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元クズ田中

王様とジイさんの言うことは絶対

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公開日: 2016/11/17

王様の言うことは絶対なのが王様ゲームだとするならば、いったいこれはなんという名のゲームなのだろうか。

 

好きでもないのになぜか打ってしまう「CR巨人の星~情熱の炎~」が確変に入らず、また入っても即抜けするといういつもの展開で、あっという間に財産を目減りさせた夕暮れ時。これからスーパーに寄って食材を買い、自分ひとりのためだけに夕食をつくる己の姿を想像したら星明子よりも泣けてきたので、近所にある漁師めしがオススメの、小さな居酒屋に行くことにした。

 

尿酸値が基準値をはるかにしのぐ痛風予備軍で食えるものは限られているし、そもそも負けた日に贅沢ができるほど裕福ではない。隣の席にドンと大皿で置かれたキンメダイの煮つけを横目に見ながら、お通しに出てきたミニミニ鯵フライと、注文したわかめの酢の物をアテにそれはチビチビと飲んでいた。

 

ひとり飲みのときに頭を支配するのは、いつだって後悔である。あのとき勇気を出してあと一言が出ていたら、もしかしたら彼女とはうまくいっていたかもしれない。もっと気合いを入れて真剣にボタンを叩けば、憎きオズマを打ち取れたかもしれない。そんなふうに物思いにふけっていたら、隣の席で楽しそうに飲んでいた気の良さそうなジイさん三人組が、店員さんにこう言った。

 

お姉ちゃん、この皿に、お湯を入れてくれないかな。

 

身の残っていない、しゃぶりつくされた骨と煮汁だけのキンメの皿にお湯を足すお姉ちゃんに向かって、ジイさんは話しかける。

 

これだよ、これ。これを骨湯って言ってな。俺たちが若いころは、キンメの煮つけを食い終わって、こうやってお湯を入れて、ズズッとすするのがなによりのご馳走だったんだ。

 

そう言って三人が優勝した力士のように大皿の湯をひと口すすっては次に回し、すすっては次に回している。なるほど、どこの土地のもそういうソウルフードのようなものがあるんだなあとその光景を見ていたら、ひとりのジイさんと目が合った。

 

ほらほら、そこのお兄さん。若いのにわかめなんかでみみっちく飲んでいないで、骨湯をおあがんなさい。

 

元来、体育会系の僕は、先輩の誘いを断るということを知らない。というわけで誘われるがままに隣の席に合流したわけだが、皿の中にはすでにジイさん連中が散々ねぶりちらした骨がごろごろしている上に、飲み回せば回すほど全員の唾液が少しずつ皿に逆流していく素敵なシステム。王様とジイさんの言うことは絶対。いつかは僕にだって素敵な女子とのポッキーゲームが回ってくるはずだと、そう信じて回ってきた皿を受け取ったら、

 

もう我々はお腹いっぱいだから、あとはお兄さんが全部お飲みなさい

 

と、まだ半分ほど湯の入った皿を、そっくりそのまま頂くことになった。

 

ああ、ここに星一徹がいてくれたなら。激アツの『球場ちゃぶ台返しリーチ』さながら、テーブルごと引っくり返してくれたらどんなにいいかと思うわけだが、店にいるのはなぎら健壱に似た店主だけ。ええい、ままよ。覚悟を決めて思い切って口をつけたら、旨かった。たしかに味は旨かったが、できれば見ず知らずのジイさん3人組との間接キスはこれっきりにしたいところ。

 

というわけで勝てない巨人の星はしばらく封印。2万も3万も勝つ必要はない。わかめの酢の物と、もう二品。もう二品ツマミを増やせるように、1日4000円勝ちを目指してこれからは立ち回りの鬼になりますが、負けたら骨を拾ってください。そして、どうぞその骨に湯を足して、骨湯をおあがりください。

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