王様の耳はロバの耳
記事一覧へ公開日: 2018/03/02
マッキーの言うことは絶対。母親の影響で槇原敬之こそがこの世の優しさを凝縮した唯一無二の存在だと認識してからというもの、実に20年以上もマッキーこそが正義だと信じてきた。あらぬ薬物の使用で逮捕されたときもずっと信じてきたわけで、№1にならなくてもいいんだよと、その言葉、その優しさがあったからこそ僕は自分自身をこれまで周りと比較することはなかったし、人の成功を妬むのではなく、成功を喜ぶ人間として生きてきた。
他人の成功を妬んだところで自分が満たされるわけでもなければ、他人をけなしたところで自分が浮かび上がるわけでもない。自分に課せられた役割を、使命を、しっかりと果たすことこそが重要なんだよと、その姿勢をきっと神様は見ていてくれるんだよと、遠く離れたフィリピンの子どもたちにもそう言って聞かせてきたが、やはりこの世は誰かを蹴落としてでも上に登っていかなければならない、弱肉強食の世の中なんだろうか。
気がついていた。コラムの下にアクセスランキングが8位まで掲載されているのは気がついていたが、いつも薄目でぼんやりとだけ見て、極力、視界に入れないようにしていた。ただ、薄目で見てきた限り、僕がランクインしたことはただの一度もなかったはずだ。それでもみんな頑張っているなあと応援していたわけだが、ここ最近、運営がことさらランキングを煽るようになって、気がついた。ははーん、人気のない人間は、じきに切られるな!?
そりゃそうだ。ろくに読まれもしない文章にギャラを出す道理はないし、第一、いくら書こうが読まれない文章というのは便所の落書きと同じ。文章を読まれないライターというのは、いくら能書きをたれたところでこの世に存在しないのと同じことなのだ。
そういう意味では、僕は生きる屍。ニフラムが効いたり、聖水を投げるとダメージを与えられる属性の悲しきモンスターであり、陽の当たらない場所で死肉を貪ることしかできないのかもしれないが、僕にだって切り札はある。
王様の耳はロバの耳というお話をご存じだろうか。王様の耳がロバの耳であることをどうしても誰かに言いたかった床屋が穴を掘ってその秘密をぶちまけたように、人というのは秘密を誰かに言いたい生き物だ。そんな中で田中は安パイだろうと思うのか、僕のところには業界のゴシップが自然と集まってくる。つまり、僕はゴシップを貯め込んだ穴なのだ。
ゴシップ。そういった類の話は田中か井上公造かというほど事欠かないわけで、いざとなれば冥土の土産にぶちまけて一度限りのランクインを狙うことも可能なのだけど、マッキーのMILKを聴いていたら今日も穏やかな気持ちになってきた。やっぱり僕は僕なんだとマッキーが教えてくれたので、今日のところは穴を掘って、そこに向かって叫びたいと思う。
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