巳年

　昨年の六月に義母が亡くなりまして、今年は新年の挨拶を控えさせて頂いておりますが、よくよく考えてみるに今年七十九歳になる私の父親は米軍に捕らわれた捕虜、或いは甲本ヒロトくらい痩せていますし、母親もここ数年はあまり体調がよろしくない。そしてなにより「長生きしてよかった、はじめて孫にお年玉もらったよ」が口癖の祖母に至っては御年百歳ですから今夜死んでもおかしくない。というか、この二十数年、祖母のお年玉を欠かしたことはただの一度もないので実はもう既に死んでいて、毎年正月になると現れる祖母の幽霊にお年玉を渡している可能性もなくはありません。

※先輩は食べるスピードが生後七ヵ月くらい遅いのでいつも居残りです。

　これは身内だけにあらず。脂質、糖質を極力摂取しないよう医師に言われているにもかかわらず、陰でこっそり唐揚げ定食とチャーシューメンを赤ちゃんのスピードで爆食いしている中武先輩も心配ですし、私より年上のアニマル先輩、ヤング先輩、ドラゴン先輩といったところが体調不良を訴えると気が気でないというか、急いで喪服をクリーニングに出さなければと思ってしまいます。無論、私とて来月には五十六ですから例外ではありません。人間五十年と言われた安土桃山時代なら死んでいても不思議はないわけですから。

※この気狂いも早死にしそうな気がしますが、憎まれっ子世に憚ると言うので大丈夫かな。

　死後のプランはそれとなく考えています。私のお墓の前で泣かないで欲しいので墓は不要。ハワイの海に散骨してもらえればそれでいい。その分、葬儀だけは芝公園の増上寺で盛大にやって欲しいのですが、友達はいない、いらない、寄せ付けないがモットーの私に人望などあろうはずがない。増上寺でやるのに参列者五人はいくらなんでも寂しい、悲しい、恥ずかしい、残念なドリカムみたいだと思うのです。

　参列者の数をマルハンのグランドオープン以上にするにはどうしたらいいか。これはもう誰からも慕われる中武先輩みたいな人になる他ないのですが、折しも今年の干支は蛇、巳年だけに舌割れる、もとい、したわれる人間に生まれ変わるには絶好の年と言えるかも知れません。それ蛇、今年もよろしくお願い致します。

※慕われる人間になる。他人にあまり興味がない私にはなんともヘビーな課題です。