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2026-10-16
パチンコ・パチスロ業界ニュース
2026/05/21
IR整備法の目的は十分に理解されているとは言い難い。人口減少や社会保障費の増大を背景に、日本は国際観光の強化による持続的成長を目指している。一方で観光政策やMICE戦略では諸外国に後れを取っている。本稿では、IR整備法の原点と国際競争下での日本の立ち位置を整理する。
IR整備法の本質とは?
国内では、 IR・カジノという言葉が唐突に登場し、十分な議論を経ないまま法案が成立したと受け止められることも多いです。しかし、第二章で触れた通り、実際には長年にわたり議論が積み重ねられてきました。ただし、その過程で社会的デメリットと経済的メリットの二極に関心が集中し、 IR整備法の本来の目的が十分に共有されていないのが現状です。では、その目的は何でしょう。2018年に制定された「特定複合観光施設区域整備法」第一条には、その趣旨が明確に示されています(カコミ参照)。
同条からは、日本が今後直面する人口減少と社会保障費の増大、そしてそれを若い世代が支える構造が読み取れます。こうした状況を踏まえ、政府が抜本的な改革の必要性を認識していることもうかがえます。
すなわち、 IR整備法の目的は、こうした社会的課題の解決に向けて国際観光を強化し、財政の改善につなげる点にあるといえます。国際競争が激化する中、日本が国内需要のみで持続的成長を実現することは難しくなっており、これは将来ではなく現在進行形の課題です。そのため日本は、IRという新たな成長分野を国家プロジェクトとして推進する方向へ舵を切ったのです。

国際観光競争力で劣る日本
IRが社会的課題の一助に
一方で海外、特にアジア諸国では、IRを核とした都市開発を進め、それに観光政策を連動させることで成長を実現しています。国内においても都市開発は活発に進んでいますが、世界からの集客を強く意識した観光政策との連動は、必ずしも十分とは言えません。
日本は2021年の世界経済フォーラムにおいて国際観光競争力の高さが評価されましたが、観光政策力という観点ではシンガポールが1位で、日本はTOP10に入っていません(図1)。また、ICCA(国際会議協会)のデータ(図2)でも、アジア・太平洋地域における国際会議開催件数に占める日本のシェアは低下傾向が続いています。文化的観光資源には強みを持つ一方、 MICEを含めた政策面での競争力では他国に後れを取っている状況がうかがえます。
近年の国際観光ではMICE戦略の重要性が指摘されていますが、大規模施設を単独で整備・運営することは大きなリスクを伴います。このため、 MICE機能をIRと一体的に整備する動きが一般化しつつあるのです。
第一章から第三章では、IRをめぐる議論の変遷や、都市開発と観光政策の関係、そして日本において議論が二極化している現状を整理してきました。今後は、大阪夢洲で進むIRをめぐる議論が、より多面的な視点から深められていくことを望んでいます。
その上で、 IRが整備法の目的に沿って社会課題の解決に寄与し、次世代の日本が国際社会の中で持続的に発展していく基盤となることを願いたいものです。
次回の第四章からは日本の国会におけるIR議論の歴史について深堀りしていきたいと思います。


鶴 田 一(Hajime Tsuruta)
株式会社NRC一級建築士事務所
代表取締役
博士(工学)、一級建築士
オレゴン大学建築学部卒業後、2008年にNRC一級建築士事務所開設。2021年シンガポール都市再開発局主催アカデミー修了。2024年国立東京工業大学博士後期課程卒業後。都市開発及び観光政策分野にて講義を行う。国内外建築賞、芸術賞多数受賞。
◆執筆書
『シンガポールにおけるカジノ合法化検討過程に関する研究』(公益財団法人日本都市計画学会)
『わが国におけるカジノ及びIRをめぐる言説・事象の変遷』(一般社団法人日本観光研究学会)
『IR整備をめぐる候補自治体における議論に関する研究』(一般社団法人日本観光研究学会)
『IR(統合型リゾート)を用いた埋立地における新規都市開発と観光政策に関する研究』(国立東京工業大学博士論文)
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