おっさんずラブ
記事一覧へ公開日: 2018/12/24
上京したての頃は一杯のカルピスサワーで顔を真っ赤にしていたのに、今や夜な夜な飲みに繰り出す……ほどではないにしろ、とりあえずの生をクイッと飲み干して、次は何を飲もうかと選べるくらいには飲めるようになりました。
今年も残すところ約一週間。世間は忘年会シーズン真っ只中です。僕も御多分に洩れず、各所からお誘い頂いて毎晩のようにアルコールを体内に流し込んでいるわけですが、酒は飲んでも飲まれるな。酔って陽気になっても、他人に無礼を働いたり迷惑をかけたりしないよう細心の注意を払っています。
割と規模の大きい飲み会だったもんですから初めましての人も数人おりまして、その中の一人が僕のファンだと、今日の飲み会を楽しみにしていましたと、初対面にも関わらずグイグイと詰め寄ってくるではありませんか。
これが若いオネェちゃんなら僕もあらそうなんですかとテンション上がって酒が進むのですが、残念ながら相手は父親と変わらないくらいの年齢のおじちゃん。ゲゲゲのゲンズブールの股間アンテナはピクリとも反応しません。
とはいえ、好いてくれているその気持ちは素直にありがたく、じゃあせっかくなんで写真でも撮りますかといつもの調子で返事をすると、おじちゃんはなんとビックリ、慣れた手つきでインカメラを起動させ、あっという間に自撮りバッチこいの体制ではありませんか。
普段もお望みとあらば自撮りで対応しているのですが、この自撮りは恐らく自分史上最年長の相手。まさかのインカメラに少々面食らいました。
その後、しばらくおじちゃんと話し込んでいる内に酒の力も手伝ってか初対面とは思えぬほど意気投合しまして、おじちゃんを含む数人で二次会へ行くことに。
二次会の会場は、おじちゃんの行きつけだというバーでした。
バーと言ってもしっぽり飲むような雰囲気ではなくどちらかといえば明るめ、言うなれば岐阜で大繁盛中のサブライバーのような雰囲気でしたから、ここは最年少の僕が盛り上げねばなと、十八番のレイニーブルーを熱唱したらおじちゃん大喜び。
キミにはそんな引き出しがあるのかと、初対面なのに引き出しもクソもないだろうというツッコミも届かないほどに喜んでくれました。
がしかし、この辺りからおじちゃんの様子がおかしくなります。いや、思い返せば、自撮りバッチこいの時点で気づくべきだったのかもしれません。
やたらと自分好みの曲を入れ、それを僕に歌わせる。そしてそれが終わると褒めながらのボディタッチの89%ループ。僕が何を歌っても、恐らくおじちゃんの中では継続確定のタフボーイが流れていたことでしょう。
そうして何曲目かを歌い終わったあと、ついにおじちゃんは禁断の言葉を発しました。
「ウチくる?」
と。
僕の中で、「ウチくる」という言葉が許されるのは湘南エージェンシーだけ。ウチくるに出演お願いしますと言われる、その時だけなのです。
もしかしたらおじちゃんは、ただ本当に楽しくなっただけなのかもしれません。家にとっておきのお酒があって、それを僕に振舞いたかったのかもしれません。
しかしこの流れの中マンツーマンで宅飲みする勇気は僕にはなく、斉藤和義の歩いて帰ろうを歌った後、そっと抜け出しホテルまで歩いて帰りました。
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