飲食店の香水問題

　少し前の話になりますが、とある高級鮨店のカウンターで鮨をつまんでいたところ、いかにも悪いことして金儲けしています、大統領の恩赦で先月出てきましたみたいな感じの男性がキャバ嬢だか演者だか分かりませんが、バカっぽいズベタを連れて入ってきました。板前はそっと手を合わせてごめんなさいのポーズ。その場に居た客とスタッフ、全員が全員サンポール飲んだ直後みたいな表情になったのは見た目が反社だったからではありません。香水の匂いをプンプン漂わせていたからです。

※なによりも好感度が欲しいので言っておきます。普段はくら寿司です。

　いつものように価値観は人それぞれ、否定も肯定も致しませんと言いたいのは山々ですが、こちらだって決して安くはない金を払って食べにきていますし、中にはなにかの記念日、失恋記念日とかメロン記念日とかで来ている方、一家心中する前夜に最後の晩餐として来ているご家族もいらっしゃるかも知れません。と書いたところで、男性客は先月刑務所から出てきたのではなく来月刑務所に入るのかもと一瞬思いましたが、とにかくどういった理由があれ、マナー違反であることは明らか。人様の楽しい食事の時間を邪魔していいはずがありません。

※小肌、赤身ヅケ、アナゴ、煮蛤といった江戸前が好きですが、好感度を上げるためサラダ巻きも好きだと言っておきます。

　出ていけ。そう言えるようならXで大崎先生以上に暴れています。私にそれを言う勇気も根性もないからきっと他の誰かが言うだろう。板前あたりがガツンと言ってくれるはずだと誰もが思っていましたが、日本統一用語で言うところの返しの可能性を考えたのか、先ほど同様、板前は小さく手を合わせるのみ。竜王戦でも開催しているのかと思うくらい静まり返った店内で皆、黙食していると例の男性客が板前にこう言いました。

「とりあえず、つまみ出してください」

　いいんですか？…こう言っていたらきっといま私は生きていないと思います。

※本文に出てくる男性客とは関係ありませんので念のため。