笑点
記事一覧へ公開日: 2017/11/04
とある日曜日の夕方、僕は空港へ向かう車の中で焦っていました。
収録が長引いたり渋滞に巻き込まれたりと移動がスムーズにいかないことは珍しくないので飛行機はいつもある程度時間に余裕のある便を取ってもらっており、この日は16時終了予定の収録に対して飛行機の時間は19時。ホールから空港までの移動は1時間ちょっとですから、いささか余裕を持ちすぎのような気もしましたが、日曜日の夕方は事故渋滞なんかを食らいやすいのでこの便を予約してもらっていたのです。
がしかし、高速道路の手前で車がまさかのビタ止まり。ノロノロながらも車が進むような渋滞ではなく、ビタ止まりです。
止まってすぐの時はまだ時間にもだいぶ余裕がありましたので、どうせすぐ動き出すだろう、さすがにビタが何十分も続くことはないだろうと高を括っていたのですが、30分経っても40分経っても車が動き出す気配はありません。止まっていた場所から空港まではどんなに急いでもまだ1時間近くかかるため、ビタ止まりのまま18時を迎えてしまうと完全にアウツであり、一向に動き出す気配のない車内で焦りは募るばかり。
そしてそうこうしているうちに、カーナビのテレビから聞き覚えのあるBGMが流れてきました。
テッテケテケテケ テッテ♪
テッテケテケテケ テッテ♪
日曜日の夕方。明日からまた仕事が始まる憂鬱さと、この時間からゴロンと寝転んで一杯飲(や)っていることへの幸福感と背徳感とがこの曲を聴くと入り混じる。そう、日本人の日曜日、夕方5時半といえば、笑点です。
笑点が流れ出したということは18時へのカウントダウンが始まったということですから、聞き慣れた軽快な音楽がこの状況ではザラキの呪文のように聞こえてきます。出発予定時刻の20分前には空港に着いていなければならないことを考えると、前座が終わって笑点メンバーが出てきた頃には車は動き出していなければなりません。
そんなことを思っていると、あっという間に前座が終わり、お馴染みの面々がステージへ。
詰んだ。完全に詰んだ…。
予期せぬ渋滞のせいで今日は帰れないかもしれないし、よしんば帰れたとしても交通費は自腹の可能性も。こんな状況下では小遊三師匠の下ネタにも円楽師匠の昇太さんイジリにもクスリともできず、木久扇師匠のボケにはイラつきを覚えてしまうほどです。
テッテケテケテケ テッテ♪
テッテケテケテケ テッテ♪
再びこのBGMが流れ出したということは、間も無く18時の合図。この頃になってやっと車は動き始め、その後の高速道路はこれまでのビタ止まりが嘘のように順調に流れて行って18:50頃には空港に着いたわけですが、搭乗手続きは締め切られている時間ですからとりあえず便の変更が可能か、空席はあるかを確認するために窓口へと向かいました。
するとどうでしょう。なんと使用機到着遅れとやらで飛行機が30分ほど遅れており、まだ搭乗手続きは可能だというではありませんか。
まさにラッキー僥倖幸運好運。
これにより事なきをえ、時間はだいぶ遅くなりながらも無事東京に帰ることができました。
この時の気持ちを木久扇師匠に倣ってダジャレで表すならば、「機体が期待に応えてくれた」といったところでしょうか。
おーい山田くん、座布団持ってって。
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