長年の夢
記事一覧へ公開日: 2017/07/28
串カツ田中の店内の至る所に「ソース二度づけ禁止」と書かれた貼り紙があることをご存じでしょうか。いや、ご存じでしょうかという以前に、ライターの田中は知っていても串カツ田中は知らない方もいると思うので簡単に説明しますと安い串カツ屋です。簡単が過ぎるような気がしないでもありませんが、実際そうなのでそうとしか説明できません。 二度づけしたい。これは俺が長年抱いていた夢でもありました。店員の目を、そして周囲の客の目を盗み二度、三度とソースの海に串カツを潜らせたい。たとえそれが掟破りの逆サソリであったとしてもやりたい。ダメだと言われれば言われるほど、あの貼り紙を見れば見るほどやりたい、乱暴にヤリたいとの衝動に駆られるのです。
先日、ハワイを訪れた際、カラカウア大通りをふらふら歩いていたら、とあるビルの地下に串カツ田中を見つけました。スパムやズッキーニ、ハラペーニョといったハワイ限定のメニューがあったから店に入った…というのは、すみません嘘です。監視の目をすり抜けられそう、即ち二度づけできそうだったから店に入ったというのが本当のところです。そりゃそうだ、ハワイには美味い店が星の数ほどあるのに、なにが悲しくて家の近所にもある串カツ屋をチョイスしなきゃいけないんだって話です。
時刻は22時。ラストオーダーが近いこともあり、客は俺の他に2組、店員も後片付けに取り掛かろうという状況でした。とりあえず、他の客と少し離れた席に座りビールと串カツを何本か注文。改めて周囲の様子を窺ってみたところ、やはりガードは甘い。これなら絶対にイケる、長年の夢を果たすときが遂にやってきた……自信が確信に変わるのにそう時間は掛かりませんでした。 やりました。監視の目をすり抜け、1本目のスパムを二度ソースにくぐらせました。そして少し大胆になった2本目のパインは三度ソースにくぐらせました。これでもう思い残すことはない。あとはお会計のときに自ら二度づけを申告し、罰金千円を支払えばそれで終わる、俺の串カツ二度づけ物語は完結すると思っていたのですが、いざ支払いの段になって罰金を払おうとしたら、まったく問題ないと。二度どころか気が済むまでやってもらって構わなかったのにとまで言われたのです。 どうやらハワイでは衛生上の問題で客に出したソースはすべて1回使ったら捨てるとのこと。確かに、言われてみれば店内に二度づけ禁止の貼り紙はなかったような…。正直、長年抱いていた夢を叶えられたことは素直に嬉しいです。ただ、こうした状況での二度づけでは素直に喜べないというのも本音だったりします。はい、おしまい。
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