ビザと打算と男と女
記事一覧へ公開日: 2017/11/24
いつだったか、舘ひろしの「ハンコを押してくれよ」が決めゼリフの『免許がない!』という映画があったが、いま僕は「ビザがない!」という物語がいまにもクランクインしそうで悩んでいる。
パチンコ屋に入店するためには18歳以上である必要があるように、プロお断りと言われたらプロは入店できないように、そこに存在するためには、そこで定められたルールを守らなければならない。
当然、フィリピンという国に外国人として滞在しようと思ったら、そのための在留資格、つまりビザが必要になるわけだが、フィリピン国内で1円の報酬を受け取っていなくても、法人を立ち上げて活動している以上、僕の立場は観光客ではなく就労者。9gと呼ばれる就労ビザを取得しなければ、いわゆる違法滞在であったり、不法就労ということになってしまう。
たとえば東南アジアの人が日本で不法就労をしているとニュースで観たりすると、多くの人が「だから発展途上国の人間は」と、一段上から無意識的にそう思うだろう。だけど、それと同じように、東南アジアにいる日本人でビザがないのに現地で働いている人間というのは、思っている以上に多い。普段みなさんが、だから発展途上国はと思っている同じことを日本人も外でやっているのだ。
まあ、そんな話を長々としても仕方ないのでいいとして、このビザを僕は1年ごとに更新しているのだけど、9月の末に延長申請をしたのに、もうすぐ日本に戻らないといけないのに、いまだビザがおりていない。僕のビザの期限は12月10日。そして次の出国は来週の月曜日。日本滞在は12月13日までだから、あと三日以内にビザが出ないとそのまま日本滞在中に就労ビザが失効してしまうことになる。たったひとつのスタンプをもらうだけなのに、待って待ってもう2ヶ月。舘ひろしさながら、「ハンコを押してくれよ‼」と叫びたい気分である。
そんなわけで、仮にビザがおりない場合、僕は日本の滞在を早めに切り上げて、12月10日以前に再びセブに戻らなければならず、12月9日以降に会う予定だった約束をすべてキャンセルしなければならないと、その言い訳のためにこのコラムを書いていたりもするわけだが、毎年のようにビザ更新に気をもまれているのは事実。これを解決する一番早い方法は……現地の人間と結婚することだ。
おまえ、ビザ欲しさに結婚って、東南アジアの人間が日本でやっている偽装結婚と同じじゃないか。そういうかもしれないが、あなただって旦那の年収を、仕事を考えて結婚した、打算的な部分もあるでしょう。もし彼女のお父さんがパチンコチェーン15店舗のオーナーなら、彼女の七難くらいは目をつむるでしょう。ゆくゆくはオーナー職を引き継いで、プレイヤーのときは「クソ店が‼」と店の悪態をついていたにもかかわらず、各店舗の店長に「もっと抜け‼」と指令を出すでしょう。設定3以上を使用するときは本社に稟議をあげろと、そんな指示を出すことだってあるでしょう。次の人気機種をトップ導入したければこの機種を何台以上買えと抱き合わせ販売を強いられることもあるでしょう。自店舗の近くに大手が1000台オーバーの大型店舗を次々とオープンさせて、経営が苦しくなることもあるでしょう。不採算店舗を少しずつたたんでいくなかで資金繰りに困り、いよいよ設定を入れられなくもなるでしょう。最後の最後に余った金を幹部連中で山分け。残ったのは少しばかりの金と七難ある嫁だけになったときに、その嫁はとっとと出ていくのか。それとも、あなた一緒に頑張りましょうと言ってくれるのか。
やはり大切なのは打算よりも愛だとは思うが、将来的には日本の誰にも言うことなく、こっそり現地で結婚してしまう可能性も捨ててはいない。まあ、まずは三日以内にビザが出るのか、見てみるとしよう。
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