外野席から面白おかしく眺めてください

　目覚ましを4時半にセットして朝イチの電車で現場に向かい、個人的には受けても受けなくてもどっちでもいい抽選を受け、番号の記されたマス中でボーっと開店を待つ服役中の窃盗犯みたいな生活は決して嫌いじゃありません。むしろ、ちょっと好きまでありますが、日本に帰ってから急激に忙しくなりまして、朝早くに起きねばならない現場が続くとかなりしんどいというか、身体が追い付かない。これはリフレッシュが必要だろうということで先週からセブに来ています。

　この時期のセブは乾期でとても過ごしやすい…というのはすみません嘘です。真夏なのでやはり湿度は高く、恋はアツアツアツシの亜熱帯で八月の蕨駅前となんら変わらないとの印象。旅行で訪れる分には最高も最高、弊社のジンベイザメと泳ぐツアーの最低催行人数は二名ですが、こちらで生活をするとなると、この焼けた石に水滴を垂らしてジュッとなるくらいの暑さはなかなかに厄介です。実際、連日のうだるような暑さでもう死にそうですし。

　いや、現実的な話をすると私はもう死んでいます。というのも、昨夜、残りのフィリピンペソが心許なくなってきたので日本円を両替せんと、クローゼットの中に置いた封筒の中身を覗いたら何故か一万円札だけがゴッソリなくなっていたのです。私も色んな可能性を考えました。パチスロでバカみたいに負けてそもそも財布に一万円札が入っていなかった可能性、クソしたときに間違えて一万円札でケツを拭いた可能性、ダメじゃないよ僕たちあきらめんな可能性、サンボマスターの可能性は最高であり後世に語り継ぎたい名曲であるわけですが、セブ出発の前々日は狭山のキンパルで六万勝って、前日は外出していないので財布に入っていなかった可能性はない。またケツ拭き紙についてもこちらのトイレは紙を流してはいけない決まりになっているのでこれもない。となると、やはりビデオケースの中に隠しておいた三百万をパクった中武先輩の元セフレ同様、誰かが盗みやがったと考えるのが妥当のように思います。

　先ほど、自動小銃を携えた警察官三名に事情を聞かれました。ただ、こちらに着いてから昨夜まで封筒を触っていなかったので具体的にいつなくなったのかが分かりません。これでは捜査しようがないと捜査一課の腕利きたちも鑑識課員も頭をひねっていましたから推察するに林檎殺人事件以上の難事件なのではないかと。ああ、哀しいね、哀しいね。

　ともあれ、仮に犯人がいたとしても捕まらないであろうこと、現金が戻ってこないであろうことは、この国の警察事情に鑑みてなんとなくわかります。であるなら、このコラムの原稿料で多少なりとも補填したいと考えるのはこれ当然のことですが、如何せん、被害総額は二十万。額が額だけに焼けた石に水滴を垂らしてジュッとなる程度、要は焼け石に水です。

※ポロシャツと機関銃。