言い訳人生2018

37年生きてきて、ふと振り返ってみれば、言い訳ばかりの人生だったように思う。2コマ目押しをミスれば、もう現役を離れて長いからと言い訳し、ライバルに高設定を奪われれば、きっと今日はいつもの設定師じゃないと言い訳をする。そんな半生を省みて、今年は言い訳のない1年にしようと、密かにそう決意したのだから、年明けに東京へ向かう飛行機を1月8日にしてしまったことは、素直に受け入れよう。

1月7日までの飛行機は、たしかに値段が少し高かった。8日から値段がグッと下がることを考えたら、8日に予約を入れたのはあながち間違いではないと思うのだけど、いかんせん、田舎の一日は長い。元日に親戚と飲んで、3日に唯一の友人と飲んだら、あとのスケジュールは真っ白け。朝メシを食って二度寝して、昼飯を食って昼寝して、風呂に入って夜飯を食い、ただ寝るだけの毎日は、もはや限界。あと3日もこの生活が続くのかと、この日も昼飯を食って再び万年床へ戻るはずだったのだが、気がつけば寝巻きのまま自転車にまたがっていた。

よその地域は知らないが、愛媛の松山で設定5以上をつかうときは、市議会議員の過半数の賛成を得なければならない。それくらい高設定には縁のない地域だと理解しているから、まだまだ年始営業のこの時期、しかも昼過ぎにパチンコ屋に行くことは自殺行為だとわかっているはずなのに、気がつけば自転車にまたがり、3キロ先にあるパチンコ屋へ向かっていた。

さすが、年始だ。稼働95％を誇る店内は誤爆と思われる景気の良いタワーがちらほら見られたが、空き台に打てそうな台は、もちろんナシ。黙って帰る一手のみが幸せになる唯一の道だとわかっているのに、気がつけば聞いたこともない、KPEの『ラッキーベガス』なる台に座っていた。

設置店は全国でたった239店舗。95％稼働の店にあってこの機種だけ、ひとシマまるまる空いているのを罠とみるか、無限の可能性が広がるブルーオーシャンと捉えるか。ポジティブな僕でもさすがに前者と受け止めたが、その未知なゲーム性に触れ、チープな絵柄を揃えてみたいというピーターパンのような冒険心が顔を出し、仕様もわからぬまま打ち始めた。

｢ボーナス後32GはARTのチャンス!?｣。店の手作りの説明書、そこに書かれている文言だけを頼りにもりもり打ち進めるも、当るのは10G、100枚ぽっちの獲得で終わるREGという名のゴミばかり。オー、ジーザス。もはや引くに引けない投資額になってきたよと、有り金をすべて突っ込む覚悟をしたときに、NPOのスタッフから連絡があった。今日、送ってくれると言っていた資料、まだでしょうか、と。

よーし、これでヤメられる。家に帰るきっかけができた。ありがとう、神よ。そう思って念のため、ヤメ時をスマホで調べてみたら、｢沖ドキのようなシステムなので、ボーナスを引けば引くほどモードが上がり、ARTに入りやすくなります。ARTに入っていない台はヤメちゃダメ、絶対‼｣とのこと。

えーと、すでにしこたまREG引いてるんですけど。

泣く泣く捨てた瞬間、誰かが台に飛びつくのを見るのは、NTR系のAVを観たときと同じような、せつない気持ちになる。ああ、やっぱり打ちになんてくるんじゃなかったと後悔することしきりだが、同時に、新年最初のコラムくらいはパチスロを打った話を書くべきだろうから、むしろ良かったじゃないか、とも思うわけだ。そう、今日、打ちにきたのはコラムのネタ作り。取材にきたと考えれば納得がいく。

言い訳は、心の鎮痛剤。やっぱり今年も、適度に言い訳をしながら自分を甘やかしていきますので、どうぞよろしくお願い致します。1月7日以前の飛行機を取りなおす差額分以上に負けました。このコラムの原稿料以上に負けました。