健康パチンコが面白い!?「パチンコと健康」を考えるVol.3
特集一覧へ更新日: 2019/04/19
健康パチンコについて、
前回まで
第一回目に「けんぱち」を推奨されている公立諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授にお話を伺い、認知機能の向上についての実験、今後の予定展望を伺った。
https://p-town.dmm.com/specials/1880
そして、第二回目は82歳の現役パチンコライター(見習い)不二子さんに健康の秘訣などご教示頂いた健康パチンコ特集。
https://p-town.dmm.com/specials/1887
第三回目は、実際にパチンコ・パチスロをはじめ、麻雀やカードゲーム等を取り入れ、利用者の支持を集めているデイサービス「Las Vegas」を運営する、日本シニアライフ株式会社へ取材に伺った。
運営会社 日本シニアライフ株式会社
カジノ型デイサービス「Las Vegas」
FC契約店舗も含め現在20店舗
代表取締役社長 森 薫氏
CASE3.
カジノ型デイサービス「Las Vegas町田木曽」にて、森社長にインタビュー
森 薫社長
取材先は昨年6月に完成した、東京都町田市にある「Las Vegas町田木曽」。
取材で訪れた時刻は13時。訪問すると、ちょうどこの日2度目となる全体運動が始まる時間だった。
そして、全体運動が終わると共に、シミュレーションゴルフ、パチンコ・パチスロ、麻雀、ブラックジャックと好きなゲームへ利用者が向かう。
デイサービス利用には、要介護認定が必要なので杖や車椅子の利用者が多い。
だが、みなゲームをする際には生き生きと目を輝かせている。
日本シニアライフ株式会社の森 薫社長に、早速お話を伺う。
DMM:
本日はよろしくお願いします。
まず、カジノ型デイサービスを始められたきっかけについて教えて下さい。
森社長:
私たちは、19年前から従来のデイサービス運営を行っていますが、男性のご利用者があまりいらっしゃらない状況でした。
パチンコ機は大当り確率の低いMAX機を置かない。パチスロもAタイプ主体となっている
遊技を楽しむ利用者。遊技機は、レンタル機で定期的に入れ替えをしている
DMM:
従来型のデイサービスで行っていたことは、どのような内容ですか?
森社長:
手芸や風船バレー、ペットボトルボーリング、切り絵・貼り絵・塗り絵、発声練習ですね。
正直、男性のご利用者からしたら、あまり面白くないんですよ。
でも、ご家族は外の空気を吸ってきてもらいたい、生活のリズムに変化を付けたいという想いもあって、ご本人のご要望と言うよりご家族のご要望にお応えするというケースが多かったです。
なので、(デイサービスに通う事が)男性の方はご利用が長くは続かなかったですね。
我々は、介護保険法に基づいてサービス提供を行っているのですが、当時から介護サービスを学ぶならば、福祉先進国のデンマークやスウェーデン等、北欧から学ぶべきと言われていました。
北欧諸国の介護サービスは素晴らしく、サービス内容は学ぶことが多いですが、そのサービスを支えている財政の部分では北欧諸国とは税制も人口も全く異なりますし、同様の税率になることは日本では難しいと感じていました。
(デンマーク人口約578万人、付加価値税25%・スウェーデン人口約1022万人 消費税 25% 外務省データベースより)
逆に、介護保険がないアメリカの暮らしに興味を持ち、2011年に社員数名とアメリカに行きました。
私たちがアメリカで見た高齢者の暮らしはとても楽しそうでした。
住む場所も、過ごし方も全て自分で選んで「自分で楽しむ」光景は、日本のように他人に促されたり、ご本人がご家族に迷惑をかけられないなという意識で、仕方なく利用する介護サービスとは真逆の印象を持ちました。
そしてラスベガスのカジノホテルに立ち寄った時に、平日の昼間という事もありましたが、高齢者の方が非常に多かったことが印象的でした。
もちろん、週末は若い方も多くいらっしゃいましたが、高齢者の方がとても楽しそうにしているのを見て、まるで社交場のようだと感じました。
その後も何回か渡米し、介護保険の無いアメリカの高齢者の暮らしぶりなどを観察し学び、我々の事業に取り入れられないかと模索し始めました。
日本の介護報酬が年々減少していく中で、社会保障の負担がなくなったとしても、ご利用者に選んで頂ける施設づくりをしなければならないと考えたのがカジノだったんですね。
カジノに無理やり行く人って、いませんよね(笑)。
行きたい人しか行かないカジノと、我々の持っている「介護事業のノウハウ」を融合させたのがこのデイサービス「Las Vegas」なんです。
DMM:
発想の転換ですね。普通だと、福祉先進国ばかり追いかけそうになりますが・・・。
兵庫県のカジノ型デイサービス※1規制については、いかがお考えでしょうか?
森社長:
規制については、行政の判断なので、我々がお応えする立場にはありません。
ただ、当時のデイサービスは従来型がほとんどでしたので、数がたくさんあっても選択肢がほとんどなかった状況です。
そこに「Las Vegas」が誕生し賛否両論になって、アレがダメ、コレがダメだという議論が交わされるようになりました。
どんなデイサービスでも、賛成される方が居れば、反対される方が居ても当然だと思います。選ぶのはご利用者ですからね。
「Las Vegas」にしても、既存のデイサービスに対しても、ご利用者がそれぞれを比較して選択することで事業者のサービス向上につながるので、賛否両論という風潮はご利用者にとっても、事業者にとっても良い事だと思います。
DMM:
利用者にとっては、選択できる事は本当なら良い事ですよね。
ところで、今この施設で働いているスタッフは、麻雀やカードゲーム、パチンコ・パチスロ等、遊技のルールや知識は入社時に学ばれるのですか?
森社長:
そうですね、研修でバリバリ覚えてもらいます(笑)。
ご利用者に「認知症予防です」と言って、レクリエーションをすると楽しくない時があるので、ご利用者に楽しく取り組んでいただく為に、
以前、認知症予防で計算ドリルをする事がありましたが、なかなか楽しく取り組んで頂ける事がなかったので、私たちは、「Las Vegas」のゲームを通じて楽しんで頂く事を心掛けています。
本当のカジノディーラーはあまり喋らないのですが、逆に私たちはガンガン喋っています(笑)。
ゲームを進行しながらディーラーが意図的に話しかけて楽しく計算を促しています。
ブラックジャックは手持ちのカードの合計が21に近ければ勝ちますし、バカラも基本的に足し算で計算していかないといけない。
同じ計算でも計算ドリルと違い、皆さんに楽しく取り組んで頂いています。
スタッフも利用者も満面の笑み。昨年のスターティングメンバーには新社会人も含まれており、地域の新しい雇用にも寄与している
施設内通貨「ベガス」
そして施設内通貨も使用して頂いています。これは(射幸心を煽るという理由で兵庫県等で)規制されている部分でもありますが。
要介護状態になると、一般的に以前のような自由がなくなってしまうケースが多いです。
人にもよりますが、自分で買い物に行くことも、外でご飯を食べることも少なくなってしまいます。
そうなると、自然とお金を使わなくなって日常的な計算からも遠ざかってしまいます。
認知症専門医師によると、人は65歳を超えてくると物忘れや認知障害が起こりやすくなるそうです。
要介護状態になり、お金の計算も遠ざかり、認知症発症リスクも高まります。
そこで私たちは施設内通貨を利用し、遠ざかっていたお金の計算をして頂く環境を創りました。
日常生活でお金の計算がなくなってしまうのに計算ドリルで賄うことに疑問を感じて、このような施設内通貨を使用しています。
お金の計算は真剣にやりますよね(笑)。
もちろん、換金も何も出来ないですけどね(笑)。
体操をして10,000ベガスを付与して、ゲーム参加時に使用しています。
(ベガスはLas Vegas内の通貨単位)
例えば、麻雀参加時には3000ベガスを払い、パチンコなら1000ベガスで250玉貸し出します。
施設内通貨を流通させることで自然と計算が出来るようにしています。
さらに麻雀で1位になったら、TOP賞で20,000ベガスを貰える。
実際に施設内通貨を使ってやって頂くことで、「認知症の予防なのでやって下さい」と言わなくても、皆さん自然と使用されています。
DMM:
なるほど。実生活で使っていた「お金」を「疑似通貨」として使うんですね。利用者の方の反応や効果はいかがですか?
森社長:
反応は意外と良いですね。毎日、その日にベガスを一番多く獲得されたご利用者を表彰しているのですが、皆さん虎視眈々と一位を目指して真剣に取り組んでいらっしゃいます。本当のお金じゃないと言いつつも、表彰のときはみなさん自然と笑顔になられます。
と森社長は、笑顔で写る表彰された利用者の写真を紹介してくれた。
パチンコを打っている方にも、お声がけさせて頂いてご要望を伺っています。
「本当はカードもやってみたいんだよ」なんて、仲良くならないとなかなか言ってもらえない事もあるので(笑)。
突然、病気になってしまい、介護が必要な状態になって今まで自分で出来た事が出来なくなって。
誰かの世話になんかなりたくない、と仰っていた方が、そうしないと生活できない状況になったら
私も男ですから素直にお願いする事ってなかなかできないのかな・・・って思うことがあります。
私たちは出来る限りご利用者のお気持ちに寄り添ってサービス提供することが大切だと思っています。
DMM:
兵庫県等の規制をうけて「TV等でもギャンブル依存症を誘発するのではないか?」と言われていますよね?
森社長:
そうですね。設置しているパチンコは特に色々言われますが、パチンコはご利用者の外出意欲を向上させるために、重要な役割を担ってます。
今、(日本シニアライフの)全施設で月間1,200名ほどのご利用者と契約させていただいておりますが、ギャンブル依存症になったり、あるいは再発された方は一人もいません。
そもそもギャンブルではないですからね・・・(笑)
と、ここで、ストレッチタイム。利用者は、介護士の動きに合わせ体を伸ばす。
1時間に1度、ストレッチを挟むそう
DMM:
従来型のデイサービスと比較して、解約率の差はありますか?
森社長:
それはありますね。私が以前勤務していた従来型のデイサービスでは、「あんな子供のやるような事はしたくない」という理由での解約は多かったです。
「Las Vegas」では、同様の理由での解約は一件もありません。
今、「Las Vegas」をご利用されている方は、従来型でレクリエーションの内容が合わなかった、という方が多いです。
私が以前勤めていた従来型のデイサービスは、ご本人のご要望よりもご家族や、ケアマネージャーのご要望にお応えする事しか出来なかったような気がします。
なので「Las Vegas」を創る時には、ご利用されるご本人が「ご自身で選ぶ」ということを大前提としました。
私自身が介護を受ける立場になったときに、15年前に私が勤めていたデイサービスを利用するかと考えたら、私はあまり魅力を感じないかもしれません。
それは、当時のデイサービスを批判するわけではなく、好きか嫌いかという個人の選択です。
従来型のデイサービスがお好きな方がいらっしゃれば、「Las Vegas」が嫌いという方もいらっしゃいます。
重要な事は、困った時でも選択肢があるのか?という事です。
ちなみに私たちは、現在も従来型のデイサービスを4店舗運営しておりますが、そちらのデイサービスもたくさんのご利用者様にご利用して頂いております。
DMM:
選択肢が増えるのは良い事ですね。それに、実際に利用される方が無理やり行くのではなく、ご自身で選んだ方がストレスなく通えますよね。
私から見ても、利用者がとても元気そうな印象を受けます。
森社長:
そうですね、選べる方が良いと思います。
そして皆様お元気そうで私たちもうれしいです。イメージ的に「Las Vegasは元気な方が通う」というイメージを持たれますが、「Las Vegas」にいらっしゃることで、皆さん元気になっています。
認知症の方もご利用いただいてますが、会話でのコミュニケーションがとりづらくても、麻雀でのコミュニケーションはできる方もいらっしゃって、その様子をご家族にお伝えすると、
「ウチのオヤジ、そんなこと出来るの?」と仰られ、ご家族もお元気になられています。
麻雀が出来たり、パチンコで連荘して表彰されたことをご家族が知ると、とても喜ばれます。
中には「(認知症の)進行が止まった!」と仰るご家族もいらっしゃいます。
DMM:
それはすごいですね!
どんなレクリエーションの人気が高いのでしょうか?
森社長:
麻雀が一番人気です。「全国麻雀統一王者決定戦」を開催すると、皆さん「やってやるぞ」って気持ちになるんですよ。
DMM:
「全国麻雀統一王者決定戦」は、いつ開催されるんですか?
森社長:
毎年、2月と8月に開催しています。
この開催時期にも理由があります。
2月はとても寒く、8月はとても暑い為、ご利用者の外出意欲が減退してしまいます。
私たちは、ケアマネージャーさんの作成されたプラン通りに、サービス提供をすることが務めですが、外出意欲が減退して「行きたくない」ってなったらケアプラン通りにサービス提供ができなくなってしまいます。
そこで、毎年2月と8月に「全国麻雀統一王者決定戦」を開催しているんです。
DMM:
それは、面白いですね。20店舗で競い合うんですか?
森社長:
そうです。ここ最近、800人以上の方がご参加されています。
DMM:
優勝すると表彰されるのでしょうか?
森社長:
優勝すると表彰をして、記念撮影をして、各施設に掲示されて100万ベガスの記念紙幣を贈呈します。
実際の利用者のファイル
47都道府県が記載されているのは、利用者の故郷や旅行先等、懐かしい思い出で共感を得られるようにとの配慮だそう
ブラックジャックは、MAX BETで5連荘したら「宮崎」の記念紙幣、パチンコで大当り30回出たら「沖縄」の記念紙幣もらえますよとか。
記念紙幣を写真とともにファイリングしている利用者
記念紙幣を貯めることを生きがいにされている方もいらっしゃいます。
貯めたベガスは、全て残高照会出来るようにデータ管理している
ベガスの有効期限はない。また、限度も無いので1億ベガス持っている人もいるそう
カラオケやゴルフもベガスで参加する。もちろんどちらも高得点を得ることで、ベガスも獲得できる
ベガスを利用する事で、真剣に遊技をされるそう
毎日、16:00頃になると、スタッフが当日の獲得ベガスを集計。効率化の為に、バーコードリーダーを活用している。大勢の利用者の残高もすぐに集計出来る
「全国麻雀統一王者決定戦」は利用者個々に月・週で来店する日数、時間も異なる為、単純に勝った回数、獲得ベガスの総数で決めず、ゲームに参加した回数による勝率で決定しているとのこと。意欲をなくさないようにしているのだ。
また、各都道府県の名称の書かれた記念紙幣は、それぞれのミッション達成で獲得できる。
従来のデイサービスは、このようなレクリエーションのアイディアを店舗スタッフが考えていたが、時間外労働が多くなる問題も。
「Las Vegas」では現場スタッフの意見を吸い上げつつ、本部で考えているそうだ。
また、森社長自身の祖父が記念切手収集していたことがアイディアのきっかけとなり、記念紙幣を作ることになった。コレクションする楽しみも感じて貰えているとのこと。
この日は、スタッフがディーラーだったが、軍資金が少なくなると利用者もディーラーになれる。報酬は山梨県の100万ベガス紙幣だ
中には面白いミッションも。自己申告で「元気になった!」と、宣言すれば福島県の100万ベガスを獲得できる
そして、直近2019年の5月に埼玉県深谷市、6月に静岡県三島市と宮崎県に新店をオープン予定とのこと。
送迎者は、黒塗りのワゴン車
介護士や看護師が、それぞれの利用者に合わせた応対をしてくれる
DMM:
最後にコメントをお願いします。
森社長:
私たちは、税金を使っている以上、結果を出すのが務めだと強く思っております。
少しでも介護度が改善したり、ご家族が楽になったりという結果を出すのが大事だと思ってます。
DMM:
ありがとうございました。
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飽きさせないように細やかな配慮、そして何より喜ばせる工夫が光っているのが印象的だった。
従来型デイサービスでの利用者からの要望に真剣に向き合ってるか
筆者の所感だが、年齢を重ね、会社や社会と離れると人に褒められる機会も少なくなる。
嬉しい、楽しいという喜びがリハビリなどの意欲にも繋がる上に、「また行こう」という継続性にも繋がる。
これからの高齢社会、決して他人事ではない。
第一回目の篠原教授の言葉のように、「楽しい事をすると良いらしい」というのは、ここでも実感できた。
第二回目に、実際に元気で82歳でありながらパチンコをする不二子さんに「ストレスを溜めない」という秘訣を教わった。
パチンコ・パチスロを適度に楽しみ、刺激を感じることが健康の一助になるなら、開発するメーカーをはじめ、ホール企業、周辺機器メーカー、行政と横断的に相互理解をしていくべきではないだろうか。
これからもパチンコ業界が、楽しめる産業として人と寄り添っていける事を願わずにはいられない。
了
※1
2015年に神戸市が発布した条例。
麻雀、パチンコ・パチスロ、ポーカー等を疑似通貨を使用して行うデイサービスの運営を神戸市内で制限する内容。
具体的には、8割から9割を公費で賄うデイサービスにおいて、ギャンブル依存症になり得るサービスを供する事への制限。
定例会見 2015年(平成27年)9月29日の「介護保険事業のアミューズメント型デイサービスの規制について」では、記者とのやりとりにおいて、久元市長は「高齢者の皆さんがギャンブル漬けになるような介護サービスを受けることがないように、適切にこの条例を運用していきたいと思っています」という記述もあり、ギャンブル依存との関連付けをうかがわせる表現等も議事録に記載されている。http://www.city.kobe.lg.jp/information/mayor/teireikaiken/h27/270929.html
※本稿、並びに掲載写真に関しては、Las Vegas(運営会社 日本シニアライフ株式会社)の監修を受けて掲載しています。
写真/文 パパラッチョ○野