パチンコ・パチスロ特集

第四回「みらいの輪」~パチンコ店経営者に突撃インタビュー~株式会社ヒカリシステム

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みらいの輪とは

昔のように勝てない!面白くない!
レジャーの多様化とともにパチンコ・パチスロ離れもめまぐるしい。
とかく、依存問題や子供の放置事件などマイナスのイメージを植え付けられているパチンコ業界。
半世紀以上続き就労人口も20万人超という規模だが、世間の風当たりは強い。
様々な要因で店舗数もどんどん減少しており、逆風の只中にいる。
そんな苦境だらけの時代に突き進むパチンコホール経営者の生きざま、考え方について深堀していく。

更新日: 2023/02/07

 

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第一回 第二回 第三回

 

 

大衆娯楽のパチンコ業界。その文化を未来へ紡ぐため、2020年10月に2つの業界団体が合併し成立したMIRAI(一般社団法人MIRAIパチンコ産業連盟)。

 

本企画はそのMIRAIで活躍する各企業のキーマンにフォーカス。パチンコホールの経営者の生い立ちや普段聞けない生の声を独占インタビューする。



金光 淳用社長  

株式会社ヒカリシステム

1973年生まれ 千葉県出身

 

  

パチンコ業界の経営者に話を聞く「みらいの輪」。

第四回は千葉県でパチンコ店・温泉の運営からGoogleパートナーズとして、IT技術の提供と最先端のテクノロジー分野に進出している株式会社ヒカリシステムの金光社長にお話しを聞いてみた。

同社は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、社内インフラもクラウドで集約し、パソコンレス化の推進、モバイルファースト等革新的で合理的運営をしている。 

Contents

DMM:本日はお忙しいところお時間頂きましてありがとうございます。よろしくお願い致します。

金光社長:こちらこそよろしくお願いします。

DMM:早速ですが、金光社長のプロフィールや生い立ちをお教えください。

金光社長:私は、1973年に千葉市で生まれました。元々は祖父と父が非鉄金属の販売業を行っていたのですが、安定した仕事としてパチンコ店を始めたのが弊社の始まりです。始めた時は私が3歳で、1号店のHAPS東寺山店の2階に家族で暮らしていました。

DMM:そうなると幼少期の頃からパチンコは身近だったのですね。

金光社長:そうですね。学生時代にはパチンコで遊んだ経験がありませんでした。初めての遊技は社会人になってからです。
大阪でサラリーマン時代、「そのままそこで働くのか?家業を継ぐのか?」と父から手紙をもらった事がありました。
父の手紙を読んで私を育ててくれた商売ですし、面白そうだから家業を継ごうと考えたのですが、これから働く商売の事を知らないといけないですし、その時に遊技したのが初めての経験です。

DMM:そうなのですね。金光社長のご経歴ですが、大学卒業後にすぐにパチンコ業界に進まなかった理由はあるのでしょうか?

金光社長:それは先代である父がハッキリ明言したわけではないのですが、自分でお金を稼いでこいと言う意識もあったのかなと思いますね。
また、パチンコ業は家業として無手勝流に大きくしていったので、他の組織の仕事を見てきた方がいいとは言われました。



DMM:なるほど。それで戻られたわけですね。その時のお手紙はどのような内容だったのですか?

金光社長:先代も同友会(現MIRAIの前身組織、日本遊技産業経営者同友会)の活動をしていて、他法人の考えに触れて学ぶことは多かったようです。それまでは無手勝流に会社経営していたことを、理論立った経営にしていくため手伝ってくれ、という内容でした。
そして「チェーンストア」に関する本を段ボールいっぱいに送ってきて、これを読めと。こういうことをやろうとしているのだけど、一緒に社長としてやるか、そのままサラリーマンを続けるか、という内容でした。

無手勝流の家業から、多角化経営への転換

DMM:無手勝流からの脱却を計画されていたのですね。実際、パチンコ店の経営に関しては、お父様から引き継いだ考え方などもあるのでしょうか?

金光社長:先代も何かアカデミックな経営学等をしていたわけではなく、自分自身の体験の中で積みあげてきた経営でした。引き継いでいることとしたら、新しもの好きだったので、常に新しい技術を取り入れたり、人を育てることに関しては力を割いていたことですね。他社に比べるとアルバイトから店長になる等、プロパーの社員の割合が多いと思います。それは先代からの風土だと感じています。

DMM:新しいもの好きというのは事業拡大にも大きく影響されそうですね。現在御社は多角経営されていますが、パチンコ店以外の業種に参入されたきっかけなどについても教えて下さい。

金光社長:カラオケ事業は3.11の東日本大震災直後に事業継承しました。継承の話は以前からあったのですが、パチンコ事業が規制業種で、中小企業が自立的にも資本的にも大型店舗を作りづらい環境である事。また、単独事業だけを続けるリスクヘッジを考えた中で、店舗型サービス業というカテゴリーで運営・人材育成のノウハウを生かせると考え実行しました。
元々、周期計画では新規M&A事業という計画はあり、具体的に何の事業をM&Aするか決めていなかったのです。そこへ、たまたま地元の企業さんのご紹介があり、M&Aしたのがカラオケ事業だったということです。
介護も同じような流れで事業を多角化するためにはじめました。カラオケもそうですが飲み会等の習慣が減少している中で、介護はこれから需要が増えていくマーケットであり、同じ店舗型サービス業として事業を展開できるのではないかと考えました。
知人もフランチャイズですが、デイサービスタイプの介護をはじめたという事もきっかけになっています。

DMM:ありがとうございます。介護事業は確かに需要が伸びる業態だと思いますが、同じように今後パチンコ経営の企業が参加してくると思われますか?

金光社長:親和性があるところと風土的に違うなというところがあるので一概には言えないと思いますが、投資金額や人の運営については近いところにあるとは思います。需要が増えていくとは思いますが、ただ一方、介護保険など国の財政問題もありますし、今はどんどん介護施設も倒産する時代です。片手間でやるというのは難しくなっていくとは思います。

DMM:なるほど。需要は伸びてもなかなか厳しい面もあるのですね。御社では今後も異業種であったとしても相関性や親和性があれば参入やトライされたりするお考えはあるのですか?

金光社長:私たちの持っている資源を活かせるとか、隣接するマーケットであれば考えています。まったくノウハウもリソースもないところに飛び込んでいく勇気はないですね。

創る技術から使いこなす技術へ、デジタルツール使用の法人サポート業務を開始

DMM:では、資源を活かせる、隣接するマーケットでここのジャンルは面白そうだな、とか飛び込んでみたいな、というジャンルはありますか?

金光社長:その観点ではじめたのが新習志野の温浴施設ですね。元々お風呂がやりたかったというより、宿泊業をやりたかったので。国内の旅行需要がここ数十年くらいのスパンで見ても伸びていますし、インバウンド需要もあります。
大手宿泊業では、もともとの古い観光資産を新しい手法でリノベートすることも増えていますので、国内観光に接点を持ちたいなという思いで始めたのが温浴施設の『湯~ねる』です。

DMM:確かにパチンコ業界では観光業や宿泊業、温浴事業も兼業している法人も多いですね。もとより親和性が高いのですね。

金光社長:そうですね。そして、現在は他法人のデジタルツール使用に関してのサポート業務も始めています。元々のパチンコ事業もそうですが、温浴施設も積極的にデジタルツールを使う文化を導入していたのでその流れです。親和性の高い業務でさらにデジタルツールを導入することにより大幅な労力やコストの削減ができます。これからは作る技術ではなく使う技術も必要になってきていると思っています。例えば車を作る技術ではなく、車を使うのも技術が必要になってくるので、運転する技術、運転することで新しいサービスを考えるマーケットがあると思います。弊社は既にサービス業という現場があるので、そこで働く人たちにデジタルツールを共通の道具として使うことで業務の円滑化のお手伝いができればと思っています。
この道具の使い方は新しいようで新しくないサービスですよね。
色々なベンダーさんがいて、自社のソフトウェアやハードウェアを売ることに特化するところが多い中、それを(クライアント企業が)使いこなせないで宝の持ち腐れになってしまっていたりするので。
私もサラリーマン時代に新しいシステムを導入しはじめて、既存のシステムと新システムの両方を使わないといけなくなり、途端に残業が増えたり新しいシステムが理解できなかったりしました。そのような転換期だと「これは一体誰得だ?」ということもあると思います。
年々ネットワークやハードウェアの性能が高くなっていく中で、使わないと勝負で勝てないだろうなと。乗り遅れる人がいないようにサポートしていく必要があります。

 

DMM:貴社独自のCSRも積極的に活動されていますが、最近の貴社のCSR活動や力を入れている分野についてお聞かせください。

金光社長:元々地域振興や地元のプロスポーツなど、同じように娯楽・エンターテインメントにつながる事への協賛は積極的に行っていますね。過去にはプロレス団体の協賛をしたり、今は『湯~ねる』で千葉ロッテマリーンズのオフィシャルスポンサーを行ったりしていますね。

DMM:それは地域貢献の志のもと協賛されているということですか?

金光社長:いえ、それはWin-Winの関係を作るためです。単なるパトロンではなく、経済がしっかり回るから社会福祉ができると。親和性が高いから我々を知ってもらってファンになっていただきたい気持ちもありますし、お互いが力を寄せ合って経済を回していくという意識ですね。

DMM:なるほど、そのお考えはとても共感できますね。一部の大手企業ではCSRが広告宣伝のように見えてしまう場合もありますよね。地域の経済活動が活性化することによってリターンとなってWin-Winに繋がる事は素晴らしいですね。

DXでパチンコ業界のキャッシュレス化はできるのか?

 

DMM:続いて御社の取り組みの中で「DXビジョン」についてですが、今年がDXのphase3で、今後のphase4以降の構想があれば教えて下さい。

金光社長:法人のデジタルツール使用に関してサポート業務を行っているのですが、その分野がやっとビジネスとして成り立ってきました。
漠然としたイメージですが、5年後に5倍にできるかなと思っています。
会社内での成功事例をもっと増やしていき、100社以上のクライアントとそのネットワークの構築と成功事例をシェアできる場を作りたいと考えています。
次のステップはお客様に対して新しいデジタルツールを使った付加価値が提供できると思うのですが、私たちだけの単体ではなくパチンコ業界として「キャッシュレス」の目標を掲げる事だと思います。
「キャッシュレス」と一言で言っても、クリアしなければいけない条件が沢山あって、今回のパチスロのスマートユニットも同じですが、このような動きを通じて「キャッシュレス」化に向かう色々な条件が整いつつあると思います。
決済に関わるデジタル化、現金ではないところも広義で言えばデジタルトランスフォーメーションと考えています。
現在、スマートフォンで公営競技ができるようになっても売り上げが落ちなかったり、パチンコも何らかの形でスマートフォンを使って、必ずしも現地に行くことでしか遊べないのではなく、離れていてもパチンコ店を楽しめるという方向性について、弊社単独ではなくMIRAIだとか日遊協などに提言していければというのがphase4以降の想いです。

DMM:なるほど。キャッシュレス決済は国が推進していますが、一方パチンコ業界では色々ハードルが多く実現できていません。いずれキャッシュレス化はクリアできると思われますか?

金光社長:やれるか?やれないか?」で言うと、できる可能性はあると思いますし、やると決めないと絶対できないと思います。今回のスマート遊技機もそうだと思います。ちょっと無理だよね、と思っていたことを、最後にグイッと押し切ったというやり方もあると思うので。

DMM:やるしかないと?

金光社長:やるしかない・・・と言うよりは、これをやることでパチンコをサステナブルにしていって、この業界で働く人達が将来に夢を持って入ってこられるひとつの条件だと思っています。

DMM:手数料の問題が相当出てくるのかなと思うのですが。

金光社長:そうですね。課題は明白で、経済性があるのかとか、既存の法律「資金決済法」などの問題もあります。資金繰りでは商品の仕入れから入金までのラグをどのように解決するかなども考えないといけないですね。
ただ、実現しても全て100%のキャッシュレスになる事はないと思います。いかに低いコストで運用できるかの仕組みが大事ですし、そこに業界内のコンセンサスを取れるかも大きな課題だと思います。

DMM:そこはホールだけではなく、関わる業者全てのコンセンサスですよね?

金光社長:そうですね。一番は今決済システムを作っているPSAや認証協とかになると思います。

DMM:日遊協でも各会員企業でお話しされているとは聞いているのですが、キャッシュレスを推奨しているグループのようなものはあるのでしょうか?

金光社長:加入されている方のお話しではまだ理解が進んでいないようです。色々な関係部署に説明している段階のようです。

パソコンも淘汰!いつでもどこでも情報伝達かのうなシームレスネットワークの構築

DMM:なるほど、ありがとうございます。まだ準備段階という感じですね。今後動きがあると業界も大変革しそうですね。
続いて、貴社ではPCレス化・モバイルファースト化を推進されていますが、そのメリットについて教えて下さい。

金光社長:一番のメリットは人件費の削減ですね。仕事のデジタル化が進むと、一つ一つの仕事のパーツ化・モジュール化がハッキリしてくるので、大きい仕事をまとめてやるより細切れ時間を使ってどれだけ仕事を進めていくかになります。その時にタブレットなりスマートフォンで作業を進めた方が場所も選ばないので早いです。
なるべく、仕事の分割の仕方という人の意識をナチュラルにウェアラブルにして、息を吸うようにIT機器を使えるようにするにはタブレットの方が良いです。またデータの保存も弊社の場合、Googleのクラウドの中になりますので、ロギングするなどゼロトラストを踏まえて管理すれば端末を選ばなくてよくなります。パソコンは本当に必要な部署以外は使わなくて良いようにというのが今のハードウェアの整頓の理由です。

DMM:なるほど、ありがとうございます。クラウド上にデータ等の情報が次々と集約されて蓄積されていくと整理するのが大変そうなのですが、そこはどのように整理されているんですか?

金光社長:Googleの一番の技術は「検索」であり、弊社がGoogleにまとめてあるポイントはそこです。1か所で検索をかければ「mail」でも、「予定」でも「ファイル」でも検索対象に入ってきます。
そこで検索しても出てこなければもう出てこない、無いものだと、そういう割り切りが基本です。
大まかな階層はあるにしても、フォルダ分けでの整頓はもう違うと思います。「mail」も全部読まなくても良いからアーカイブしておけば、後で必要なら検索して使うという形ですね。

DMM:検索が一番のキーポイントなのですね。

金光社長:あとはカレンダーを見れば全部の情報が載っている状態を目指そうというルール付けはしています。人間のタイムラインは一つしかないのでそこを徹底しています。Googleの情報にアクセスすることで8割くらいの仕事は終わりますね。

DMM:弊社もGoogleカレンダーでスケジュール管理をしているのですが、人のカレンダーの予定を見ないで会議中などに電話をかける人がいたりとか、カレンダーなどのツールの活用を全員ができるようにすると便利になるという事を理解させるのがとても大変ですよね。

金光社長:そこがキモだと思います。コミュニケーションツールだけは統一する必要がありますね。社内で英語を喋る人、ドイツ語を喋る人がそのまま会話しようとすると「バベルの塔」のように、コミュニケーションが取れなくなってしまいますから。まずそこだけは「同じ道具を使おうぜ」、と言うのは重要な選択だと思います。以前は弊社もエバーノートを使ったり、ドロップボックスを使う人が居たり、LINEでやり取りしたりとバラバラのクラウドサービスを使っていましたが、全部Googleにしようということになりました。外部の業者さんとの連絡もGoogleのチャットに移行していただいています。

DMM:そうなのですね。やはり経営層に近い方に関してはかなり徹底して理解していらっしゃるのですか?

金光社長:時々チェックしますね。人間はやったことに対して評価されるとモチベーションアップしますので、結果として飴がきたり鞭がきたりすると真剣に取り組むんですよ。
なんでもそうですが、新しい文化習慣なので、その習慣を定着化するには誰かが押してあげる体制が必要だと思います。 

スピーディーな意志疎通はヒカリシステム流のコミュニケーション術に隠されていた

DMM:金光社長が新しい文化を拡散浸透させていくにあたって、どのような方々に渡して拡散されていくのですか?

金光社長:ひとつは経営計画書というルールブックを作って、毎年全員でシェアしています。
毎日勤務に関する方針を読んでくださいと、会社のルールやどのような状態を達成したいだとか。労働生産性を上げるために今月の認知生産性はどうなっているかのデータを蓄積し、目標に対してプラスなのかマイナスなのか見られるようにしています。
また、週に2回早朝勉強会を開いて、方針書の読み合わせを行なったりもしています。社長が今何を考えているのか、どう動いて欲しいのかなど勉強会を週2回、1年間に100回くらいで15年くらい続けています。すでに1500回以上やりました。

DMM:1回あたりどのくらいされているのですか?

金光社長:1回あたり40分程度で考えていることの共有や各個人の半年間の行動計画を作るのですが、その内容のチェック、目標設定の共有等を幹部としています。

DMM:毎回40分10年以上続けられるのは相当大変ですよね。

金光社長:以前は、前日の朝3時くらいまで接待や会食があり、酔いが醒めきれない朝5時に起きて勉強会をやったこともあります。(笑)
やると決めてカレンダーに入れてルーティーン化しているので、ずっとコツコツやり続けられています

DMM:経営者は多くの方が、継続される信念を持たれていらっしゃいますね。

金光社長:それはあると思いますね。すぐに変えるところと、変えない覚悟というのもあります。

DMM:現在、社内での「報・連・相」などもGoogle Workspaceを活用されているのでしょうか?社内のデジタル化が非常に進んでいるように感じますが、そのツールによる意思決定やミーティング等の円滑化等についての効果を教えて下さい。

金光社長:元々違うグループウェアの社内チャットを使っていましたが、今のコミュニケーションツールはGoogleチャットに統一しています。
また、社内ミーティングは(Google) Meetを使い、ほとんどハイブリッドで開いています。全員が集まるアナログミーティングはほぼないです。
あとはカレンダーの共有です。時間と言うのが人間の持っている経営資源の中で一番平等ですから、時間をコントロールできないとその他のものもうまく使えないだろうと思います。
効果に関しては当たり前のように行っているので、去年と比較してどうかという評価は難しいですが、稟議決裁は95%くらいが1日で終わります。
ミーティングの出席率もどのような形でも出席できますので高いです。スマホを利用すれば移動中でも参加可能ですし、私が出張していてもリモートで参加可能なのが大きいと思います。
コスト面でも複数のサービスを使っていた時に比べればGoogleだけのワンストップのため簡易的・経済的ですね。
日報も弊社では昔から「ボイスメール」というものを使っており、声で報告する形にしています。その報告に上司がコメントを付けて複数の人に分配する「知恵の共有」をしていたのですが、そこも内製化してコストをドンドン下げています。
戦略的にやらないことを決めていくと業務が膨れ上がっていくことを避けられていると思います。

DMM:声で報告を入れてそれを聞いた上司の方も声でコメントを入れるのですか?

金光社長:そうですね。上司が部下の報告にどのような指導をしているかも聞けるため、声でのコメントにしています。ただ送れと言うだけではやらなくなるので、評価制度と紐づけて、出勤日数と「ボイスメール」の提出を突合してボーナス査定に反映します。
「ボイスメール」を全部出さないと30%ボーナスを削減できますので、(未提出者に)「会社の業績アップに貢献してくれたね」って、言ってます(笑)
このチェックも自動でデータを集めて、反応するのにどのくらい時間がかかっているのかというのも図れます。コミュニケーションのクオリティが下がると反応までに40時間とか60時間かかってしまいますし、あまりにも詰めすぎて5時間とか6時間でコミュニケーションをとるとストレスがかかりすぎてしまいます。
適正時間が20時間前後という目安なのですが、メンタルが弱くなってくると聞かないで音声が消えてしまったとか、リアクションタイムが伸びた等のサインが見えてきます。

  

DMM:なるほど、メンタルの健康診断もできるのですね。温浴施設やホールなども社員は全員が実行しているのですか?

金光社長:そうですね。部内だけでサーキュレーションする事もありますが、パチンコ事業の幹部同士でもどのような話をしているか聞こうという事もあります。どの店でどのような取り組みをしようとしているか、どのレベルの報告をしているかというのは耳に入ります。

DMM:素晴らしいですね。お店の社員のチェックは店長がして、最終的には金光社長がチェックするという形なのですか?

金光社長:私だけが見ているものもあるのですが、GoogleのBIシステム(BI→Business Inteligence:ビジネスインテリジェンスの略。企業が保有する様々なデータを分析するツール)でレポートとして反映させるようにしようと考えています。そのレポートを基に経営計画書の中で、このルールを行ったことによってどのような状態を達成したいと思っているのか、それが実際にできているのか、できていないのか等、方針の達成状況やその成果を見られるようにしています。

パチンコ業からGoogleパートナーズへ。ボーダーレスは「創る」ことから生まれる

DMM:そのシステムへ行きついたきっかけというのはどのような理由なのですか?

金光社長:Googleを選んだ理由は、1番最初にマイクロソフトのエクセルで表計算をしていた時に同時編集ができないというところで、データの更新をサーバー内で頻繁に行う必要があった為です。そこで、Googleはオンラインで同時にデータの更新ができるというので使い始めたのですが、当時はグループウェアは他社製の物を使っていました。その中でチャットツールも含め、ワンストップで行えれば良いなと思いました。GoogleはGCPGoogle Cloud Platform:Googleが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称)の分野に年間2兆円かけている事を考えると他のソフトウェア会社では太刀打ちできないだろうという考えです。

     

 

DMM:そうなのですね。それでGoogleのビジネスパートナーもされているのですね。

金光社長:そうです、Google Workspaceというグループウェアの販売代理をパートナーとして行っています。

DMM:Googleのビジネスパートナーになるのは敷居が高いと聞いたことがあるのですが、やはりハードルが高いのですか?

金光社長:試験があって複数人が合格しないといけないというのがありますね。みんなで努力し合って受かりました。

DMM:全社一丸で協力されたのですね。その高いハードルを超えられた貴社ですが、今後の課題や取り組むべきことははありますか?

金光社長:どなたも言われるかもしれませんが、やはり人の問題ですね。新しい事業、DXの推進を進めていく中では現場の知恵だけではなく、新しい技術やプログラミング、それらをまとめたプロジェクトをマネジメントできるスキル、店舗型の事業運営をする時とは違ったスキルが必要になってきたと感じています。この2年半、コロナで採用も抑えいたため、採用市場での戦い方も浦島太郎状態になってしまっています。これからは、今までと違う質の人を採用しないといけないというのが一番感じていることです。
もうひとつは、パチンコ事業の遊技台の調達を中心に様々な資源調達が価格の高騰も含め難しくなってきていると感じています。その調達力のアップも引き続き努力が必要です。

DMM:ありがとうございます。課題に引き続き、金光社長が今後成し遂げたい事について教えて下さい。

金光社長:日本のエンターテインメントが伸びしろのある業界であり続ける事ですね。経営者や幹部も将来ビジョンが見えません、というのが今の状況だと感じています。20年前であればドンドン店を出して店長も増えて行くところが、パチンコホールが7,000店舗を切るかという状態でこの業界に居ていいのか?という不安の声が上がる中で、やりようによれば伸びしろ、マーケットはあるよねと。その一つとして異業種への業態転換というのもあるかもしれませんし、企業としては必要ならばそれを選択することもありだと思います。
それは私も同じでパチンコを軸としながらも、新しい時代のニーズに合った人生をイキイキと生きるための付加価値創造はしていきたいです。パチンコ自体も変容することによって変われるのではないかと。ただパチンコの場合変わる時には民間の動きだけではなくて、法律や社会の理解等の接点づくりも大事だと思います。それも私がMIRAIに参加している理由の1つです。未来に渡って100年成長していけるというと日本だけに制限すると難しくなりますし、世界に通用する内容とガバナンスの仕組み、依存問題も含めて折り合いがつけられるような世界に持っていけるようにしたいですね。

DMM:パチンコ業界として、越えなければいけないハードルが相当盛り込まれていますね。
HPで「遊びを創る、誇れる人生を創る」という2つの使命を掲げていらっしゃいますが、その目標への具体的取り組みについてお教えください。

金光社長:やっている事が先ほどお話ししたことに全て繋がっているということになりますね。「遊びを創る」というのはお客様にとっての付加価値創造ですし、「誇れる人生を創る」働く人の付加価値創造です。これを実現するのは経営者一人がやるのではなくて、会社というプラットフォームに乗っている全員が自分たちの為にやっているのだと共有できるようにするためのコミュニケーション作りに一番力を入れているところです。

DMM:ありがとうございます。blogでお仕事やグルメ・ゴルフ、旅行など色々発信されていますが、いま一番関心のある事はどんなことでしょうか?一つでも仕事ならこれ、遊びならこれ等カテゴリーごとでも大丈夫です。

金光社長:仕事はやはり今自分たちの会社で培ったモノを商品化して世の中の役に立てればと考えています。今は、ITのコンサルティングの分野で会社としてどこまでできるかが一番興味がありますね。
遊びは昔から旅行が好きなので、行ったことが無いところに行きたいです。サッカーのワールドカップに本当は行きたかったですけどね。来年はラスベガスでF1がありますので興味があります。 

DMM:なるほど。そういったスポーツ等で海外に行かれたりするのがお好きなのですか?

金光社長:今まではあまりなかったです。自分の体験したことが無かったことを体験してみたいですね。あまり物を欲しいと思ったことがないので、あれやりたい、これやりたいなどの体験することに興味はあります。

DMM:ありがとうございます。業界はITリテラシーが浸透しきれていないイメージもありましたが、DXなど業界外の企業と比較しても最先端の技術革新をされていて勉強になりました。
また付加価値というものも実態のなかなか見えない体験のひとつですね。その面でも今後は「実態のある物」よりも「道具を使う技術、満足する付加価値」などの感動できる体験が求められていくのかもしれませんね。

遊びも人も会社も地域も創る創造カンパニー

 

 パチンコ業界からGoogle Workspaceの販売、カスタマイズ、導入定着セミナーをはじめ、企業のITソリューションサポートも積極的に行っているヒカリシステム。

およそ一昔前のパチンコホール運営会社からは想像もつかないスピード感のある事業展開だ。

現在は国を挙げてのデジタル化が推進されている中、業務の効率化、働きやすさもデジタル技術との融合でもっと合理的になり豊かになるはず。

そこにいち早く光明を見出した同社の今後のビジョンはきっと目が離せないものになるだろう。

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