第十二回「みらいの輪」~パチンコ店経営者に突撃インタビュー~株式会社マルハン 北日本カンパニー
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レジャーの多様化とともにパチンコ・パチスロ離れもめまぐるしい。
とかく、依存問題や子供の放置事件などマイナスのイメージを植え付けられているパチンコ業界。
半世紀以上続き就労人口も20万人超という規模だが、世間の風当たりは強い。
様々な要因で店舗数もどんどん減少しており、逆風の只中にいる。
そんな苦境だらけの時代に突き進むパチンコホール経営者の生きざま、考え方について深堀していく。
更新日: 2023/12/28
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大衆娯楽のパチンコ業界。その文化を未来へ紡ぐため、2020年10月に2つの業界団体が合併し成立したMIRAI(一般社団法人MIRAIパチンコ産業連盟)。
本企画はそのMIRAIで活躍する各企業のキーマンにフォーカス。パチンコホールの経営者の生い立ちや普段聞けない生の声を独占インタビューする。
上席執行役員 實川 裕一郎営業本部長 |
株式会社マルハン 北日本カンパニー |
1972年 51歳 |
パチンコ業界の経営者に話を聞く「みらいの輪」。
第12回は、京都の喫茶店から始まり、今やパチンコ業界のリーディングカンパニーとなった株式会社マルハン北日本カンパニーの上席執行役員 實川 裕一郎営業本部長にインタビュー。新卒3期生でマルハン黎明期から現場に立ち、パチンコ業界・マルハンの歴史を支えてきた人物だ。
DMM:本日はお忙しいところお時間いただきましてありがとうございます。よろしくお願い致します。
實川本部長:よろしくお願いします。
DMM:早速ですが、實川本部長のご経歴やパチンコとの関わり等、プロフィールを教えていただけますか?
實川本部長:生まれたのは1972年11月26日、東京の深川生まれの下町育ちで、1995年4月の新卒入社になります。マルハンでは3期生ですね。
DMM:パチンコホールであるマルハンに入社されたきっかけについて教えて下さい。
實川本部長:パチンコは父が好きだった影響で、幼少期から身近な存在でした。成長して割数と出率の関係性について悩んだりして独学で勉強していました。
DMM:それは勝負として勝ちに拘ったからですか?
實川本部長:それもありますが、パチンコが面白いからです。もちろん、勝ちたいという欲もありますが、それ以上に楽しいからです。
DMM:パチンコが本当にお好きなのですね。
就活はパチンコホール一択!
實川本部長:そうですね。就職先もパチンコ店以外受けていませんでしたから。当時もマルハンとそれ以外の他のホール企業を2社、合計3社しか受けませんでした。
DMM:そうなのですね。そこからマルハンでのキャリアがスタートしたのですか?
實川本部長:いえ、それがマルハン以外の2社は受かったのですが、マルハンは1度落ちました。
DMM:えぇ⁉驚きですね。その後どのようにしてマルハンに入社されたのですか?
實川本部長:マルハンの面接時は大学生でしたが、その時は誰よりもパチンコの事は詳しかったと自負しています。業界もプリペイドカードの出始めで、テレフォンカードの偽造も横行しており、不正対策について御社はどのようにお考えですか、と話していたら怒られました(笑)。その後、選考で落とされたのですが、人事担当者の方がもったいないと、拾って頂いたという経緯になります。
DMM:凄いエピソードですね。最終的にマルハンも含めて3社内定を貰ったのですね。それにしても、一度落ちたマルハンを選ばれたのは、何が決め手だったのですか?
實川本部長:将来伸びるなと思ったのがマルハンとA社です。当時の会社規模は、A社の方が大きく、今から30年以上も前に中期経営計画や長期のビジョンがしっかりしていました。当時のパチンコ業界にない事をしていたので成長性を感じました。一方、マルハンは計画性ではなく、業界を大きく変えていくという熱い志を持った企業という点に共感して選びました。
DMM:意外なお話ですね。ご縁というか運命的なものを感じますね。今でも大好きなパチンコは打たれるのですか?
實川本部長:はい、遊技は今もしています。
DMM:根っからのパチンコファンですね。最近はライトノベルやアニメをモチーフにした遊技機が多くなっていますが、實川本部長が遊技をはじめられた頃の遊技機と比べて面白さや遊技性などはいかがですか?
實川本部長:そうですね、面白さや遊技性も進化していると思います。また、モチーフとなるアニメなどのコンテンツは一通り鑑賞します。そしてコンテンツとして活きるのかを見極めていますね。面白いコンテンツだと原作も見ています。
DMM:なるほど。私も遊技が好きなのですが、はじめ知らないコンテンツでも台が出てからそのライトノベルのアニメーションなどを鑑賞するようにしていますね。
實川本部長:私は逆で先にライトノベルなど一通り元のコンテンツを見ます。そしてコンテンツとして活きるのか活きないのかを確認して、活きるのであれば導入を検討したりします。遊技機メーカーさんともお話する機会があるので、情報は先に入れておかないといけないですね。
DMM:なるほど、現在北日本カンパニーでの遊技機の選定や決済もされているのですか?
實川本部長:いえ、選定や決済は部下に任せています。あくまでも助言であったり、今後どのような版権の遊技機が出るか等、メーカーさんとの話の中で情報交換しています。
DMM:ありがとうございます。私も含めてぱちタウンの運営もパチンコ・パチスロ好きな人間が多いので、共感します。メーカーさんとの折衝などもある中で、現在の實川本部長の主な業務内容や目標設定についてもお聞かせいただけますか。
實川本部長:経営者とコミュニケーションをはかりながら、事業計画、方針の立案、進捗管理やイレギュラー対応を行っています。最近は業界団体を通じて渉外的役割も増えてきたと思っています。
DMM:昨年からMIRAIの理事にもなられていましたね。他の組合・団体にも實川本部長がご参加されているのですか?
實川本部長:日遊協(一般社団法人日本遊技関連事業協会)での経営会議にも参加しています。
甘いもの好きな意外な一面から未来を見据えた部署設立へ
DMM:団体のお仕事もこなされるのはなかなか大変そうですね。北日本カンパニーの店舗へも出張されたりする機会も多そうですね。
實川本部長:そうですね。ただ、北日本の前は300店舗超の営業本部長として見ていましたので、それほど大変だとは感じていません。
DMM:今はその分店舗に集中できますね。ご出張が多い時もあると思いますが、そうなると全国のグルメにも詳しくなりそうですね。實川本部長お薦めの名産等あれば教えて下さい。
實川本部長:北海道ならソフトクリームなどその地域ごとに美味しいお店はありますね(笑)。中部で言うと名古屋にある「松屋長春」の「羽二重餅」など美味しいです。以前、業界関係者のパーティーの時に頂いたのですが、とても美味しくてそれからよく購入しています。
DMM:ありがとうございます。甘いものがお好きなのですね。今度名古屋に行った際には食べてみます。出張の楽しみになりますね。マルハンが全国規模の組織になり、カンパニー制導入等変革もあった中で、入社されてから印象に残るエピソードや感銘を受けたことについて教えてください。
實川本部長:色々あるのですが20年程前、マルハンがまだ100店舗ぐらいで、これから更に200店舗、300店舗を目指しているときです。店舗を増やしていく中で、人財の確保や店長のクオリティを維持し、オペレーションを回していけるのかという課題がありました。その課題をクリアするために、「営業戦略部」を作りたいと、経営者に承認を頂いた事は印象に残っているエピソードのひとつです。その部署では経験の浅い店長でもベテランの店長と同じように能力を発揮できる仕組み作りの研究や取り組みをしていました。
DMM:まだ問題が可視化されていない、「見えていない未来」を予測して提案されたのですね。それが実現して今のマルハンの基盤になっているというのもすごい事です。マルハンの歴史を作った方と話しているという実感が湧きます。
實川本部長:いえ、パチンコが好きなだけですよ(笑)
DMM:パチンコが好きだという想いから、会社を良くしてユーザーにも喜んでもらいたいという想いが伝わってきますね。
實川本部長:そうですね、ロスを無くしてお客様に還元していきたいという考えです。感銘を受けた事と言えば、当時から創業者と仕事をする機会が多かったのですが、社会へ貢献していかなければならないとよく言われていました。創業者自身が企業活動に必要な経営資源である人財・資金・土地・物資すべてが無い状態からスタートして、マルハンがここまで大きくなれたのはお客様の支持はもちろん、優秀な社員・スタッフたちのおかげであるとおっしゃっていました。その社員やスタッフたちを生んでくれた日本という国は義務教育やインフラ設備等、世界でも高いレベルであると。だからこそ、高いモラルをもった優秀な人を多く輩出しているのが日本であり、それができているのは税金がきちんと活用されていることに他ならない。その人たちの恩恵を多く受けているマルハンは沢山の税金を納め、社会に貢献していくべきだと。その考えは経営者としても、人間としてもとても素晴らしいことだと非常に感銘を受けました。
DMM:会長はお客様に感謝という想いはもちろん、日本という環境に関しても感謝して経営されているのですね。そのお話を聞くと私も日本人として嬉しくなります。続いて、多くのユーザーから支持されてる結果がリーディングカンパニーとなっていると思いますが、ズバリ、マルハンが支持されている理由はどのようなところにあるとお考えですか?
次の100年へつなぐ想い
實川本部長:ひとことで言えば「マルハンイズム」の浸透です。マルハン全従業員がこの「イズムカード」を持っていて、毎朝、朝礼で唱和をしながら業務に取り組んでいます。経営理念である「人生にヨロコビを」に基づき、安心の土台の上に刺激とやすらぎを提供していくのが我々のポリシーです。そこに全員が真剣に向き合って日々取り組んでいるからこそ、お客様からの信頼を得ていると考えています。
全社員が持っている「イズムカード」。理念や規範の浸透に欠かせないバイブルだ
DMM:なるほど、納得です。個人的には遊技環境、接客どれをとってもバランスが良く、万人に支持されるホール運営をされていると感じていたのですが、それはマルハンイズムが浸透しているからクオリティの高いレベルが保て、スタッフの気持ちが持続しているのですね。
實川本部長:そうです。イズムに根差した行動、エピソードを集め、それを社内で「イズムの芽」と呼んでいます。イズムに則って行動したエピソードに関して朝礼で読み上げ、全従業員の1万人が毎日傾聴します。入ったばかりのキャストもイズムの正しい行動や考え方、何をやれば賞賛されて認められるのかが、わかりやすくなっています。そういった地道な取り組みを一人ひとりが主体的に毎日継続しています。結局イズムや経営理念を唱和しても、何をもってその行動に即した人を評価、賞賛するかが無いと思うので、その評価をする取り組みをやり続ければ続けるほど浸透していきますね。
DMM:継続してやり続けることは大変ですね。また、それを幹部が理解して、幹部が部下に、部下がその部下に浸透させていくのは大変な作業ですね。非常に参考になります。次に、今後のパチンコ業界の行く末や改善しなければいけないと思われる問題点・改善点について實川本部長の個人的視点でお考えを教えて下さい。
實川本部長:そうですね、行く末で考えていくとスマート遊技機の導入や改刷(かいさつ:新紙幣が発行されることにより、ホールのシステムや設備の改訂をすすめること)に関わる投資費用がかかってきますので、来年はホール法人にとって厳しいと思います。また、現行の法規則では難しいですが、今後の高齢化社会の対応としてネット環境へ緩やかに対応していくのかなと思います。いわゆるネット遊技ですね。乗り越えていくべきハードルや課題は多いですが。
DMM:ホール企業の負担は大きいですね。遊技機メーカーも大変そうですし。遊技人口の減少に関してはどのようにメスを入れていけば良いでしょうか。業界としても取り組まなければならない部分だと思いますが。
實川本部長:そうですね、おっしゃる通りで、まず我々の目線で考えた時、業界共通でやらなければいけないのはパチンコファンの減少を食い止めることで、維持または増加させることが課題であり目標なのではないかと。業界のどの方に聞いても同じ答えになると思います。マルハン北日本カンパニーとしては短期・中期・長期という時間軸の中でそれぞれの時間軸の中でやるべきことをやっていこうと進めています。
DMM:その短期・中期・長期での取り組みはどのような事をされているのですか?
實川本部長:短期で言えば、我々の北日本カンパニーの営業組織が今の時代に即しているのか、時代に即した営業組織の転換です。やはり昔とは収益性が違い、同じようにやっていくわけにはいきませんのでそこにメスを入れていきます。中期的には企業としての取り組みをしていくこと。そして長期的には産業として取り組んでいく必要があると考えています。この長期的な産業としての取り組みの中に、業界団体であるMIRAIで取り組んでいる内容があります。若者の声を聞きながらどうすればファンが増えていくのか、今の課題は何なのか、MIRAIとしてどう取り組んでいくのかを夏に行われた合宿で話し合っています。
DMM:ありがとうございます。パチンコファンの減少、特に少子高齢化問題は看過できない問題ですので、これからを担う若者の声を聞いて改善していくことも大事ですね。そんな若者・これから就職をする学生に、学生時代に経験していた方が良いことや社会に出て役に立つ事などアドバイスをお願いします。
實川本部長:学生時代に大切な友人と貴重な時間を過ごしながら様々な経験をして欲しいなと思います。一見無駄に思える事も5年後、10年後に仕事に生きてくることもあります。社会に出てからできる友達と、学生時代の損得のない繋がりの中の友達も違いますので。今いる友達と貴重な時間を使って色々な経験をして、区切りをつけて就職してもらいたいと思います。
DMM:経験は大事ですね。同じ経験でも若い時と歳を重ねた時では気持ちや考え方も異なりますし、過去には戻れない体験は自分の糧になりますね。實川本部長のお話で改めてそう思います。最後に實川本部長の将来のビジョン、マルハンのビジョンやパチンコという産業がこうあって欲しいという未来について教えて下さい。
實川本部長:業界にはまだまだ解決すべき課題が山積しています。1930年、パチンコホールが名古屋で営業許可が出されて間もなく100年になります。そこまでの時代を築くにあたって筆舌に尽くしがたい想いを抱えながら、先人の方々が道を切り開いてきてくれたと思っています。我々はその先人の想いを胸に抱きながら、2030年までに次の100年へ産業を未来に運ぶという事をマルハンとして、また微力ながら個人として携わっていきたいと思っています。
DMM:實川本部長個人としてはいかがでしょう?
實川本部長:色々な要素を改善して、ハードルを下げてもう少し手軽に遊技ができる環境を作っていき、次の100年に繋げていくことが必要だと思っています。先人たちはもっとハードルの高い事をやり遂げてきましたので。例えば太平洋戦争中は3,000~4,000軒あったパチンコ店や遊技機メーカーもゼロになりましたが、想いをたぎらせながら終戦後は復活して、ピーク時は48,000軒まで復活しました。その歴史を見返すと今が厳しいかといえばもっと厳しい時期が過去にあり、それを乗り越えてきた先人達がいるわけです。私もそこに携わっている以上、次に繋げていかなければいけないと思っています。
DMM:遊技人口もピーク時3,000万人いたと言われている時代もありましたから、遊技人口も増やしていきたいですね。
實川本部長:その為にはイメージを変えなければならないですし、イメージだけで中身が伴わないと何の意味もないです。そこはホールもメーカーも全てまとめて産業として考えていく必要があります。
DMM:そうですね、我々もパチンコ業界の一員として今後も業界が活性化できるように考えていきたいと思います。ありがとうございました。
編集後記
パチンコ・パチスロを打たない人でも聞いたことのある企業名マルハン。
サッカーやパラリンピック、交響楽団等スポーツや文化活動へのサポート等、積極的な活動をしている業界のリーディングカンパニー。
その新卒3期目というマルハンの歴史と共に歩んできた實川本部長の座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。
一度は選考から落ちた企業で、現在は上席執行役員という幹部の立場にまで上り詰めている。
人生も、会社も、社会情勢も、何が起こるかわからない。
パチンコ業界にもまだまだチャンスはあるだろう。
パチンコに魅せられ、パチンコ産業をこよなく愛する實川本部長の瞳に熱い想いがこみ上げていた。