出禁の理由
記事一覧へ公開日: 2018/11/10
客商売であるとはいえパチンコ屋には皆が楽しく遊技できるようルールが存在し、そのルールを守れない人は入店お断り、つまり出入り禁止となります。
一年365日のうち300日以上をパチ屋で過ごしている僕が、出禁通達を目の当たりにしたのはこれまでたったの二回。
一度目は今から数年前、店の外で店長と思しき男性が物凄い剣幕でお客さんを怒鳴っており、聞き耳を立ててみると、どうやらそのお客さんは他のお客さんに何度もカネを無心していたとのことでした。
借金なんて、例え知り合いからの頼みであっても決していい気がするものではないというのに、それが全く面識のない相手からであれば不快を通り越して恐怖すら覚えます。
店側から再三注意したにもかかわらず、同じことを繰り返すこのお客さんにとうとう堪忍袋の緒が切れて、出禁通達と相成ったようです。
二度目は、数ヶ月前のこと。
その日はスロの調子が悪く早々にパチンコを打っていたのですが、背中合わせにあった海物語のシマで、店員とおばあちゃんが何やらモメているではありませんか。
面倒なことに巻き込まれるのはゴメンなのでとりあえず見て見ぬフリをしていたものの、数十分に一度は店員が来ておばあちゃんに何か注意をしているモンですから、嫌でも目に入ってしまいます。
一体、何を注意されているのだろう。
そう思いチラチラとおばあちゃんを見ていると、毎回、怒られる前に自ら呼び出しボタンを押しているではありませんか。その度に店員は台を開け、何かしらの作業をやっているのです。
そしてその行為を何度か繰り返しているうちに、ついに店員はこっそり後ろに張り付くようになりました。
まさかゴトではあるまいな。
そう思い固唾を飲んで見守っていると、おばあちゃんが台に向かってアクションを取った次の瞬間、店員がおばあちゃんを押さえ、外に連れ出して行ったのです。
僕は少し離れた位置にいた為、おばあちゃんが何をしたのかまでは把握できませんでしたが、店員が戻ってきた時に事の顛末を聞いてみると、思いがけない答えが返ってきました。
「あげていたんですよ……エサをっ……!」
興奮しているのはわかりますが、カイジばりの倒置法で言われても何が何やらで、どういうことですかと、まさか店内にペットを連れ込んでいたんですかと聞き返すと…。
「あげていたんです、パンを……リーチがくる度…………魚にっ!!!」
全てを理解した瞬間吹き出しそうになってしまいましたが、つまりはこういうこと。
おばあちゃんは海物語でスーパーリーチがかかる度に台に向かって魚のエサと称してパンを投げ、そのパンが台に詰まってしまい、何度注意してもおばあちゃんはシラを切るもんですから張り付いてみたところ、現行犯で取り押さえることに成功したようです。
齢70は過ぎていようかというおばあちゃんがゴトなんて世も末だなと思っていたのですが、フタを開けてみれば出禁の理由はゴトではなくパン。玉詰まりならぬパン詰まりだったのです。
お店には悪いと思いつつも、いいネタをありがとうと思わずにはいられませんでした。
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