意思表示

　パチンコ店やライブハウス、飲食店などの陰に隠れてしまっている感はありますが、実のところ、宿泊施設や交通機関、旅行代理店といった観光業もまた厳しい経営を強いられています。旅行はパチンコやライブほど手軽なレジャーではないためコロナが落ち着いて、ある程度の時間が経たないと客が戻ってこないと言われています。体力のない中小は資金繰りが苦しくなってバッタバッタと倒産、今ぎりぎり持ちこたえているところも今後どうなるか分かりません。

　ゴールデンウィーク前でしょうか。沖縄県知事の「沖縄にこないで頂きたい」発言を機に観光業も激しいバッシングに晒されました。都心部からコロナを運んでくる可能性がある旅行者を受け入れる宿泊施設、その旅行を斡旋する旅行会社、旅行者を目的地に運ぶ交通機関、旅行に携わるありとあらゆる業種が叩かれました。緊急事態宣言を受け休業した旅行会社や宿泊施設も多いのですが、止むに止まれぬ事情で休業しなかったところも一部あったため、業界が叩かれるという良くあるパターンです。

　とある旅行代理店の社長は、こういうとき観光業を擁護してくれる声があると本当に嬉しいし、もうひと踏ん張りしようという気になる。感謝してもしきれないと前置きした上でこうも言っていました。擁護の声が大きくなると、それに呼応するようにバッシングもどんどん強まるから、ほどほどにしてくれるとありがたい。派手にやり合うとコロナが落ち着いた後の仕事に影響が出る可能性も否定できないからと。

　観光業に携わるすべての人がこう考えているわけではないと思います。むしろ、マイノリティかも知れませんが、こうした小さな声にも耳を傾けていいんじゃないかと私は思うのです。声をあげ、異なる正義と正面切って戦うことが必ずしも当事者にとっていい結果をもたらすとは限らない。今年75歳の父親から学ぶことはもうないと思っていましたが、いやいや、ありました。

　ほどほどがありがたいと聞いたので私はほどほど。ただ、戦う人もいて、意思表示だけする人もいて、意思表示はしないけど心の中で応援している人もいてと、色んな人がいていいんじゃないかというのが私の考え方。およそキャラには似つかわしくない堅苦しい話を長々として申し訳ありません。ただ、何も考えていないと思われるのは心外、いや、ホントはなんと思われても全然構わないのですが、意思表示くらいはと思い書かせて頂きました。来週からはまたオイル漏れする女性が続出するような下ネタにお付き合いください。