カードの取り忘れにご注意ください 前編

高設定の取り合いというのはつまるところカネの取り合いですから、パチンコ屋には僻み妬みといったネガティブな感情が渦巻いています。

それでも遊技者は皆、分別のあるいい大人であり、基本的にはそういった感情は自分の中で処理をして他人に迷惑をかけることなく、ぱちんこ・パチスロを楽しんでいるのです。

しかし、一部では僻み妬み、あるいはカネが欲しいというストレートな欲求から、悪質な行為に及んでしまう人もいるわけで…。

先日、とある地方で実戦をおこなった時のこと。

朝から打っていた台が調子良くコインを吐き出し、2千枚ほど獲得したところでシメのハナビへと移動しました。するとハナビでも数ゲーム回したところでビッグを引き当て、トータル獲得枚数は2500枚ほどに。終了時間も迫っていたのでトイレに行って手を洗ってと、帰る準備を進めておりましたら、ふと清算カードを挿しっぱなしにしていたことに気づきましてね。

そのお店はパーソナルで、カードの中に現金は残っていなかったものの、先述した2500枚ほどのコインが入っていましたのでそそくさと席に戻ると……。

アウツ…！

カードなし…！

ほんの1分か2分席を離れたその間に、カードが抜き取られているではありませんか。

念の為に全身、そしてバッグの中とくまなく探してみましたが当然見当たらず、いや待てよ、もしかしたら店員さんが気を利かせて抜き取ってくれたのかもしれないと呼び出しボタンを押して聞いてみると、インカムでゴニョゴニョとやった後にバツが悪そうな顔をしながら

「他のお客様が抜き取られた可能性があります」

とのこと。

ぐにゃあ

カイジを初めて読んだ時、なんだよその表現はといささか馬鹿にしていましたが、今ならわかります。店員さんの一言を聞いた瞬間、目の前の景色が全て歪んで見えたのです。その様はまさに「ぐにゃあ」。

不用意に席を離れた僕にも責任はありますが、悪いのは間違いなく取ったヤツ。圧倒的悪意を持った鬼畜生の所業としか思えません。

しばらくして、呆然と立ち尽くす僕の前に店長さんが現れましたので事の経緯を説明すると、すでにカードは使用停止にし、犯人と思しき男も特定しているということだったのですが、このゴミクズ野郎、いや、マジレス業界ウジ虫、あろうことかシラを切っているというではありませんか。

でも映っているんですよね？

防犯カメラでその人が犯人だってことはわかっているんですよね？

仕事でお邪魔している手前あまり店に迷惑はかけたくないので、店内でテメェこのヤロウ大友組ナメんじゃねえとチャカの一本でも振り回してやりたい気持ちをグッと堪えながら、なるだけ柔らかめの口調でそう伝えたところ、本人が認めない限りは店舗ではどうしようもないと、警察を呼ぶしかないと店長さんは仰るのです。

こういう仕事ですからできる限り穏便に、カードが返ってくればもうそれでいいやと思っていた僕は、犯人がわかっているというのに何もできず、警察を呼ぶか呼ばないかの二択を迫られるという事態になってしまい……。

どうする、どうなるゲンズブール！？

後編に続く