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元クズ田中

あけまして2019

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公開日: 2019/01/03

急ぎではない用件でたまたま連絡をしてみたら話の流れでメシでも食おうかと誘われ、昼から風呂に入って出かける支度をしていた。

 

フィリピンの我が家はホットシャワーの機械がついてはいるが、そもそもの水圧が弱すぎてマシーン自体が作動しないものだから、いつもボトボトと垂れるだけの冷たい水で震えながらシャワーを浴びるか、もしくは鍋で湯を沸かし、バケツの中で冷水と混ぜ合わせてぬるま湯を自分で準備しなければいけないのだけど、日本ではボタンひとつで熱い風呂が用意される。この、当り前のようで当り前でないことにいちいち感動するのは、僕がもう、すっかりフィリピンに染まったことの証明だろう。

 

湯船で足を延ばして太ももを見ると、まったく毛なんて生えていなかったはずなのに、そこにだけひょろひょろと数本、1.5cmほどの毛が生えていた。もう8年、毎日のように半ズボンでバイクに乗っているのだ。ちょうど半ズボンからはみだした部分がフィリピンの強烈な日差しに照らされるものだから、体が自身を守るために、そこにだけ毛を生やしたのだろう。人体って不思議だ。

 

指定された、地元では有名らしいからあげ屋へ行き、大ジョッキのビールを頼む。目の前にいるのはフィリピン人の男。8年前にセブの語学学校で僕を含む日本人に英語を教えていた彼は、当時に知り合った生徒と結婚をして、僕の地元でもある愛媛県に2年半前から住み始めたのだった。地元の有名店を外国人から教えられるのだから、やっぱり僕はもう、すっかりフィリピンに染まっている。

 

※彼の子どもの名前はマハル(漢字わからず)。 フィリピンの言葉で、愛するという意味

 

英語と、彼が勉強中だという日本語をミックスして話をするが、会話そのものは、まあ、近況報告みたいなもので、たいしたものではない。2時間ほど飲みながら話をして、じゃあ帰ろうかとなったのだけど、お会計になると彼はすぐに立ち上がり、片言の日本語で、

 

タナカさん、キョウはボクにハラわせてクダサイ

 

そう言った。僕はこれまで何千人とフィリピン人と接してきたが、(富裕層は別として)自分から奢りますと言った人間を彼以外に見たことがない。そして、彼のソレは日本で働き始めたいまになって始まったのではなく、出会ったときからそうだった。

 

別に、彼がフィリピン人だから日本人の僕が払って当然という、そんな話をしているのではない。僕は先輩には遠慮なく奢ってもらうかわりに、年下には失礼でない限り奢るようにしている。してもらったものを返すだけ。ただそれだけのことなのだけど、8年前、月給2万円だった彼が「前回出してもらったから」とサイフをだした、あのときとなにも変わっていないのが嬉しかった(出産祝いということで結局、僕が払った)。

 

西暦が2018から2019に変わっただけでは、人はなにも変わらない。新しい年になったそれだけで、これまでできなかったことができるようになったりはしない。新年1発目の投稿ということで今年の決意を書こうかとも思ったが、頭で考えて急に変わろうとするのではなく、環境に合わせていつの間にか太ももから生えていた毛のように、その時々に合わせてベストな自分でいられればいいなと、彼を見ていたらそう思ったので、皆様、2019年も変わらずクズがままの僕ではありますが、どうぞよろしくお願い致します。

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