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前乗り大好き芸人の気持ちが分からない

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公開日: 2024/07/19

 

 既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、私は前乗りが群れたがり同業者やチャンスゾーンをシーゼットと呼ぶ同業者以上に苦手です。たまに前乗りしていますが、それは当日入りだと開店に間に合わないからというただそれだけの理由。前乗りした分のギャラがもらえるわけでなし、その土地を代表するアバズレとオマンコできるわけでなし。代理店が手配したインと名の付くビジホの独房みたいな狭い部屋の、寝心地の悪いベッドで五万負ける夢を見て、どんよりとした朝を迎えてやっぱり五万負けてブチ切れて、前乗りなんかしなきゃよかった、俺がバカだったと後悔するのがオチだから前乗りをしないのです。遠地での負けは感覚的に倍、そこに前乗りが加われば四倍、私の負けは決して等価交換ではないのです。

 

 

※撮影者/中武睦

 

 

 だから前乗りする方の気持ちがプーチン大統領の腹の内くらい分からない。なにが楽しくて前乗りするのかまったく理解できないのですが、そうは言ってもいまは多様性の時代。私の価値観と異なるからといって前乗りする方を否定する気もバカにする気も少ししかありません。そこには恐らく私みたいな半ペラには到底理解できぬ海物語よりも深い理由があるはずだといったわけで前乗り派の急先鋒、ガル憎先輩にその理由を聞いてみたところ、どうやら気持ち的な問題、要は万が一、寝坊した場合、開店時間に間に合うだろうという安心感=ぐっすり眠れる、それに尽きると言っていました。確かに、早起きが苦手だからと前乗りする同業者がほとんどである点を踏まえると、理解しなければならないのかなとは思います。無論、それと同時になに甘ったれたこと言ってんだ、小学生かお前はとも思いますけど。

 

 

※撮影者/中武睦

 

 

 その土地で「酒が飲みたい」を理由に前乗りする方も一定数いらっしゃるようです。無類の酒好き、端的に言うとアル中予備軍ないしアル中の方はその土地の飲み屋に行ってみたい、その土地でしか味わえぬ幻のションベンビールを飲んでみたいとか、色々あるようです。しかしながら、これはもう病気なので致し方なし。実戦上、早めに現地入りする方はその傾向が強いので代理店のアテンドは要注意。最悪、朝、部屋に叩き起こしに行かねばならないかも知れません。

 

 

※撮影者/中武睦

 

 

 その他、忙しくしている自分がカッコいいから、ライターなのに締め切りとは無縁の生活を送っているから、前乗りすると二日分働いた気がするからなど、前乗りの理由は様々ですが、前乗りというくらいですから通常、現地入りするのは仕事の前日。二日前に現地入りしてレンタカーを借りて名所、史跡を巡り写真を撮って「俺、千キロも走っちゃったよ!」と嬉しそうに言う中武先輩の気持ちは多分一生理解できないと思いますし、生意気なことを言わせてもらうと、それはもはや仕事の前乗りではなく旅です。旅のついでの仕事です。

 

 

※国盗りなるゲームをやっているらしく広島の山間部と島根県は制覇したと嬉しそうに語っておりましたが、それにしたって二日前の前乗りはやはり狂っていると言わざるを得ません。

 

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