男の浪漫・元クズ田中
記事一覧へ公開日: 2017/02/02
フィリピンでギャンブルと聞くと、まっさきに思い浮かぶのはカジノだろうか。セブには僕が知る限り大きいところでいうと片手ほどしかカジノはないが、マニラなどはカジノを含む巨大な統合型リゾートがバンバンできていて、来年にもその市場規模はシンガポールを上回ると言われている。
ただ、基本的にカジノに出入りするのは少なくとも中流以上の人間。カジノはけして庶民のギャンブルではない。
また、マニラから車で2時間ほど走ったタルラックという地方都市に日本の会社がオープンした全面液晶のぱちんこ風のギャンブル(法的にはゲーセンという位置づけらしいが、貯まったポイントで景品と交換できるとのこと)もあるが、これは特殊なケース。さらに路上では麻雀やトランプゲームでの金銭のやり取りも行われているがこちらについては法的には日本と同じくアウトのはずなので、合法かつ庶民のギャンブルというと、パッと思い浮かぶところでふたつある。
ひとつは、これ。
主にお祭りの出店的な感覚で遊ぶギャンブルだが、写真のタイプはまずどの絵柄のマスにボールが落ちるかを決めてあらかじめ枠の部分にお金を置き、すべてが出揃ったら客がボールを3つ投入。自分が選んだ絵柄のマスにボールが入れば勝ち、といたってシンプルなルールとなっている。基本的に配当はボール1個入っての当りなら掛け金が2倍に。2つ同絵柄に入れば3倍、3つとも同絵柄なら4倍……となるわけだけど、これ、よくよく見ると単純に当り6分の1のところにボールを3つ投げるから、当り確率は6分の3。もしかして、機械割はぴったし100%じゃなかろうか(違うかもしれないけど)。やはりお祭りのお遊び的な位置づけなのだろう。ちなみにこのギャンブル、お祭りの際に表通りで開催されているものに関しては、政府がライセンスを発行している合法なギャンブルだそうで、15歳から参加できるそうだ。
で、もうひとつの庶民的なギャンブルは、コックファイト。闘鶏だ。少年の心を持ったフィリピンの男は、だいたいひとり最低1羽、鶏を育てている。それは食うためでも卵のためでもなく、もちろん闘鶏として。彼女よりも嫁よりも大切にしていて、大会になると手塩にかけて育てたその鶏をエントリーする。
闘鶏にはそれぞれ脚に毒のついた鋭い刃物がくくりつけられていて、どちらかが動かなくなるまで闘いが続く。刃物がついているから当然のように血が飛び散るし、金がかかっているから観客たちは怒声をあげる。いけー、殺せー、やれー。そこはまさに人間の欲望が凝縮された場所だといえる。ちなみに、賭け方については同じ金額で折り合った客同士が賭け、勝ったほうが総取りするとのこと(賭けたことない)。そこでのいざこざで、客同士が殴り合いのケンカを始めることも珍しくないそうだ。
ただ、真のギャンブルは、いや、ギャンブルというよりも男の浪漫だと言えるのが、客としての予想ではなく、自分の鶏を育て、エントリーし、賞金を稼ぐこと。大会によって優勝賞金は様々だが、本当にデカい大会となると優勝賞金はおよそ1000万円。平均的な年収が40万円ちょっとのフィリピンで1000万円ということは、日本の間隔でいうと1億円。そりゃ、男たちがこぞって鶏を飼うわけだ。
ある者はアメリカからより獰猛とされる種の鶏を仕入れ、ある者は子どもにはサプリメントを一切与えないにもかかわらず鶏のエサにはこれでもかとビタミン剤を入れる。そしてある者は、自分の鶏が盗まれないためにガードマンまでをも雇う。そうやって闘いに出られるまで1年強の間、手塩に育てた鶏を、満を持してエントリーし、だけども夢かなわず血まみれで敗れ去った我が子のような鶏を抱えて、男はこう言うのだ。
よし、今日はバーベキューだな。
うん、合理的。皆さん、よろしければフィリピンにきた際は、ぜひ闘鶏を。酉年うまれの僕は自分が切り刻まれるようで怖くて見ていられないので、行きませんけど。
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