足上げ事件、再び

　後ろの夫婦は豚まんと焼売、通路を挟んだ席では女性がくくるのタコ焼き。ムショから出た直後であればそれらをすべて奪い取ってムショに逆戻り必至な状況ですが、幸か不幸か、こちとら二時間前にかすうどんを致死用食べてお腹いっぱい。この日は朝四時半起きということもあり新大阪から東京までの二時間半、ゆっくり寝ようとグリーン車に乗ったにもかかわらず、他人の食い物のクッセエ臭いですべて台無し。これがいわゆるスメルハラスメントかと身をもって知った次第です。

※かすうどん、私みたいなチンカス野郎にはぴったりの食べ物です。

　ただ皆様、胸に手を当ててよく考えてみてください。他人の屁は生産者の前歯を叩き折りたくなるくらい臭く感じるのに、どういうわけか自分の屁はまったく臭いと感じない。むしろフローラル、或いは白トリュフのように感じられるじゃないですか。浴槽の中でブリッとかました一発を逃してなるものかと気泡、いや、屁泡が浮いてくるタイミングを見計らい、湯で満たされた逆さ洗面器でしっかりキャッチしてそうっと洗面器の隙間から白トリュフの芳醇な香りを楽しんでいる気狂いはきっと私だけではないはずです。

　私にも身に覚えがないとは言い切れないので注意、言い合い、殴り合いというのはちょっと違うかなと。誰も嫌な思いをせず、なおかつ血を見ない平和的な解決策はないものかと思案を巡らせた結果、これはもう私が席を変わる他なかろうということで車掌室に駆け込み、これこれこういう理由で席を変えて欲しいとお願いしたところ、この手の相談は意外と多いのかも知れません。慣れた感じで隣の車両に席を用意してくれまして事なきを得たと、このときばかりは思っていました。

※倉庫で深夜働いているのかも知れません。

　移動した先は周囲に食事中の方もおらず、大型店のカド台くらい快適。夜勤明けで収録現場にやってきた中武先輩以上にぐっすりといった感じでしたが、あれは名古屋の手前あたりだったでしょうか。ションベンで目を覚まし、私の二列後ろの席をチラリ見遣るとご覧の有様でして…。

※見ていて決して気持ちのいいものではないなと。

　ただ、また車掌室に駆け込むのもどうかと思いましたし、なにより臭いと感じることはなかったので、そのまま席に戻ったのですが、プライベートだからいいだろう、周囲に迷惑を掛けていないからいいだろうがまかり通らぬことを私たちは大崎先輩の足上げ事件で学びました。しかもこの御仁、Ｍ-1グランプリのチャンピオン。常に見られているという意識に欠けているなと思うと同時に、私も気を付けねばと思った次第です。