有名人

はじめて見たのは確かバレンティンでした。プロ野球のシーズン最多本塁打記録を更新した翌年でしたのでひと目見ただけでそれとわかったのを覚えています。

その次は美川憲一さん。新幹線で高そうなブランケットに身を包み眠りにつくその様は、サングラス越しでも芸能人オーラをムンムンと漂わせ、通路を挟んで反対側に座っていた僕は興奮しておちおち眠りにつくこともできませんでした。

元プロレスラーの小橋建太さんにお会いしたこともあります。パッと見ただけではご本人かどうか自信を持てずにいたのですが、新幹線を出る際に足を引きずっていたのでご本人だと確信したことを覚えています。

毎日のように新幹線や飛行機を利用していると、自ずと有名人に遭遇する機会も多くなります。とりわけ福岡空港の利用頻度が高いせいか、ソフトバンクホークスをはじめとするプロ野球選手はシーズン中であればちょくちょく目にしますし、石原良純さんなどの福岡県でレギュラー番組を持つ有名人には高確率でお会いします。

しかし、未だかつて僕はこういった有名人の方々に声をかけたことがありません。恐らく、声をかければ嫌な顔ひとつせずに写真の一枚くらいは撮って頂けるんでしょうけれども、どうしてもミーハーだと思われるのが恥ずかしいとか、断られたらカッコ悪いだとかというプライドが邪魔して言えないのです。

もっと自分に素直になれたら…。

移動中じゃないけれど表参道でガッキーを見かけた時は心底そう思いましたし、福岡空港でニンテンドーDSに夢中になっている石ちゃんこと石塚英彦さんをお見かけした時もプライドが邪魔して声をかけそびれました。

人前に出る仕事をしているというのに、こんなに引っ込み思案でどうするんだ。旅の恥はかき捨てという言葉があるくらいなんだから、もっと自分からガツガツと、握手だ写真だとお願いすればいいじゃないか。それこそこうやって何かしらのネタになるかもしれないんだから。

そんなことを思っていると、先日福岡空港で背後から声をかけられました。「諸ゲン……だよね？」と。

なんだなんだ。有名人に声をかけきれずに悩んでいたと思ったら、僕もいつの間にか声をかけられる側になったのか。まぁ福岡レバーオン出てるかんね。深夜の時間帯とはいえ地上波だかんね。福岡のローカル番組に出てるという意味では石原良純さんやおすぎさんと同等と言えなくもないかんね。

そう思いながら満面の笑みを浮かべて「はい、そうです！」と振り向くと、そこにいたのはこの日福岡レバーオンにゲスト出演するため福岡入りしていた大先輩、ドラゴン広石さん。かなり久しぶりにお会いしましたので、とりあえず頼んでおきました。

写真撮らせてください、と。