お祭り前夜
記事一覧へ公開日: 2018/01/19
僕が住んでいた愛媛県の片田舎には、提灯行列というお祭りがある。そのお祭りの主役は大人ではなく高校生でもなく、小学生。小学6年生がリーダーとなり、5年生以下を引きつれて100人規模で夕方から町内を練り歩く。
少し肌寒い10月の夕暮れ時。提灯を手に持った子どもたちが「もーてーこい」と声を張り上げながら町内の家を一軒ずつまわり、家は子どもたちに段ボールいっぱいのお菓子を用意する。それを玄関から受け取って戻ってきた6年生が、お菓子を待ちながら玄関前で「もーてーこい」と叫んでいる下級生に、誇らしげな顔でこう叫ぶ。おまえら、もっと声だせー‼ 声ださんと菓子やらんぞー‼
僕は、この提灯行列が大好きだった。正直いって、この祭りの意味や由来はよくわかっていない。もーてーこい、要するに持ってこいと言いながらお菓子を催促するし、10月という時期的にみてもハロウィンのようなものだとは思うが、下級生だったころは先頭を歩く上級生に憧れ、褒めてもらいたくて懸命に声をだし、上級生になったときは自分たちの代を一番盛り上げてやろうと頑張った、思い出のお祭りだ。
そんなこともあってか、僕はお祭りが好きだった。アルゼ祭りが開催されていると聞けば朝早くから並んだし、近所のボッタ店が獣王祭りだといえば、あるはずもない設定6を探して誰もいないシマをカニ歩いたわけだが、そんな日々も今は昔。歳をとるとはこういうことなのだろうか。
この数年はヤマザキ春のパンまつりがスタートしてもシールをためてやろうと思わなくなったし、FNS歌謡祭もめっきり観なくなった。別になくたっていいじゃん。そう言ってしまえばおしまいだが、やはり少し寂しくもある。
毎年1月の第3日曜日、今年でいうと明後日の1月21日に、セブでシヌログというお祭りがある。フィリピン最大級と言われるこのお祭りは、セブの守り神ともいわれるサントニーニョ(幼少期のキリスト)を讃えるお祭りで、世界中から400万人が参加するともいわれている。気が早いセブの人たちは今週の頭からすでに祭りのテーマソングを街中で流し、歌い、踊っている。そのおかげでクソ渋滞しているのは正直、イライラするけれど、みんな顔がいつもよりどこか活き活きしているし、この熱。熱気、熱量というのは、すごく大切なことだとも思う。
祭りと一言いえばすぐに射幸心がどうだとつつかれる世知辛い世の中ではあるけれど、それでも人を笑顔にさせ、爆発的に盛り上げる祭りというものは、とても魅力がある。ユニバカ×サミフェスもそうだし、ババメナイトもそうだと思うけれど、メーカーが、ホールが、メディアが、ファンが、射幸心とはまた違ったところで一体になれるお祭りが、もっともっと増えればいいなと、やけどしそうな熱気あふれるセブの地で、そんなことを思うわけです。
まあ、そんなことを思ってはいますが、僕は明後日のお祭りには一切、行きません。そもそも人混みが苦手だし、世界中から400万人が参加すると同時に、それを狙ってフィリピン中のスリが集まるとも言われるシヌログ。行かれる方はスリにご用心を。
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