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元クズ田中

アジアの純真

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公開日: 2019/05/24

元クズだった僕がいつしかアジアの純真と呼ばれるようになり、「白のパンダをどれでも全部並べたり」、「地図の黄河に星座を全部浮かべる」ようになって久しいが、僕だって生まれながらに純真だったわけではない。
出典:PUFFY アジアの純真

 

お金がほしかった。僕が若かりしころ、ノドから手がでるほどお金を欲しいと思ったのは、良い家に住むためでも良い車に乗るためでも良い女性を抱くためでもなく、パチスロを打つタネ銭がほしかったからだった。

 

明日のタネ銭を確保するためだけに、今日の勝負を勝ちにいく。僕にとっての恐怖は明日パチスロが打てないかもしれないという、ただその1点のみで、それ以外のことなんて、本当にどうだってよかった。

 

タネ銭がなくなればプレステのソフトを売り、ソフトがなくなれば日雇いのバイトをして、夕方にもらった日当を握りしめ、明日のタネ銭を確保するためにまた、勝負へ行く。そんな刺激的な日々をしばらくすごしたのちに、仕事で、ある程度のお金を稼げるようになった。

 

 

※いったい何度、プレステを売って買ってを繰り返したことだろうか…… 

 

 

ああ、これでいつだって、好きなだけパチスロを打つことができる。そう安堵したものの、なんだか物足りない。今日、勝とうが負けようが、明日、僕はパチスロを打つことができる。この、自分にとって唯一の憧れだったはずのエンドレス・パチスロデーが現実のものとなったとき、僕は自分という人間がペンネームだけではなく、本当にクズであることを初めて知った。それは、僕が25、6歳のころだった。

 

やばい。負けるかもしれない。そして、負けたら大変なことになるかもしれない。そう考えて不安になったときに、僕の脳は脳内麻薬を、人影を感知して自動でスプレーする消臭力のように、プッシュっと吹き出す。

 

 

※自動で吹き出す消臭スプレー。ローカル便所は常に強烈なニオイ剥き出しのフィリピンで売れば、流行りそうな気がする 

 

 

ああ、僕はいま、たしかに生きている。そう感じる最大の瞬間は、破滅を意識したときだ。

 

そんな日々を経て僕はアジアの純真となったが、ではこのまま、アンダマン海の真珠、カリブの宝石と次々に名前を変えていき、最終的には世界の田中と、出世魚のような人生を駆け上がっていくのかというと、それは誰にもわからない。

 

 

※本家カリブ海の宝石こと、ベリーズのグレートブルーホール 

 

 

38歳になったいまからだって、僕はどんな人間にだって変われると思っている。それは前向きでキラキラした意味なんかではけしてなく、言葉の通り、そのまんま。良い人間にだって悪い人間にだって、怠惰な人間にだって、なんにだって変われる。変わろうと思うか思わないか。ただ、それだけのことだと思う。

 

そこに、なにか特別な意味が必要なのだろうか。

 

「イランアフガン聴かせてバラライカ」
出典:PUFFY アジアの純真

 

たぶん、意味なんて必要ない。

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