やくざな商売・元クズ田中
記事一覧へ公開日: 2017/03/23
21歳で念願だったパチスロ必勝ガイドのライターになり、里帰りをした際に母親にパチスロライターとしてこれから生きていくことを告げたら、母親は喜ぶどころかヒステリックに涙した。
へぐへぐと声をだして泣いていたため詳しい涙の理由は聞かなかったが、僕が芸人になることにすら納得した母親が泣いたのだ。パチスロライターなどというやくざな商売をさせるためにあんたをここまで育てたワケじゃないと、そういう意味合いの涙であることは想像できた。
これが他人であれば、うるせーバカと放置していればそれでいいが、これからもずっと母親を泣かせ続けるのは忍びない。というわけでその日のうちにパチスロライターというものがどういうものなのか。いかに僕がこの仕事に魅力を感じているかを説明した結果、その後は僕の連載記事を毎月、切り抜いて保存するほど応援してくれるようにはなったわけだが、かつてのうちの母親のように、事情なんてまったく知らないけれど、そのイメージだけでパチンコ業界に嫌悪を示す人間というのは一定数、必ずいる(ましてやうちの母親の父は定年後に数年間、景品交換所で働いていたので多少の免疫はあったはずなのだが)。
ホールやメーカー、業界の各団体がいくら寄付をしようが社会貢献をしようが、その情報は業界誌で取り上げられるくらいのもので、大きなメディアによってオモテに出ることはほとんどないが、悪いニュースはパチンコのニオイがほんのり香るだけで、パチンコこそが諸悪の根源だというような煽られ方をもって報道される。それが、結果的に負のイメージへとつながっていくこともあるだろう。
先日、こんなことがあった。僕はいま現在、NPO法人の活動もあってセブにいるのだけど、知り合いを通じて活動を見てみたいという方がいたため、事務所にきていただいた。
いやー、素晴らしい活動をされていますね。僕の話に頷きながら、その方は大変に感心してくれたのだけど、ひとつの質問をきっかけに顔色が変わった。
セブンスピリットの名前の由来って、なんですか?
隠すつもりもないし、隠したところでグーグルに「セブンスピリット」と打ち込めば、検索候補ワードに「クズ田中」と表示されるわけで、調べればいくらでもわかること。僕はぱちんこ、パチスロ業界で21歳から生きてきて、その中で多くの経験をさせてもらいました。多くの先輩からたくさんのものを頂きました。それがなければ僕はきっと、どうしようもない人生を送っていたと思います。皆さんから頂いたものを、僕なりの形で次の世代に返していきたい。そんな意味も込めて、象徴的な数字であるセブンというものを入れさせてもらっています。
そう答えたわけだが、その方は苦笑を浮かべて、「聞かないほうが良かったです」と一言、そう言った。
断っておくと、そのことで僕が怒ることなどまったくない。支援をしてもらったあとで、パチンコ業界とかかわりがあるなんて思わなかった、とクレームを言われても困るわけで、先にオープンにしておいたほうがお互いのためにもなる。イヤがる人に無理やり支援をしてもらおうなどとは思っていないわけで、そんなやり取りがあった後も普通に活動について、子どもたちがいかに変わってきたかについて話を続けていたら、帰り際にその方がこう言った。
ありがとうございました。最初は聞くんじゃなかったと思いましたが、お話を伺っていくなかで、なぜパチスロライターからこのような活動をするに至ったのか。田中さんの生い立ちからじっくりお話を聞いてみたいと思うようになりました。またぜひ伺いますので、その際はよろしくお願いします。
そう言って帰られていった。別になにも、僕の活動ってすごいだろエッヘン、と言いたいわけではない。そんな気持ちは微塵もないが、うちの母親しかり、この方しかり。正面からしっかりと向き合えば、根拠に乏しいマイナスのイメージというのは払しょくできるのではないかと思う(根拠のある場合は、より難しいと思うけれど)。
そのために僕がなにをできるのか、まだ答えはでてないわけだけど、偉大なる先輩方が更地の状態から素晴らしい基礎をつくってくださったおかげで、僕たちの世代はたいした苦労もなく、いま良い思いをすることができている。それを受け取るだけ受け取って、カラッカラになった状態で次に投げるのではなく、良い形で次の世代に託せればいいなと、そう思っている。泣かれたり苦笑されるより、応援してもらったほうが、やっぱり良いもんね。
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