フィリピンとの出会い
記事一覧へ公開日: 2019/01/31
13年くらい前、まだ僕がパチスロ必勝ガイドでバリバリに仕事をしていたあの頃に、僕はフィリピンと出会った。
草野球の合宿という、いま思えばナンダソレと言いたくなるような理由でサイパンに連れていかれ、そのサイパンの繁華街にあるフィリピンパブでフィリピンの楽しさを知り、東京に戻ってからも草野球チームのうちの4名(うち1名は酒井さん)で、週に4回はフィリピンパブへ通った。
歌舞伎町にあるフィリピンパブは1ヶ月かそこらですべて行き尽くし、女性ではなく、フィリピン人のボーイとメシに行くようになった。そんなときに、とあるボーイに誘われた。
フィリピン人だけが入れるディスコがあるんだけど、そこに行かないか?
連れていかれたのは、いかにも裏スロ屋が入っていそうな、新宿は歌舞伎町のはずれにある雑居ビルだった。狭いエレベータで6階に上がり、ドアを開けると……。さほど広くもないフロアには100名ちかくのフィリピン人男女がひしめき、けたたましい音をかき鳴らす生バンドの演奏に合わせて踊り狂っていた。
※なんの変哲もない雑居ビルのドアを開けた向こうに、
とても日本とは思えない光景が広がっているとは思いもしなかった
(写真のドアはイメージです)
大丈夫。お前はフィリピン人のフリをしておけばいい。そう言われ、なぜか眉間にしわをよせながら険しい顔で中へ進んでいくと、そのボーイの友人という男がいた。
やたらテンションの高いそいつらとひとしきりハイタッチをした後に、その友人が聞いてきた。
なあ、酒を飲んでもいいか?
なるほど、これは奢れという意味だろうな。最初から全部払うつもりでいたので飲んでいいよと告げると、その周りにいた大勢のフィリピン人たちが急に歓声をあげ、次々と酒を頼み始めた。
※こちらもイメージ。実際はもっと狭いスペースだった。
結果、1時間半かそこらで8万円を支払うことになったのだけど、問題はそこではない。テキーラをがぶがぶいった帰り際、必要以上にアツいハグを交わしながら、彼らは口々にこう言った。
今日はお前が金を持っていたからお前が払った。でも、次に会ったときにオレが金を持っていたら、今度はオレが払う。
ビザがあるのかどうかすら定かではない彼らが、次に会ったときに金を持っている可能性は限りなく薄い。かといって、彼らが僕にタカったのかというと、そんな感じでもなかった。
フィリピンに住んで思うが、タカろうとか騙そうとかそういう意識ではなく、『あるやつが払う』『できるやつがやる』というのが、フィリピン人のマインドとして備わっているのだ。
僕は金があったから払った。もし僕の車が故障したとき、彼らの中に修理のできる人間がいれば、彼らは修理してくれるだろう。僕が本当に無一文になったら、きっと彼らはメシを食わせてくれるだろう。
そう考えたら、なんだかラクになった。
僕は自分のやりたいことをやればいい。できないことは、誰かにお願いしてやってもらおう。
そう思えたら、なんでもできるような気がしてきた。
いま僕は、多くのフィリピン人に助けられながら生きている。
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