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諸積ゲンズブール

サ道 6

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公開日: 2020/04/15

テレビをつけてもSNSを開いても、自粛自粛自粛。

もはやゲシュタルト崩壊を起こしそうなほど自粛という文字を目にする今日この頃ですが、だからでしょうか。SNSを見る限り、多くの人がいつもよりイライラピリピリしているように感じます。
 
そもそも、自粛って何なんでしょう。
自らを粛むと書いて自粛、自分から進んで行いや態度を改めて粛むことを自粛というワケで、だったら「自粛を要請」なんて言葉自体がおかしいというか、著名人が自粛を呼びかけた時点でもうそれは自粛ではなく他粛であり、皆で力を合わせてなんて言えば耳触りは良いけどその先にある生活は各々でって、おいおい、俺達ゃ今まで何のために安くもない税金を払ってきたんだよ、散々国を守ってきたのにこんな時に国は国民を守ってくれな……ってすみません、イライラピリピリしてたのは僕でした。サウナ行ってリフレッシュしてきます。
不要不急の外出は控えましょう。
 
 
 
 
サウナにどっぷりハマってからもう間も無く一年が経とうとしていますが、慣れってのは怖いもので、最初の頃は1セットでととのっていたのが今では少なくとも3セットはやらないとととのわず、それどころか、周囲が騒がしかったり何かしらの邪念が入ると、ととのわないこともあったりして。
一体、俺をととのわせてくれるサウナはどこなんだと、日々安住の地を求め、色んなサウナを訪れています。
 
 
そんな中、今回訪れたサウナは一年ほど前にサウナ小屋を新装しており、さらにセルフロウリュ用のアロマオイルを3種類480円で販売するといった熱の入れよう。
ロウリュ時にアロマの香りがするか否かでリラックス効果は大きく変わってきますから、白樺とアイスミント、そしてパインツリーの3種類を購入し、サウナ小屋へと向かいました。
 
 
フィンランド産のパイン材を一本一本組み上げてつくったというサウナ小屋は、初心者向けの1段目と、熱蒸気が溜まりやすい2段目とに分かれていて、定員は5〜6人と狭めのつくり。
もちろん騒がしいテレビは設置されておらず、照明も暗めで部屋の温度は高すぎず、ある程度の湿度が保たれているため居心地は抜群です。
 
 
うんうん、こういうのでいいんだよ。
 
井之頭五郎を気取りながら頷きつつ、2段目のセルフロウリュがしやすい場所に陣取り、まずはじっくりと体を温めます。
 
 
そして、5分ほど経ったところでそろそろアロマオイルを使ってロウリュを…と思っていると、他のお客さんが入室してきました。
 
こういう時、黙ってロウリュするのはマナー違反…とまでは言わないまでも、やはり一言、ロウリュしてもいいですかと同室者に許可を得るのが大人のエチケットですから、そう声をかけると、その男性から返ってきた答えは、「はい」でもなく、ましてや「いいえ」でもなく、まさかの「お願いします」。
 
 
「お願いします」と返すことで、僕もロウリュを待っていましたという意思を伝えてくれるこの男性は、例えば彼女や奥さんから「昨日のカレーが余っているから今日の晩御飯もカレーでいい?」とLINEがきたなら、ぶっきらぼうに「うん」と返すのではなく、きっと「2日目のカレーも美味いもんな」と、さりげなく気の利いた言葉と共にクマがバンザイしているスタンプを送るような、デキる男に違いありません。
 
 
よーし、だったらこっちもとっておきを出してやろうじゃないか。
480円も払ったアロマオイルの香りを見知らぬアナタに嗅がせてあげる義理はないけれど、その返答に応えてあげられないほど僕ぁ小さい男じゃないんでね。
このサウナ小屋の雰囲気にピッタリなパインツリーのアロマを使ったロウリュで、アナタを満足させて差し上げますよ。
480円も払ったけど。
 
 
 
準備はいいかと目くばせをして、杓子にたっぷりの水を入れたら、隠し味のアロマオイルを混ぜてサウナストーンにイン。
次の瞬間、パチパチじゅわ〜っと心地よい音を立てながら、まるで森林浴をしているかのような清々しい香りと共に蒸気が降り注ぎ、熱の波が我々の身を包みました。
 
 
 
ふぅぅぅぅ〜〜〜。
 
 
 
出会ってまだ数分、言葉もロクに交わしていない僕らですが、サウナーに言葉はいりません。
蒸気を浴びながらコレコレ、コレだよと言わんばかりにお互い大きく深呼吸をし、香りのシェアで言葉なきコミュニケーションが生まれたところで2杯目の水をサウナストーンにかけると、入ったばかりだというのに男性は早くも汗だくになっています。
 
 
どうだい?
 
俺のロウリュには満足できたかい?
 
あとは思う存分、熱の波に身を委ねな。
 
 
OKOK、口に出さなくてもわかっているよと軽く頷きながら、香り、温度ともに申し分ないロウリュにきっと彼も満足しているに違いないと、アイコンタクトを送ると
 
 
 
 
 
あっちぃ…
 
 
 
 
とだけ呟いて、そそくさとサウナ小屋を出て行きました。
 
 
 
 
ご、ごめん。2杯目もちゃんと聞けばよかったね…。
 

 

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