子犬はかわいい、バラは美しい、アワビはやらしい

　飲み会で隣に座った美女がそっと膝に手を乗せてきたら普通はアパホテルに予約を入れます。その美女にツルツルですと言われたら髪の毛に悩みを抱える男性は微妙でしょうが、普通はガッツポーズをします。無論、中には毛は多ければ多いほうがいい、なんならケツメドまでビッシリという福岡のナベDみたいな方もいるでしょうが、それは恐らくマイノリティ。ほとんどの殿方は首から下の毛は必要ないと思っているはずです。

少々話が逸れましたが、別段、俺はオマン毛リオンの話をしたいわけではありません。手を乗せられたらホテルに電話、ツルツルと言われたらガッツポーズといったように物事には正しいリアクションというものが存在すると言いたいのです。もっと分かりやすく言うとリノで2000Gハマってアッターキタ、クソッタレ、皮肉たっぷりのマジウケるはあっても、心の底からの超ラッキーはまずもってあり得ない。飼っている雌犬の名前がロリエくらいあり得ないということが言いたいのです。

子犬を見たらかわいい、バラの花を見たら美しい、アワビや松茸を見たらやらしい、ビワコに会ったらクソババア、これが正しいとは言わないまでも、極々普通の感覚を持った人の反応だと俺は思います。この感覚を持たない人が悪いとは言いませんが、得てしてそういう人は変わり者というか、スターウォーズの順番くらいややこしい人が多いです。

先日、雑誌連載の取材で高1の息子と隅田川沿いを歩きました。歩けばいつもと同じ景色も少し違って見えるなどと、ロマンチックなことを言う男なので、割と普通の感覚を持ち合わせていると俺は思っていたのですが、隅田川に浮かんでいたカモの群れを見て何の気なしに言ったセリフを聞いて、ああ、ちょっと違うかなと思いました。

生まれたばかりなのでしょうか、小さいかもが親ガモの後を一生懸命付いていく姿を見てこう言ったのです。「俺、カモ好きなんだよね。カモ南蛮とか超美味いし」と。

まったく親の顔が見てみたいものです。