吉宗
大都技研
パチンコ・パチスロ特集
更新日: 2015/06/02
調子よく出ている時には誤ってコインを落とすとその都度拾い上げるわけですが、その時の私はたいして好きでもない吉宗をただただ意地になって打ち続けている最中で、まるでお気に入りのおもちゃを取り上げられた子供よろしく不貞腐れていましたから、「どうせ呑まれるコインだし」といったネガティブな考えがハマリで痺れた頭をよぎり、落としたら落としっぱなし、手元からこぼれたコインの行方をとりあえず視線では追うものの、一切拾うことなく1時間半ほど経過した頃には、足元に7、8枚のコインが散らばっておりました。
吉宗の天井は1000G。そこから最大で36Gの前兆を経てビッグもしくはバケが出てきますから、悪くともあと3千円で一旦はこの地獄から抜け出せるというタイミングで席を立ち、にわかには信じられぬほど臭いトイレで用を足して戻ってくると、足元が妙にこざっぱりしていました。
落ちていたはずのコインが綺麗サッパリなくなっていることに気付いた私は、激怒していました。
別にいいやと放っておいたのに、いざなくなったら腹を立てるとはおかしな話です。しかし、端からここ一番の大勝負を覚悟していたならいざ知らず、あと少し、あともう少しと覚悟を小出しにする内に6万も7万も失った人間にまともな理屈が通じるはずもなく、命の次に大事なオレのコインをかっぱらったのは右隣の野郎か、左隣のババアか、それとも通りがかりの店員かと、素っ頓狂な声を出しながら周囲を見渡す鳩のように首を振り、無期懲役は免れぬ凶悪犯を探す私の視線に飛び込んできたのは、下皿にパラパラとあるコインでした。
席を立つ時、コインは使い切っていたはずでした。タバコしか置いていなかったはずの下皿にコインがあるということは、野郎かババアか店員が、わざわざ拾って下皿に投げ入れてくれたのでしょう。そのコインを優しく掴んで吉宗に投入するとクレジットに表示された数字は「2」。つまり7、8枚落ちていたはずが、ベットされた3枚と合わせ5枚しかなかったことになりますが、これが自己責任の名のもとにバッサリ切り捨てられる諸外国だったら0でしょう。1枚残らずどこかの誰かに持っていかれるところを、5枚も戻ってくる人情味溢れる国におるわけですし、パチスロはこのあたたかい国で生まれたギャンブルですし、このまま打ち続ければコインと同様に1万円札も何枚か戻ってくるだろうとの考えは、どうやら甘かったようでございます。
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