お前、金いくら持ってんだよ

　今どきはタクシーもコンビニもファストフードも支払いは電子マネーなので現金を以前ほど持ち歩かなくなりました。均すと二十万くらいでしょうか。ちょっと多いのではないかとのご指摘もありましょうが、実戦上、キャバクラや風俗、愛人との密会などは明細で足がつくためクレジットカードは切れません。いつどこで思いがけない恋が芽生えるかは誰にも分からない、即ち、突然のハマグリチャンスを予測することは不可能なので…って私は何を言っているのでしょう。私が言いたいのは我々の主戦場たるホールで使用できるのは現金のみ。であるなら、『からくりサーカス』を半日、いや、六時間粘れるくらいの額は持っていていたほうがいいということが言いたいのです。大変膣礼致しました。

※のっけから下ネタ、反省しています。

　個人的には年齢以上の現金は持っていたほうがいいと思うので私なら五万四千円、アニマルかつみ大先輩なら七万八千円。というのは、すみません嘘です。そんな嘘をつくと大先輩の巨大肉バットで頭をカチ割られそうなので、ここでしっかり謝罪、訂正させて頂きますが、十年くらい前の私は多分調子に乗っていたのでしょう。常に五十万ほどの現金を持ち歩いていましたが、それはいつ万発先生に「おい五島、三十万持って銀座のクラブに来い！」と言われてもいいように、いつ万発先生が「なにパス♪ なにパス♪」とオーパスワンのテーマを歌い始めてもいいようにと常に準備を怠らなかっただけの話です。大崎さん、もう呼ばないでください。というか先輩なのだから全部おごってください。

※アニマル先輩は私の三つ上なので58歳。ずっと私が敬語で接している大崎先輩は同い年です。

　じゃあ、セブではどうなのか。実のところタクシーや美容院、レストランなどいまだに現金しか受け付けない店が多いため、日本円にすると三万円程度でしょうか。それくらいの額は持って歩いているのですが、セブに私名義の銀行口座はないので、いつも現金がなくなると日本から持ってきた円を現地の通貨ペソに両替しています。このところ、思いのほか出費が多く、ちょっと心許ない感じになってきたので両替屋に連絡を取り、一週間後に会うことになったのですが、先ほど、財布の中をちらり見遣ったら残金二千円チョイ。タバコの本数を減らそうか、自炊しようか、トイレマジックリンでうがいしてから水道水を飲もうか、残りあと一週間を二千円でどう凌ぐか、そればかり考えていました。私は潰れそうな町工場のハゲ社長か。

※フィリピンの紙幣です。

　そう滅多には訪れぬ五島金融危機。これほどまでにヒリついた感じは一体いつ以来でしょう。河川敷でションベンの可能性を感じながら濡れたエロ本を漁っていた中学二年の秋か、『バレリーナ』でクソほどやられた社会人一年目か、はたまたビデオケースに隠した三百万をキャバ嬢に持っていかれたあのときか…って、すみません、最後の三百万は中武先輩のエピソードでした。

　とにかく、この手の極貧エピソードはバラエティでは鉄板ネタ、ユーチューブであれば再生回数を稼げると誰かが言っていたので、私が貧しかった時代はいつだったか。それをいま必死になって思い出さんとしているのですが、ごめんさない、雑草食ったとかアリ食ったとか、ジイサンの着ていた肌着で出汁取ったとか、皆様が期待しているような極貧エピソードはもちろん、買ってもらえなかった、うらやましかった系のエピソードすらございませんでした。ただでさえ低い好感度、また下がりましたかね。

※ダイナースは使えるかも知れません。