命がけのパチスロ

　その日、出さないと子どもの給食費が払えなくなってしまうのか、電気ガスに続いて水道を止められてしまうのか、はたまた債権回収業者に詰め寄られ指を詰める羽目になってしまうのか。他人なのでそのあたりの事情は分かりかねるというか、分かろうとも思いませんが、たまにコイツ、腹にダイナマイト巻いているんじゃないかみたいな顔して打っている人を見掛けます。

※キンタマの代わりに手りゅう弾を二つぶら下げています。

　スマホで動画を見ながらスライド打ちしているどっかの専業とは大違い。パチスロ台と真摯に向き合い、一打、一打、嚙み締めるように、まるで明日死ぬことが決まっているかのように必死で打つその姿は隣にいたらウザいことこの上ありませんので、右拳にメリケンサックを装着するかも知れませんが、少し視界に入る程度の距離で遊技しているのであれば問題なし。むしろ、なんかやれ、なんか言え、もういっそのこと暴れてしまえと思います。

※たまにこんな顔して暴れます。

　先日、とある地方の来店業務で例によって玉を割っていたところ、同い年か私よりも少し若いか、いずれにせよオジが二台隣で打ち始めました。コインサンドのボタンを高橋裕二郎が目潰しするときくらいの勢いで押し、小役ハズレ目で氷が揃えばやや大きめの舌打ちをし、ビッグが揃えばヨシッとの掛け声と同時に大きくガッツポーズと既に『牙狼』で二千万ヤラれた人みたいな打ち方だったのですが、驚くなかれ、開店からまだ十分。このオジがどうしても今日勝たなければならぬ理由があること、だから『新ハナビ』を命がけで打っていることだけはそれとなく伝わりました。

　俺は生死をかけて打っているんだとの気迫が台に伝わったのか、オジにビッグ5連の僥倖。その後も順調に出玉を増やし気付いたらドル二箱も抱えていました。するとそのオジ、やおらスマホを取り出し、いじり始めたのでユニメモでもチェックしているのかと思ったのですが、時間にしておよそ二十分。あまりにも長かったため、申し訳ないとは思いつつ、オジの手元をチラリ見遣ったら、風俗サイトでデリヘル嬢を検索中。なるほど、実にわかりやすいといった感じですが、このオジは新ハナビにも風俗嬢にもせいしをかけて臨む人と考えられなくもないのかなと。