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諸積ゲンズブール

サ道 13 後編

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公開日: 2020/07/07

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人が多いところは苦手だからという、どこまでも田舎者気質な理由で選んだ現在の住居は、山手線や中央線などといった主要路線からは離れているため、このサウナは夕方以降でも仕事帰りのサラリーマンでごった返す可能性は低く、中身次第では十分にマイホならぬマイサウナになりえます。
 
 
下調べで得た情報は、現在は22時までの短縮営業であるということと、ロウリュサービスは当面の間中止であるということの2点のみ。まだできたてホヤホヤですから、サウナサイトでもサウナ室内や水風呂の温度は載っておらず、まるでラインナップのわからないパチ屋に入るような、ある種の期待感を抱きながら入店しました。
 
 
脱衣所に向かい、まずはドライヤーの風量と備え付けのコスメをチェックします。
 
ここをケチっていては真の「ととのい」は得られませんから、古いビジネスホテルにあるような風力激弱のドライヤーや、申しわけ程度に置いてあるマイナーメイカーのコスメであれば底が知れるなと思っていると、ビームライフルのようなドライヤーにポールスチュアートのコスメと、まるでメンズエステのようなラインナップではありませんか。メンズエステ行ったことないけど。
 
 
 
ひとまず脱衣所に合格点をつけ、その後、服を脱いで浴場に向かうと、狙い通り人はまばらで、ソーシャルディスタンスを保つために人数制限が設けてあるサウナ室も余裕で入れました。
 
通常であれば10人ほど入れそうなサウナ室ですが、現在は最大で5名となっており、下段に2名、中段に1名、上段に2名と、それぞれ座る位置にマットが敷かれています。
 
90度近いサウナ室の中でもコロナウイルスに怯えなきゃならないのかねぇ…なんて思ったりもしましたが、この状況ですから、気をつけすぎるくらいがちょうどいいのかもしれません。ま、サウナ室内のソーシャルディスタンスなんて、1メートルも離れちゃいないんですがね。
 
 
 
上段には先客がいましたので中段に腰を下ろし、スゥーっと深呼吸をすると、新しいサウナ特有の木の香りが漂い、まるで鬱蒼とした森の中にいるかのような心地良さに包まれます。
 
さらにオートロウリュにより、ロウリュサービスがなくとも室内は適度な湿度が保たれていますので、サウナ室内にありがちな息苦しさがなく快適そのものです。
 
 
 
これでロウリュサービスが始まって24時間営業になったら、もう家は要らないんじゃないだろうか。
 
 
 
そんなことを思いながら滴る汗を見つめていると、何やら背後から
 
 
 
シュッ
 
 
 
シュッ
 
 
 
と、まるでシャドーボクシングでもやっているかのような音が聞こえてくるではありませんか。
 
そして、シャドーボクシングの音と共に時折
 
 
 
ピチャッ
 
 
 
ピチャッ
 
 
 
と、僕の脇腹あたりに水滴が飛んできます。
 
 
こ、これはまさか…。
 
サウナ室に現れることがあるという、あの妖怪の仕業ではなかろうか…。
 
 
そう思い、恐る恐る後方に目をやると
 
 
 
 
シュッ
 
 
 
シュッ
 
 
 
 
出ました。
 
妖怪 汗飛ばしジジイ。
 
かかってんだよ、ジジイ。
 
目に見える分、ある意味コロナウイルスよりも恐ろしいテメェの汗が、俺の脇腹にかかってんだよ。
 
 
そう。ソーシャルディスタンスを無視して、ジジイの汗が僕の脇腹に襲いかかってくるのです。
 
 
もう、なんなんですかね、アレ。
 
肩から指先にかけて手をスライドさせて、汗を飛ばす人。たまに太ももの汗とかも。
 
しかもそういう人って、視線を送ってヤメロと訴えかけても、絶対気づかないんですよ。
 
相手が好きな女性なら脇の汗だってペロペロしてあげたいけれど、なにが悲しくてカネ払ってまで見知らぬジジイの汗をかけられなきゃならんのですか。
 
 
脱衣所もサウナ室も水風呂も外気浴も、全てにおいて合格点の素晴らしいサウナだったのですが、唯一、ジジイのせいで「客層」という項目に×がつきました。
 
 
 
 

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