現状維持の精神で(元クズ田中)
記事一覧へ公開日: 2017/01/12
あれは10年ちょっと前のことだったろうか。ういちさんや山コーさんがガイドのライターを辞めるということになり、その送別会も兼ねた忘年会に参加したときのこと。酔っ払った先輩の悪ノリによって、当時いまよりもさらにペーペーだった僕が、大勢の関係者の前で所信表明をする流れになった。
当時ようやく少しずつ原稿仕事をもらえるようになってきたということもあって、自分にとっては、さあこれからだという気持ちがあり、みんなが「また戻ってこいよ」と、「寂しくなるよ」といった別れの言葉をかけるなか、僕は、
ガイドを辞めてくださって本当にありがとうございました。お二人がいなくなることで、僕にもチャンスがまわってきます。僕にとって、来年は勝負の年になると思います。
という話をさせていただいた。生まれてこの方、僕個人として勝負の年だと感じたのは、後にも先にもこの1年だけだった。
勝負の年を終えて10年ちょっと経つが、あれ以来、僕が年初に心の中でこっそり決める1年の目標は、毎年変わらず「現状維持」。下に落ちていくのはごめんだが、だからといって上を見てガツガツやるのも性に合わない。いまの感じが一生続けばそれでいいじゃないかと、そう思っているわけで、2017年の初頭に決めた今年の目標も、もちろん現状維持。フィリピンでの活動なんかは別として、個人的なところでいうと、いまのまま、ゆるく楽しく生きていけたら、もうそれ以上に望むことはない。
お金にしてもそうで、たとえば貯金100万円が大きな目標だったはずが、いざ100万円貯まると次は200万円ほしい、1000万に達すればもう満足するだろうと思っていたはずなのに、いざ到達してみたらやっぱり2000万ほしい。1憶あれば次は2億と、人間の欲なんてものは結局のところ際限がないわけで、欲に取りつかれ、数字に縛られて生きるなんてまっぴらごめん。現状維持を良しとするのは、精神衛生上も非常にいいことだと言える。
昔はなんとしてもスロで勝ちたかった。勝ってお金がほしかったが、現状維持の精神に達してからはスロでお金を得たいという欲がなくなった。マイナスにならなければそれでいい。そういうスタンスで臨むようになって以降、自分のスロライターとしての向上はストップしてしまったという負の側面もあるが、それ以上に、自分の好きな台だけを純粋に楽しむために打てるようになった。だけど、僕もまだまだ修行が足りないのだろう。
1月11日という1並びの当日。ゾロ目が強いと噂される某店を冷やかしで覗いてみたところ、凱旋のカド台が空いていた。データを見るとさほど悪くない。このときに思った。この台で今日の飲み代を稼いでやろう。現状維持の精神を破って欲が顔をだした瞬間である。
日本昔話を観ればわかるとおり、欲をだした人間というのは地獄に落ちる運命だ。天国になんて一度も上がらないままGG終わり即やめ台を天井まで一直線。気がつけば財布からは56000円が消えていた。
打たなければ現状維持だったはずなのに、56000円のマイナス。幸い、天井からのポセイドンスタートで2分の1の80%ループには引っかかったようだが、そんなことはもうどうだっていい。現状維持の誓いを破ったことが問題なのであって、そんな欲深き己に嫌悪感を抱きつつGGを消化していたわけだけど、あれ? なにこれ? 超面白いんですけど。
5連すれば御の字だと思っていたのに、2万負けまで戻せればもう勝ったものとする自分ルールを設定したはずなのに、打てば打つほど脳が麻薬を送りだしてくる。「もっとだ。もっと連チャンさせるんだ」。
一度、覚せい剤をやった人間は脳が一生、その快楽を覚えているというが、GGの連チャンにもそういう要素があるのだろうか。ボーナスタイプにはなかった、忘れていた刺激。そして、56000円投資からの大逆転、6000円勝ち。
ボーナスタイプでこつこつ闘ったときの6000円勝ちにはなかった、この興奮。たしかに忘れかけていたなにかを思い出したのは事実だが、しかし、この6000円が転機となり、のちの大きなマイナスを呼び込むことになるのではという不安もある。最初の軽い快楽で踏みとどまれず、深みにハマった結果、抜け出せなくなるというのは笑うセールスマンの常套手段。このままでは現状維持の精神が破たんしてしまう。
それは僕の望むところではないので、来週火曜からしばらく凱旋のないフィリピンに行ってリハビリしてきます。リハビリしつつ、昨年末の12月30日についにオープンした、オカダマニラの視察にも行こうと思っています。
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