察知能力

　こう見えて私は女子高生のクリット以上に敏感な人間なので、他人の些細な変化を見逃しません。ガル憎先輩がイライラしているときにやる頬のピクピク、フェアリン先生の体重増減、そしてこのコラムにはなくてはならぬエッセンシャルな存在、中武先輩がパンダの服を新調したときなど、ありとあらゆる変化を敏感に察知します。液晶画面の変化はサッパリですけど。

※最近、SNSが荒れていないので安心していたのですが、二、三日前でしたか。息すんなとか、マジムカつくとか、殺し屋といったパワーワードが散りばめられたラインが送られてきました。

　ただ、この歳になっても言っていいことと悪いことの区別がつかないようで、ガル憎先輩のピクピクを指摘してさらにイライラさせてしまったり、フェアリンに「肥えた？」と直球を全力投球して、緑茶ハイ飲むペース加速→泥酔→病みツイート→場合によってはプチ炎上→ションベンで鎮火みたいなことになったりする可能性があるので、恐らくマイナス要素の変化に関しては察知しても言わないほうがいい、即ち敏感だけど鈍感なフリをしたほうがいいのでしょう。

※タバコの火をションベンで鎮火しているわけではありません。お嬢じゃないんだから。

　逆に中武先輩のパンダ服などは、こちらが「新作じゃないですか」とか言うと、まんざらでもない顔をして。こちらが聞いてもいないどこそこで買った、シャンシャンが中国に帰ったといったどうでもいい情報を、勝手にベラベラしゃべり始めるのでプラス要素に関しては積極的に指摘したほうがいいのでしょう。このあたりは松田聖子の夏の扉、歌詞の冒頭部分を参考にするといいかも知れません。髪を切った女性に「違う人みたい」と言ってやると、飼い主が帰宅したときの小型犬くらい喜ぶみたいですから。

※これにはヤラれました。もうズルいとしか言いようがないのです。

※最近、ツイッターで見かけたこのシャツも見たことがなかったので、直接本人に確認したところ、やはり新調したものでした。上野のあの店で買ったそうです。

　無論、歯のホワイトニングやホクロ除去、湘南の二文字がちらつく身体の変化、さらには自然かつ芸術的な毛髪、いわゆるアートなネイチャーなども敏感に察知。さすがにチンポの包皮切除は分かりませんが、なにか変化を察知した場合は私が整形手術推進派であることを明らかにした上でこっそり指摘します。

　だからでしょうか、私の変化にも気付いて欲しいし、指摘して欲しいのですが、付き合いの長いガル憎先輩にも中武先輩にも炎炎のフェアリン嬢にも気付いてもらえず、ツイッターに上がった写真や動画などを見ているはずの皆様にも気付いてもらえず、それならと家族に一縷の望みを託すもまったく気付いてもらえず。もう、この世に私に興味のある人間はひとりもいないのでしょうか。こんなことなら二十年以上も生やし続けたヒゲを剃るんじゃなかったと後悔頻りございます。

こちらに来た3月にヒゲを剃りました。だからなんだと言われれば、それまでですが、鈍感な男はモテない、ヤレない、しょうもないですよ。