スマスロ北斗の拳
サミー
パチンコ・パチスロブログ
公開日: 2023/05/09
『スマスロ北斗の拳』がずっと人気ですなぁ。もちろん、ヒットするのは確信していたけれど、ここまでとは思いませんでした。これでまた、パチスロの人気が復調すると嬉しいです。
それこそ20年前の4号機北斗のシマは、人で溢れかえっていました。4号機に比べればシェアも台数も少ないものの、鉄火場な雰囲気はスマスロ北斗も負けていないと思います。
ただ、1つ違うのは。誰も台パンしてない。すごいよね。どれだけハマろうが、どれだけ中段チェリーを引けなかろうが、引いてもタイミングが悪かろうが、BBが単発で終わろうが、19連目でラオウがミカンを投げつけて来ようが、誰も台パンしない。20年前では考えられないことです。
台パン。台にパンチする。大体は下パネル、人によってはリールの盤面を殴る人もいました。20年前は、それが当たり前だったのです。僕は台パンが嫌いでした。子供じゃねぇんだから、自分が悲しい、辛い、どうにかしてほしい気持ちを、暴力で表すな、と。お菓子コーナーで床に寝転んでダダこねている子供と一緒じゃねーか、と。周りを威圧すんじゃねぇ、と。
僕も若かったので、自分が好きな台を台パンされると睨みつけたりしていました。若いねぇ。
時代は変わった。今のホールは暗くもないし、怖そうな人も少ないし、タバコも吸えないし、店員さんも優しい。台パンなんか出来る雰囲気じゃない。しようものならSNSに晒し上げられますから。素晴らしきかな相互監視社会。バカが増えたと言われがちですが、僕はバカが可視化されただけ派です。昔は可視化されなかっただけで、お醤油ペロペロよりもっと酷いことが毎日どこかで起こっていたと思います。
台パンは嫌いな僕ですが、1度だけ人の台パンで笑ってしまったことがあります。
あれは今から23年前。仕事終わりに夕方から職場近くのホールで4号機の『ハナビ』を打っていた時のことです。
あの日は確か、左上段BAR狙いに飽きて、長男ドンを下段に狙っていました。中段ラインにリプレイ・リプレイ・風鈴が並んで、ニヤリとしながら1枚掛けでボーナスを揃える。そんな光景が、今はっきりと浮かび上がりました。
いや、走馬灯じゃん。死ぬんか。最終回か。死にません。最終回でもありません。
そんな感じで楽しく打っていたら、隣に同年代の若い男の子が座りました。コインの買い方、メダルの投入の仕草から察するに、パチスロはあまり詳しくなさそう。きっと、何回か友達と一緒にハナビを打ったことがある程度なんでしょう。おぼつかない手つきながらも、左リールの上段にBARを狙って消化していました。
(ボーナス成立にあまりに気付かないようだったら、教えてあげるか)
そんなことを考えながら目の端で彼の台の様子を気にしながら打っていました。すると、彼の台で3消灯が発生。フラッシュは不発でした。ハズレor氷or角チェリ―。出目から察するにハズレのようです。ああ、残念…と思ったその時。隣の彼は台に手を合わせて一礼をし、1枚掛けでドンちゃんを狙い始めました。
(…まさかっ⁉)
恐らく彼の友達は、彼にこう教えたのでしょう。
「この台はフラッシュが発生して何も揃わなかったらボーナスだよ」
と。フラッシュ毎の対応役があること、小役否定でボーナスが確定するのは取りこぼしていないことが条件であることは説明せずに。いや、したのかもしれない。彼が深く理解していなかっただけかもしれない。とにかく、隣の彼はボーナスを確信していました。
1枚掛けで数ゲーム、ドンちゃんを狙うも当然揃わず(一応、抽選はしてるけどね)。次に彼は慎重にBARを狙い始めました。ああ、BIGとREGがあるのは理解してるのか。そりゃあそうか。でもハナビのBARは見えにくいもんね。何回か揃わなかったぐらいじゃあ、自分の目押しミスかと思っちゃうよね。
(入ってないよ?)
そう一言、言ってあげれば良かったかもしれません。でも、入っていることを伝えるのは善意だけど、入っていないことを伝えるのは嘲笑、冷笑、煽りの類いなのではないか? 彼の成長を妨げるだけではないのか? そう思って僕は何も言いませんでした。しばらくして、彼もボーナスが入ってないことに気付いたのでしょう。誰から見てもわかるぐらいガックリと項垂れて、そして次の瞬間
「ドンっ!」
とんでもない強さの正拳突きを下パネルにお見舞いしました。さっきの一礼と合わせて考えるに、彼は空手の経験者です。それも結構なレベルの。それまでの所作と下パネルへのスピードとインパクト、そして轟音がそれを物語っています。もし、僕が彼に「入ってないよ」と伝えていたら、あの正拳突きは僕の顔面にお見舞いされていたかもしれません。セーフ。
その後も彼はフラッシュが光る度に一礼をし、1枚掛けをし、そして台パンをしていました。それは2つ隣のシマで半蔵(NET)を打っているお客さんが、立ち上がってコチラを心配そうに見るレベルでした。真横にいる僕は、もう気が気じゃありません。
「もうさっさとボーナス成立してやってくれよ、ドンちゃん!」
心からそう願っていました。しかし、隣の台はなかなかボーナスが成立しない。台パンの頻度は増すばかり。僕はなんだかその状況が面白くなってしまって、笑いがこみあげてきてしまいました。
(ダメダメ、笑ったら正拳突きされるって! あのレベルの喰らったら失神するって!)
そう考えれば考えるほど、吹き出しそうになります。結局、僕は下皿にあったコインを箱に移して、ヤメることにしました。僕がドル箱を持って立ち上がると、隣の彼は僕に向かって会釈しました。
(いや、良いヤツなんかい!)
危ない。吹き出すのをギリギリの所で耐え、彼に会釈を返してカウンターに向かいました。
景品を受け取って、店を出る前に、僕は気になって彼の様子を見に行きました。彼は僕が元打っていた台に移動していました。膝から崩れ落ちそうになりました。
(ええっ⁉ さっき、どういう気持ちで会釈したの?)
まあ、それは別にいいんです。どうせ設定1ですから。よく見ると、たまやランプが点灯していました。まあまあ、それも別にいいんです。彼がボーナスを引けたのなら、台パンをヤメてくれるのならば、それでいい。そう思いながら、少し離れた場所から見守っていました。残念ながらドンちゃんは揃わず。何回かの失敗を経て、彼はREGを揃えました。
「ドンッ!」
彼は今日イチの正拳突きを元僕の台にお見舞いしました。台パンとしては本来のタイミングではあるのですが、僕はもう限界でした。店の外に出て、声を出して笑いました。
「ボーナスでも殴るんかい!」
と。まあまあ、BIGが良かったんでしょうね。ドンちゃんが揃えたかったんでしょうね。その気持ちはすごくわかるけど、台パンは人に笑われるから。滑稽だから。ヤメた方がいいよっていう、そういう話。
あの正拳突きの彼は、今何をしているだろうか? たぶん、他の多くの若者同様、パチスロからは離れてしまっただろうなぁ。でも、もしかしたら北斗の拳がホールに帰ってきた今のタイミングで、彼もホールに戻ってきたかもしれない。それはすごく素敵なこと。心配なのは、彼が23年前と同じ正拳突きをスマスロ北斗にお見舞いしまくって、その光景を撮られてSNSで拡散されやしないか、ただその一点のみです。
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