他人の絶対に許せないは…

　皆様、くさやをご存じでしょうか。と言っても、私の使用している熟成枕のことではありませんし、靴下を長時間履いた後の足の臭いでもありませんし、ましてや生ニンニクを致死量入れたカムジャタンを食った翌日に収録現場に平然とやってくるガル憎先輩の黄色い吐息のことでもありません。ムロアジやトビウオなどを長期熟成した塩水、通称くさや汁に漬けた干物のことで主な原産地は伊豆七島。臭いのキツさは生産地によって若干異なるようなのですが、総じて皆様の彼女、或いは奥様のくさや汁以上に臭くて堪らないのです。

※先輩、お願いですから収録前日の生ニンニクと眞露の大量摂取は勘弁してください（隣は嫁）。

　ただ、これはくさやがあまり得意でない方の意見。私はスーパーでくさやのビン詰めをいくつも買うほど好きなので正直あまり臭いと思ったことがありません。いや、むしろ、カレーライス同様、食欲をそそるいい匂いだと思っているのですが、フィリピンにもトヨという田舎の婆さんみたいなネーミングのくさやがあり、街を歩いていると時折あの独特の匂いが漂ってきます。

※くさやの臭いを嗅ぐと大概こんな顔になります。

　現在、私が住んでいる刑務所みたいなマンションではどうやらそのトヨが流行っているらしく、左右どちらなのかは分かりかねますが、昼どきになると毎日決まってあの臭いが換気扇を通じて漂ってきます。とは言え、先ほども申し上げたように私はくさやが『ハードボイルド』の設定2以上に好きなので、たまにであればまったく問題あません。むしろ、コメでも炊こうかという気になるのですが、こう毎日となるとさすがにしんどい。ちょっとデリカシーに欠けるなと業界イチ、デリカシーに欠ける私は思うわけです。

※こんな顔にもなります。

　自分が食べるくさやの臭いはまったく気にならないのに、人様が食べるくさやの臭いにイラっとくるのは何故なのか。その答えは先ほど本稿を執筆しながらブリッとかました豪快な屁にありました。右手でしっかり握って臭いを嗅ぎ、その臭いが強烈であればあるほど嬉しかったりするのですが、これって長時間履いた靴下とか一週間熟成した枕とか金玉袋と足の付け根の間の臭いなどと同じで、自分のものは許せるというか、むしろ大好物だったりするのに、他人のものは絶対に許せないじゃないですか。

　繋がらぬWi-Fiも正常に機能しないシャワーもすぐ詰まるキッチンのシンクも許します。ただ、隣人のくさやだけは絶対に許せないのでオーナーに言ったのですが、構造の問題だからと取り付く島もない。もうこうなったら最終手段に打って出る他なかろうと、昨日、マンションの解約手続きをして日本に帰ってきたこのやり方が正しいのかどうか、またイタチの最後っ屁と言うのかどうかは置いといて、とりあえずセブで住む家がなくなりました。

※「へえ」というリアクションは求めていませんのであしからず。