ちょっと愚痴聞いてください

　こちらにきてゴウ君という半グレみたいな見た目の青年によく「ダサい」と言われます。着ているものがダサいとか、マックばかりの食生活がダサいとか、薄毛を隠しているのがダサいとか、そういうことではなくセブ島で生活する上での心構えというか覚悟というか考え方が、株主総会における社長の泣き落としよりもダサい、超ダサいと言われるのです。無論、良かれと思って言ってくれているのは重々承知しているのでいつも参考程度に聞いています。

※昔、ボクシングをやっていたらしいので絶対に敵に回してはいけない人です。

　キムラというこれまたひと回り以上歳の離れた色の黒い青年にもよくおちょくられます。たまに私のことを知っている方と会って写真撮影を頼まれているのを見たりすると「気分いいんでしょ」とか「さすがパチスロライター」とか、まるで中学の後輩でもからかうような感じでバカにしてきます。鈴虫に言われたらかなり食い気味に右フックをお見舞いするところですが、如何せん、こちらではまだ新人。振り上げた拳でいつも頭を搔いています。

※インスタグラムではおなじみのキムラ。タバコは常に1本買いです。

　週四で通うマックのブス店員もそうです。こちらの英語が拙いのをいいことに、つい先ほどもお釣りをちょろまかそうとしやがったので、スマホで彼女の写真をバッチリ撮った上で「お釣りをよこせ、本社に連絡するぞ」とこれまた拙い英語で言ってやりました。もっとも、お釣りといっても10ペソ、すなわち約25円の話なのですが、よくよく考えてみたら世界的な大企業で釣銭のちょろまかしがたまに行われているというのは、マルボロとハイライトが二つ同時に特定保健用食品、トクホに認定されるくらいあり得ない話だと私は思います。

※太い客の釣銭をちょろまかすとは何事かと、ぶっ飛ばすぞこの野郎。

　仕事のミスもちょいちょいやらかします。社員に伝えたつもりが伝わっていなかったとか、私のミスでお客様に不快な思いをさせてしまった、返金する羽目になったとか、先週末に田中がレイアという女性社員を泣かせてしまったとか最後のはちょっと違うように思いますが、些細なミスのなんと多いことか。ハードボイルドのAT中に黒ナビが出ているのに何度も赤を押してしまう中武先輩をぼんやり思い出しました。

※こちらにきてまだ二週間ですが、彼女が恋しくてたまりません。

　結局、なにが言いたいのかと言うと、こちらにいるときの私は日本にいるときのそれとはまったくの別人。なにをやっても上手く行かないダメなオジサンなのですが、そうは言っても南国ですから鳴かず飛ばずというのは如何なものかと思うのです。低設定なのかな。

※すみません、俺、日本でも鳴かず飛ばずでしたね。この日も音を止めちゃったし…。