国境なき世界・元クズ田中
記事一覧へ公開日: 2017/05/12
一昨日、フィリピンに戻ってきた。戻ってきたのか、それともやってきたのか。そのへんの感覚というのはどこをホームに置いているかによって変わってくるし、自分の中でもいまだにふわふわしてはいるのだけど、飛行機に乗ってたった4時間半。本を読んで昼寝をしていたらあっという間に日本からフィリピンにきてしまうのだから、東京から地元の愛媛まで新幹線と特急を乗り継ぎ6時間かけて戻っていた感覚からすれば、もはやこの4時間半は地方営業みたいなもの。「あ、じゃあちょっと顔出しますねー」くらいの距離にしか感じなくなってきた。
こうやって徐々に、感覚的にも実質的にも国境というものはなくなっていくんだろうなあと、ノーボーダー論者を気取りたくなるものの、ふと視点を東アジアに移してみれば、38度線を境に朝鮮半島が北と南で睨み合っているわけで、国境のない世界などというものは実現しえないのではないかとも思える。
非常に面倒くさい話だが、こんな村のようなセブ島にも、派閥というかグループがいくつもあり、ボーダーが存在する。語学学校関係者。日本人会。ローカルに根付く現地会社チーム。ロングステイの方。そういった大きな枠がいくつかあり、さらに語学学校関係者といった各グループ内もいくつもわかれていて……という具合に、細かな枝を辿っていけば、その数は無数。オールセブを謳ってみても、かかわる人間によって思惑は様々で、それぞれが己の利益を優先するのだから、本当の意味で足並みが揃うなどということは、まずもって無理だろう。
だけど、これは仕方のないことだとも思う。たとえばみんなでひとつの大きなイベントをするとして、僕のようなNPO組織だって自身の運営のためにはお金が得られるに越したことはない。企業であれば、あわよくばイベントの中で新たな契約だって取りたいし、とにかくオレが目立ちたいんだというタイプの個人だっている。そういった、それぞれの思惑がありながら、そのなかでベストの妥協点を探っていくしかないし、かかわる人間100%が善意しかもたない、己を犠牲にしたイベントというのは、これは難しい。ユニバとサミーがコラボする「ユニバカ」は、僕はとても素晴らしいイベントだと思っているが、それでもその中で、そりゃ、ユニバの思惑があればサミーの思惑だってあるに決まっている。
それらを理解した上でなお、全員が足並みを揃えることはできないのだろうか。たとえば自身の目先の、優先すべき利益がお金であったとしても、まずはそれをさておき、全員で「セブ島を良くする」というひとつのゴールを目指して進んでいく。そうするとセブ島が良くなり、セブ島により多くの人が集まるようになり、結果的にそれが、すべてのセブ在住者に還元される。自分だけが他者よりも特別に利益を得たいと思う気持ちを抑えれば、たとえその一定の期間だけであっても、全員の足並みを揃えることができるんじゃないかと思っている。
ぱちんこやパチスロ業界だって、みんなが苦しいこのご時世。あそこが失敗すれば、あそこが潰れればうちが浮かび上がれるという発想ではなく、もちろんライバルで切磋琢磨しながら、それでもひとつの部分では全員が足並みを本当の意味で揃えて、一緒に業界を良くすることで少しでもユーザーを増やせるのではと思っている。こういったことを書くと、業界を離れたお前が言うなと、そう怒られるかもしれないが、業界だって、セブ島だって、NPOだって、僕はなにひとつ諦めちゃいない。諦めたのは幸せな結婚と、ここ1年で急速に密度が薄くなってきた頭皮だけ。いや……頭皮に関してはもう少しだけ粘らせてほしいが、いずれにせよ、大きなことはできないけれど、自分ができることは進めていこう。来るべき日に備えて。あと、少しずつ髪を短くして、最終的にはスキンヘッドにしよう。来る日に備えて。
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