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2026-07-23
パチンコ・パチスロ業界ニュース
2026/07/20
日本におけるカジノ合法化やIR(統合型リゾート)を巡る議論は、長い時間をかけて形成されてきた。海外のカジノ施設紹介から始まった報道は、年月を重ねるごとに地域振興策としての導入議論、観光政策、そして国の成長戦略へと、その言説を変化させていった。
今回は、全国紙である朝日新聞の記事を対象に「カジノ」「IR」を含む記事を分析した研究をもとに、国内におけるカジノ議論の変遷を整理していきたいと思います。分析対象としたのは、国内の経済的発展のピークにあたる1990年からカジノ合法化に至る2018年までの28年間です。ただし、海外カジノ施設の単純な紹介記事や、違法賭博事件など、合法化議論との関連性が低い記事は除外しています。
1990年代前半は、国内におけるカジノ議論というよりも、海外事例の紹介が中心でした。ラスベガスなど海外のカジノ施設を紹介する記事が多く、日本国内での導入について具体的な議論はまだ限定的だったといえます。
転機となったのは1996年に「日本カジノ学会」の設立に関する記事が掲載されたことでした。これ以降、カジノ合法化を意識した議論が報道で取り上げられるようになります。このことから、1996年から2018年の23年間を対象期間に設定し、年代と出現回数を可視化すると、図1のとおり全体で996記事が抽出されます。さらに、この記事内容を分析し、起点と内容を分類すると、表1のようにⅠ期~Ⅴ期に分類することができます。次からは、各期における主要な出来事を追っていきたいと思います。


IR導入議論の変遷
カジノ構想から国策へ
Ⅰ期(1996年~1997年)は、国内議論の黎明期にあたります。記事数はまだ少なく、多くは海外のカジノ事例を紹介する内容でした。一方、ラスベガスではカジノ単体ではなく、ホテルや商業施設などを組み合わせた複合的な開発が進んでおり、現在のIRにつながる考え方が形成されていた時期でもあります。また、国内においてはカジノ合法化を目指す「日本カジノ学会」が発足されました。
Ⅱ期(1998年~2005年)は、自治体を中心にカジノ導入構想が広がった時期になります。東京都のお台場カジノ構想をはじめ、愛知県や宮崎県など各地域で、観光振興や地域活性化を目的とした議論が活発化しました。背景には、バブル経済崩壊後にシーガイアなどの大型リゾート施設の経営が厳しくなったことがあり、新たな観光資源や地域振興策として、カジノを含む複合型施設への期待が高まったことが読み取れます。
Ⅲ期(2006年~2009年)は、カジノ特区構想が停滞しました。構造改革特区制度では、宮崎県や石川県加賀市など自治体からカジノ導入に向けた提案が行われましたが実現には至りませんでした。関西空港周辺(りんくうタウン)や、長崎県佐世保市のハウステンボス周辺でも検討されたものの、制度化にはつながらず、国内での合法化議論はいったん落ち着きを見せました。一方、2005年にシンガポールがカジノ合法化へ踏み出したことで、海外の成功事例を紹介する報道が増えました。
Ⅳ期(2010年~2013年)は、シンガポールに「リゾート・ワールド・セントーサ」が開業し、カジノを含むIRによって観光客誘致を図り、国家的な観光政策として推進されました。この動きは日本国内に大きな刺激を与え、観光振興や国際競争力向上の観点から、各地域でIR導入に向けた議論が再び活性化していきます。
そしてⅤ期(2014年~2018年)には、自治体だけでなく国会でもIR整備に向けた議論が進み、2016年に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(IR推進法)」が成立しました。地域ごとの構想として語られていたカジノ議論が、国レベルで検討される段階へ移行した瞬間でした。
こうして振り返ると、日本におけるカジノ・IR議論は、海外事例の紹介から始まり、地域振興策、観光政策、国家戦略へと、その位置づけを変化させてきたことが分かります。次回は、国会議事録および朝日新聞における「カジノ」「IR」のキーワード出現回数を比較していきたいと思います。
鶴 田 一(Hajime Tsuruta)
株式会社NRC一級建築士事務所
代表取締役
博士(工学)、一級建築士
オレゴン大学建築学部卒業後、2008年にNRC一級建築士事務所開設。2021年シンガポール都市再開発局主催アカデミー修了。2024年国立東京工業大学博士後期課程卒業後。都市開発及び観光政策分野にて講義を行う。国内外建築賞、芸術賞多数受賞。
◆執筆書
『シンガポールにおけるカジノ合法化検討過程に関する研究』(公益財団法人日本都市計画学会)
『わが国におけるカジノ及びIRをめぐる言説・事象の変遷』(一般社団法人日本観光研究学会)
『IR整備をめぐる候補自治体における議論に関する研究』(一般社団法人日本観光研究学会)
『IR(統合型リゾート)を用いた埋立地における新規都市開発と観光政策に関する研究』(国立東京工業大学博士論文)
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