らっきーちゃーむ・元クズ田中

今年は1月からずっとフィリピン暮らしだったのだけど、いま現在、一時的に日本に滞在していて、例によって塾長家に寝泊まりさせてもらっている。

一宿一飯の恩義という言葉があるが、日本に拠点をもたぬその日暮らしの生活を送っている僕のような存在にとって、決まった帰る場所があるというのは本当にありがたい。毎日のように荷物を引きずって移動するヤドカリ生活は体力的にも精神的にも疲弊してしまうわけで、主が朝早くから仕事に出かけていくなか、せめて僕にできる恩返しをということで、部屋の掃除やゴミ出しなどをするように心がけている。

以前にも塾長おじさんの生活サイクルというのをここで書いたことがあるが、売れっ子スロライターの生活は過酷だ。今日は東へ明日は西へ。日中の大半はスロ屋で過ごすことになるのだろうが、初見の店で勝つことは、そう簡単ではない。昨日も負けた、今日も負けた。その勝率は相当に低く、金銭的な負担はもとより、遠方まで出かけて負け続けるという、精神的な面でのストレスは計り知れないだろう。

言うに及ばず、スロで勝つための正攻法は、台の知識を頭に詰め込み、期待値の高い台を打ち続けることにある。僕個人は期待値至上主義者ではないが、やはり長く結果を出し続けるためにはそういった部分は排除できないわけで、おじさんの枕元にLEONと並んでパチスロ必勝ガイドが置かれているのを見て、きっと疲れて帰ってきて、横になったベッドの上でも知識を頭に詰め込むべく、ガイドを手に取っているのだろうなと想像する。

そんな甲斐あってか、昨日は勝利を飾ったようで、家で顔を合わせたらにっこにこ。ここに詳しくは書かないが、なにを打って、どんな展開で、何枚出たのだと喜ぶ顔を見て、ああよかったと。おじさんの幸せは僕の幸せだと、僕はあまり働かず、おじさんにいつまでも元気で稼いでもらって、僕の人生を助け続けてもらおうというささやかな願いがこれからも続きますようにと神にお祈りしたのだが、やはり知識は嘘をつかない。枕元のガイドで得た知識があるからこそ、スロは勝てるのだと。これぞスロライターのあるべき姿だなと感心していたら、おじさんが居間のフローリングに汚ねえ葉っぱをポロリと落としたのに気がついた。

僕がおじさんにできる恩返しといえば、ゴミ出しと部屋の掃除くらいのもの。汚ねえ葉っぱなんてすぐさま捨ててしまおう。そう思って立ち上がろうとしたら、その葉っぱを慌てて拾い上げたおじさんが、こう言った。

あぶねえ、あぶねえ。この四つ葉のクローバーをもらってから、勝てるようになってきたんだよ。大切にしなくっちゃ。

売れっ子スロライターの生命線は、ガイドで得た知識ではなく、店のクセを読み切る洞察力でもなく、押し花にされた四つ葉のクローバー。幸運を呼び込む、四つ葉のクローバー。