指が語る歴史・元クズ田中
記事一覧へ公開日: 2017/04/06
小さいころ、母親の内職を手伝うのが好きだった。なんの部品かすらわからない小さなモノを何千個、何万個とひたすらに作り続けるだけの単純作業。そんな中でもっとこうすれば早くできるかなとか、この手順ならもっと効率よく作れるかなと考え、実践してみて、実際にそれが体にしみこんで熟練していくさまに喜びを感じていた。
ライター業がクリエイティブな仕事に分類されるのかどうかわからないが、僕の本質はゼロからイチを生み出すクリエイターではなく、いまあるイチをひたすらに積み重ねていくところにある。このままライターだけを続けていても大成しないことがわかっていたからこそ、地道な積み重ねが形になるNPO法人という道に魅力を感じたのだろうし、内職を手伝うのも楽しかったのだろう。
パチスロだってそうだ。出目や演出といった要素はあるものの、基本的にはコインを入れて、レバーを叩いて、ストップボタンを押す単純作業の繰り返し。1日8000G回したとしたら、当然ながらレバーを8000回叩き、ストップボタンに関しては24000回も押しているわけだ。冷静に考えたら、誰に強制されるわけでもなく好きでボタンを24000回押すって、変態のやる行為じゃないかとも思うわけだが、それを何年も、それこそ何十年も職人のように続けていくなかで、自分に合った一連の流れというものが出来上がっていく。
いまは動画やテレビでいろんな方の実際に打つ姿が観られるようになっているが、コインを入れて、レバーを叩き、ストップボタンを3つ停止させるというこの一連の動きは、同じようでいて人によってまったく異なる。左、中、右とそれぞれが独立しているかのように止める人もいれば、ひとつの動きの流れで3つともを止める人もいる。はたまた普段は人差し指で軽く止めるのだけど、ここぞというときは親指でしっかりと止める人など、精神的なものまでもが動作にあらわれていて、非常に面白い。
僕の場合は、昔は親指で押していたのだけど、毎日のように何万回も同じ指で押すものだから親指の関節か骨が(恐らく)壊れて治らなくなったので、それ以降は基本的に中指(の薬指側の側面)で押すようにしている。また、プライベートでは左ボタンを親指裏の第一関節のカタい部分で、中はいわゆる掌底の部分で、右を小指下の手のひらの側面で流れるように押すことが多いが、たまに出る動画の際は見栄えが悪いのであまりこれをやらないように気をつけている。
立ち回りや目押し力、台の知識も魅力のひとつだけど、僕にとっての動画の楽しみのひとつは、打ち手が意識していないところに出てくる、無意識下のなかでの動作。ここから、スロッターとしてのスタイルだったり、歩んできた歴史だったりを想像するわけだ。
そういうのを観ていると、ときおり、とんでもなくカッコいいというか、色気があるというか、言葉ではうまく言えないが、カリスマ性を感じずにはいられない打ち方をする人がいる。僕にとっての人生№1はライターでもyoutuberでもなく、愛媛の学生のときに一緒に打っていた郷田という友人で、彼の打ち方はいままで何万人と見てきたスロッターの誰よりもカッコよかった。彼がいまのスロ動画に出ていたら、その所作だけで絶対に人気が出るだろうと思うのだけど、いったいなにをしているのだろうか。
ちょっと視点を変えてみることで、新たな魅力が見えることもある。ツラいと思う毎日だって、ほら。視点を変えることで、楽しさが見えてくるかもしれませんよ。
ライター・タレントランキング