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名波誠

ウソのような本当の話2

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公開日: 2015/08/18

北は北海道紋別市から、南は沖縄県石垣市まで。

放浪生活をしていた頃は日本全国、色んな街の色~んな床屋さん(理髪店)でカットしてもらったりシャンプーをしてもらったり、顔剃りをしてもらったり。

どこも初めて訪問する床屋さんばっかりですから、そりゃ~もう、チャレンジの連続なわけですよ。

 

中でも忘れられないのが、鹿児島県の小さな街でお世話になった床屋さんです。

 

 

この日は夕方までに3万1000円負けて、早めに実戦終了。商店街の一角にある安いビジネスホテルに予約を入れ、すぐさまチェックインしたんです。

かなり安いホテルだったせいか、部屋にシャンプーが備え付けられていません。フロントに問い合わせてみると、「自前で用意してください」とのことでした。

 

夜7時過ぎ、シャンプーを買うために外出。ホテルから数100mの距離にあるらしいコンビニもどきの小さな商店まで歩きます。

…商店に行く途中、青と赤のおなじみの床屋さんのサインがくるくる回っているのが目に入りまして。ちょうど髪が伸びてることを思い出したので、フラリと入ってみたんです。

 

(ドアをガチャリ)

すいませーん

すいませーん

 

(誰もいないなー、もう閉店なのかな?)

 

すいませーん!

 

 

…は~い

奥のほうからユラ~リ。白い服を着た50歳ぐらいの、色黒のおじさんが出てきました。

 

いらっしゃぁい

 

なんとなくヤッベーな~とは思いましたが、今さら引き返せません。

 

 

この不安は見事に的中します。

 

顔剃りのときでした。親の仇のように、しつように何度も何度も何度も何度も、そして強く、カミソリをグイグイ押し当ててきたんです。

深剃りの日本記録に挑戦してるんじゃないかと思うぐらいです。

しかも、その時間、およそ20分。

 

女性はピンとこないかもしれませんが、顔剃りに20分も要するのは長過ぎです。

 

さらに地獄は続きます。

空気を含ませるように手と手を握り合わせ、ゴシン!ゴシン!と肩や後頭部をマッサージするやつ、ありますよね。

これも20分間ぐらい続いたんですよ。

 

20分ですよ。ゴシン!ゴシン!と。

 

 

 

普通、1~2分でしょうよ。

長くても3分とか。

 

 

今となっては理由をハッキリと思い出せないんですけど、途中で「もういいですヤメてください」って言えなかったんですよねー。

 

 

ゴシンゴシンゴシンゴシンと20分が経過したあと、「これで終わり」という意味なのかどうか分かりませんが、最後の一叩きがものっすごい強烈で

 

ゴン!

 

とヤラれましてね。目の前が白くなって、元に戻るまで2秒くらいかかりました。

 

 

で、お金を払い、もう帰れると思ったら…

はいコレ

いきなり冷たい缶コーヒーを手渡されまして。

 

ま、ま、座って座って

 

待合のイスに座って野球の話やらロケットの打ち上げの話やら、30分ほど世間話ですよ。

 

髪を切ってもらいながらアレコレと話をするのは、よくあることですけどね。すべてが終わってからじっくり会話するというのは、後にも先にも、このときだけです。

 

 

 

ようやくホテルの部屋に戻り、顔がヒリヒリするな~と思いながら鏡を見てみたらビックリ!!

なんと、14ヶ所の毛穴(!)から出血していて、真っ赤になってるんですよ。

しっかり数えました

 

顔剃りの直後にメンソレータムみたいなクスリを大量に塗ってたから、おかしいなとは思ったんですけど(にがわらい)。

 

 

デフォルメはありません。本当にあった話です。

最近は旅打ちをしたとしても短期間で自宅に帰ってくるパターンが増えたので、わざわざ旅先で床屋さんのお世話になるということがなくなっています。このような、おもしろエピソードを経験する機会も少なくなってしまいました。

あの頃がなつかしいです…

 

種子島2003春日記ノート
2003年3月の日記ノートより

 

 

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