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元クズ田中

大切な3つのもの・元クズ田中

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公開日: 2017/08/11

それは、蒸し暑い夜だった。歩いているだけでじっとりとにじんでくる汗を落ち着かせようと、とあるバーのドアを開けた。

 

お、いらっしゃい。リーゼントのマスターが見た目の渋さとは裏腹に、高い声で迎え入れてくれる。ジントニックをお願いします。まるで蒸し器で蒸されたかのような体をクールダウンさせるべく、キリッとした辛口のジントニックを、ビールかのように一気に飲み干した。

 

カウンターには上品そうなお姉さまと、年齢不詳の色の黒い男がいた。路地を入った先にある小さなバーだ。一見客というよりも、マスターの気さくな人柄、センスの良い落ち着いた選曲、そして丁寧に作られるお酒を求めてやってくる、常連のお客さんがメインなのだろう。カウンターを挟んでマスターとああでもない、こうでもないと和やかに談笑をしていることからも、それが伝わってくる。次は誰か女の子と一緒にきて、しっぽりと飲むのも悪くないな。そんなことを考えながら二杯目のジントニックを今度はゆっくり飲んでいると、隣の席にいたお姉さまに声をかけられた。

 

ねえ、あなたにとって人生で大切な3つのものってなあに?

 

いままでに一番過激な場所でヤッたのはどこかだとか、カレー味のうんこならオレは食えるだとか、ART機の設定3は果たして中間設定なのかだとか、こちとら大衆酒場を舞台に、ゴミ箱に投げ捨ててもいいような質問をツマみながら飲んできたクチだ。人生をテーマにした高尚な質問に瞬時に答えられるわけもなく、えへへと愛想笑いでごまかすという、まさにダメ大人1確の対応で逃げたわけだが、僕だってもうすぐ37歳だ。人生で大事な3つのものくらいはスマートに答えられるようになっておくべきだろう。そう思い、考えてみることにした。

 

真っ先に思い浮かんだのは、「自由」だ。誰だって思春期の折に、親や先生にああしろ、こうしろと言われて反発したことがあるだろう。そういった時を経て、大人になると順応していく。社会のルールや時間に自らを合わせていくわけだが、大人になれないピーターパン症候群のクズは、拘束や束縛というものをなによりも嫌がる。

 

休みの日に自分で起きて10時から打ちに行くのはぜんぜん苦ではないのに、この日に10時から打ってくださいと、誰かに拘束されると、同じパチスロを打つだけだとしても、とたんに気が重くなる。仕事でなくてもそうだ。飲みの約束でも、その日に連絡があって「いまから行ける?」と聞かれればいくらでもいくのに、来週金曜日に、と先の日程を指定されると、その日が近づいてくるにつれて気が重くなってくる。なにもこれは仕事をくださった方や飲みに誘ってくれた人がイヤなわけではなく、クズの性質。明日、衝動的にタイに行きたくなる可能性だってあるわけで、未来の自分の行動を制限されることに息苦しさを感じる。だから僕は自由と名がつくフリーライターになりたかったし、収録や来店取材と拘束事が多くなってきたスロライター業務は自分に合わないなと思ってフィリピンへ行った。それくらい、自分にとって自由というのは譲れない要素なのだろう。

 

2つ目は、「信用」だ。キングコングの西野くんやホリエモンがここのところ信用、信用と多方面で言っているからマネをしているようでイヤなのだけど、特に僕のような生き方を続けていこうと思ったら、とにかく信用してもらうよりほかない。NPO法人の活動でいうなら信用が寄付や支援につながるし、いろんな方に頑張れよと応援してもらっているのは、すなわち僕に対する信用のあらわれ。いわば、僕は信用を担保にお金をもらっているわけだ。となると、僕がすべきは目先のお金を追うのではなく、いままで以上に信用を積み重ねていくこと。だから僕は、一瞬にして信用が吹き飛ぶ、嘘はつかない。嘘をついて信用をなくすことは、僕にしてみれば自らがお金を捨てているのと同義。1つ目に挙げた「自由」に生きるためにも、信用というものは不可欠だと思っている。

 

と、ここまで2つはパッと思い浮かんだのだけど、3つ目が出てこない。愛。いや愛はたしかに大事だとは思うが3つのうちには入ってこないし、仲間も大切だがちょっと違う。女性。僕の自由をおびやかさない女性なら3つにはいるかもしれないが、僕はそもそも女性にそこまで期待をしていない。となると、やはりプライドか。男たるものしっかりとプライドを持って生きるべきで、人生で大切な3つのものは「自由」「信用」「プライド」の3つ。そう結論付けようとしたら、カウンターにいた色の黒いおじさんが席を立ちながらこう言った。

 

おい、田中。そろそろ帰るぞ。これ、タクシー代だから。あと、お前がこの前に女ときて飲んだときのツケ。あれも払っておいたから。

 

塾長おじさん、ありがとうございますっ‼ 人生において「プライド」なんてものはさして重要ではない。それよりも大切なのは「感謝の気持ち」。さあ、感謝の気持ちとタクシー代をポケットに入れて、走って家まで帰ろう。

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