第一声

　街で芸能人を見かけたらサインは無理でも一緒に写真くらいは撮りたい。写真が無理なら握手くらいはしたい。そう思う気持ちは分かります。私もナツ美女史に会うといつもそういう気持ちになりますから皆様の気持ちはよく分かります。では、自らの欲求を満たすための第一声はどうすべきか。会っていきなり「ライン教えてください」は馴れ馴れしいにも程がありますし、「捕虜くらい痩せていますね」は失礼を通り越してバカの所業と言えます。まずは「すみません、〇〇さんですか？」と名前を確認するところから始めるのがスマートパチンコ以上にスマートだと私は思います。ちなみに、新日本プロレスのマスクマンBUSHI選手は顔バレ防止のため試合終わりに駅や空港などでファンに声を掛けられると「違います」と答えるそうですが、指の黒いマニキュアですぐにバレるそうです。

※選挙期間中はどこで声を掛けられても気さくに応じてくれるはず。喉から手が出るほど皆様の清き一票が欲しいのですから。

　名前を確認して本人であることが分かったら、その次はどうしましょう。ほとんどの方は「ファンです、いつも観ています」と言うと思います。ただ、その芸能人はクソが漏れそうなのを必死で我慢しているかも知れませんし、彼女と別れたばかりで落ち込んでいるかも知れませんし、隣にいる女性は奥様でなく愛人かもしれません。相手の顔色次第では潔く退くという選択肢を持っておくことも重要なのではないかと、以前、品川プリンスホテルのロビーで「ファンです、写真撮ってください」と言われたことのある私は思うのです。

※どこかにアップされ、あらぬ誤解を招く恐れがあったため、その方とは外に出て写真を撮りました（本文と写真は一切関係ありません）。

　つい先日、埼玉県久喜のホールに仕事でお邪魔しました。ゴミみたいな『北斗』で五万ほどヤラれ、かなりキレ気味にバーサスの角台を打っていると、四十歳くらいでしょうか。ちょっとイカツイ感じの男性がやってきて、こう声を掛けてきました。

「俺はいつも後ろ向き、かろうじてペニスだけは前向き。あの文章に感銘を受けました」

　これまでに私が紹介した手順を全部すっ飛ばし、出てきた最初の言葉がよりによってペニス。五万負け、半ギレ、『北斗』憎しと悪条件が三翻、親であればゴッパが確定しているにもかかわらず、そうしたこちらの事情は一切お構いなしにペニスですから私も思わず「正気か？」と言いそうになりましたが、私から笑いを取った時点でもう事情もへったくれもありません。勝ちも勝ち、優勝ですが、すべての芸能人やライターが私みたいな感覚を持ち合わせている可能性は低いので、第一声のペニスにはくれぐれもご注意を。

※人によっては怒声、或いはグーがすっ飛んでくる可能性があるので気を付けてください。