痴っていたのですが、ちょいちょい私に「弱スイカと弱チェはどんな感じですか」とか「ビッグ中、液晶に誰が出ましたか」といったことを聞いてきました。

　弱チャンス役の出現率は悪くないと思うけど、それはあくまでも体感的なものであること、ビッグ中は一度だけロボットが出てきたこと、別に隠す必要もなかったので正直に教えたんですが、さすがは同志、義理堅い彼は「いま空き台になっているバジのカド2が6っぽい」という超極秘情報を教えてくれましてね。俺、裏のシマにあるバジのカド2に速攻で移動したわけですよ。

　結果から言うと巻物リプを7回引いてチャコの開眼物語はゼロ。彼のヒキが良かったのか、それとも俺のヒキが悪かったのか、そのあたりは分かりかねますが、どう見積もっても最高設定ではなさそうとの結論に達し、家に帰ることにしたんですが、カードを清算しようとエウレカのシマを通ったら、例の彼がさきほどまで私が打っていた台をフルウェイトで回しておりました。

下皿にはコインザックザク、頭上にはドル2箱。とりあえず、同志ですから「良かったね」と声を掛けたところ、彼に「ビッグ中にロボットが出た台捨てちゃダメっすよ」と言われました。どうやらLFOが出る台は高設定の可能性が高いのだそうです。

ただ、知らない人間にカマを掘られるくらいなら、同志である彼に掘ってもらったほうが幾分マシなので、とりあえず「がんばってね」と声を掛けて帰ったのですが、あのとき「ドクターペッパー返せ、エナ野郎」くらいのことは言ってもよかったように思います。
　


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