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元クズ田中

ショナイの話

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公開日: 2018/08/23

ひと口にスロライターと言っても楽しさを伝える人から勝利を追求する人まで様々なように、ひと口にフィリピン人と言ってもいろいろな人がいる。

 

生粋のフィリピン人もいれば、かつて統治下にあったスペインやアメリカの血が入っている人。中国系フィリピン人もいるし現地で子どもを作ったまま自国に帰っていった韓国人の子ども(コリアンフィリピーノを略してコピーノと呼ばれたりする)、同じく現地で子どもを作ったのに嫁子どもを置いて帰っていった日本人の子ども(通称ジャピーノ)といろいろあって、当然のように同じフィリピン人でもそういった背景によって肌の色も顔立ちも違ってくる。

 

たまたまセブの先輩が仲が良いという理由で、僕はシンガポール系のフィリピン人と飲みに行くことがあって、彼らは見た目も比較的、日本人と似ているのだけど、先日、日本人の先輩と僕と、そのシンガポール系フィリピン人との3人で、飲みに出かけることがあった。

 

※セブの知人のシンガポール系フィリピン人のひとり。日本人&韓国人女性が好きで日本語と韓国語を話せるよう勉強したそうです。

 

フィリピン人というのは語学の習得に長けているのか、ほとんどの人が自分の地域の言葉、公用語であるフィリピノ語、そして英語の3つの言葉は最低でも話せるのだけど、その友人はそれに加えて日本語と韓国語、そして中国語も話すことができ、簡単なコミュニケーションは日本語でとっていた。

 

その日は女の子が横でお酒を作ってくれるお店(まあ、日本でいうフィリピンパブのようなもんです)で吹牛(チュイニュー)という中国のサイコロゲームをしながら飲んでいたわけだが、女の子もゲームに参加しながらガシガシ飲むので、当然、酔ってくる。酔って女の子同士が現地語でいろいろ話しているのを別に気にもしていなかったのだけど、飲み始めて1時間ほど経った際に、ふと、僕の隣にいた女の子が聞いてきた。

 

3人とも日本人ですよね?

 

ひとりは顔立ちは日本人だがバリバリのフィリピン人だ。違うよと、あいつはセブの人間だよと伝えると、彼女はまたまた~という顔をしながらも、恐る恐る彼に現地人かどうかを確かめた。そして、彼が現地語で彼女に返答をすると、その顔から血の気が引いた。

 

本当にすみませんでした。ごめんなさい。焦った顔をして僕に謝るその女の子。まあ、みんな日本人だしバレないだろうと客のことを悪く言うことだってあるだろう。たかがそんなことで怒るほど僕は気が短くないし、全然、大丈夫だよと言ってトイレに行こうと席を立ったら、トイレの前までついてきた彼女は涙をボロボロ流し、いまにも土下座をしそうな勢いでさらに謝ってきた。

 

いったい、どんだけオレの悪口を言ってたんだよ、おい……。

 

友人のフィリピン人はすべての会話を聞いたうえで黙っていたということ。席に戻って彼に、彼女たちがなにを話していたのかを聞いてみようかと思ったが、いまだ隣で鼻をすすっている彼女を見るに、世の中には知らないほうがいいことだってあると、そう思って口をつぐんだ。

 

あのパチンコ屋はクソだ。あの常連がムカつく。打ち終わってパチンコ屋の近くの居酒屋で飲み、そんな会話で盛り上がりたくなることだってあるかもしれないが、薄い仕切りで区切られただけの隣の席に、その本人がいることだってあるわけで、聞かれてマズい話はしないほうがいいに決まっている。

 

もう、今世は諦めた。だけど来世は、きらびやかな羽で異性を惹きつける、立派なクジャクに生まれてやろう。そう心に誓った。

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